42 / 52
11.何もしたくない日だってあります。
11-2
しおりを挟む
「痛った……」
目が覚めてからしばらく、私は枕に顔を埋めて鈍い腰の痛みに呻いている。
起きた頃にはもうお昼になろうとしていて、今日が休日で本当に良かった。
……あの後、あずき先輩は「わりぃ、もっかい」って言って。いつもなら1回で終わってたのに。しかも全然「もう1回」じゃなかったし。何回も「もう無理」って言ったのに。
途中から記憶がないから、何がどうなったのか覚えてないんだけど。いつもならあずき先輩より私の方が早く起きてるのに、今日は私の方が遅かった。
朝はどちらかというと弱い方なんだけど、目覚ましと気合いで頑張って起きてたのに……。
全部、何から何までいつもと違った。
うーん……と再び唸っていると、ガチャリと扉の開く音が聞こえた。
「起きた?」
ベッドから振り返れば、きまり悪そうな顔のあずき先輩。シャワーを浴びてきたところなのか、半裸で髪が濡れている。
「悪ぃ。無理させた。立てる?」
「なんとか……」
軋む身体を気合いで起こす。病は気から、私もシャワーを浴びて気分をさっぱりさせれば幾分マシになるだろう。
それより若干申し訳なさそうな顔をしている先輩を見納めておこう。滅多に見れるもんじゃないからね。
先輩の横を通り過ぎようとした時、浮遊感がしたと思ったら私は身体を横抱きにされていた。
「え!? あの、大丈夫ですから!?」
さすがに一糸まとわぬ裸でってのは恥ずかし過ぎる!!
しかも先輩の肌と密着して、伝わる体温から昨日を思い出しそうだし……!!
慌てて降りようともがくけど、身体が痛んでやめざるを得ない。そんな私を見下ろしながら、先輩は「なんもしねーから大人しくしとけって」と一言。
疑ってないと言えば嘘になるけど、先輩は本当に私をお風呂に運んでくれただけだった。
無気力にシャワーを浴びながら、私は鏡の中の自分の身体に赤い痕がいくつもあるのを見つける。
「……」
鎖骨、胸元、おへその近く……内太もも……視認できるのでもこれくらい。
何の意図があってこんな痕を残したのか考えたけど、あの人のことだ。多分何も考えてないのが正解かな。
あずき先輩を正しく理解したつもりはない。けど、少なくとも私の目から見る先輩はそういう人だ。
熱いお湯に打たれてると頭がさっぱりしてくる。だらだら髪と身体を洗って、少しは気分も身体もだるくなくなったところでお風呂を出た。
ふわふわのタオルに顔を埋めて、「はぁー……」と息をつく。
今日は何もしたくないな。うん、何もしない日にしよう。
着替えて、髪を拭きながらリビングに戻る。
私に気づいたあずき先輩が手招きした。
「ここ座って」
ソファに腰掛ける先輩のちょうど前に、私は座らされた。
なんだろう、と考えていると、温風が私の髪を撫でる。
髪乾かしてくれるんだ。じゃあ、遠慮なく甘えよう。
人に髪を触られることってそんなに無かったから、先輩の指が髪を梳く感触が心地良い。
少しうとうとし始めたところで、先輩はドライヤーを置いた。
「眠い?」
「少し。でも大丈夫です。」
だって、さっき起きたばっかりだし。ここでまた寝たら、だらだらしすぎなんじゃって思う。
それでもあずき先輩は隣に座った私を自分の膝を枕に横たわらせて、「寝とけ」とか。
なんか、すごい甘やかされてる……? なんで今日そんなお兄ちゃんしてるの……?
なぜか優しいあずき先輩に戸惑うあまり、睡魔は遠のいてた。
どうすればいいのか困惑していると、先輩はパソコンを弄る片手間に私の頭を撫で始めて。しばらくそうされているとまた瞼が重くなってきた。
ちょっとくらい、いいかな。今日は何もしないって決めたもん。ちょっとくらい、いいよね。
瞼を閉じるとすぐに意識は深いところへ落ちていった。
目が覚めてからしばらく、私は枕に顔を埋めて鈍い腰の痛みに呻いている。
起きた頃にはもうお昼になろうとしていて、今日が休日で本当に良かった。
……あの後、あずき先輩は「わりぃ、もっかい」って言って。いつもなら1回で終わってたのに。しかも全然「もう1回」じゃなかったし。何回も「もう無理」って言ったのに。
途中から記憶がないから、何がどうなったのか覚えてないんだけど。いつもならあずき先輩より私の方が早く起きてるのに、今日は私の方が遅かった。
朝はどちらかというと弱い方なんだけど、目覚ましと気合いで頑張って起きてたのに……。
全部、何から何までいつもと違った。
うーん……と再び唸っていると、ガチャリと扉の開く音が聞こえた。
「起きた?」
ベッドから振り返れば、きまり悪そうな顔のあずき先輩。シャワーを浴びてきたところなのか、半裸で髪が濡れている。
「悪ぃ。無理させた。立てる?」
「なんとか……」
軋む身体を気合いで起こす。病は気から、私もシャワーを浴びて気分をさっぱりさせれば幾分マシになるだろう。
それより若干申し訳なさそうな顔をしている先輩を見納めておこう。滅多に見れるもんじゃないからね。
先輩の横を通り過ぎようとした時、浮遊感がしたと思ったら私は身体を横抱きにされていた。
「え!? あの、大丈夫ですから!?」
さすがに一糸まとわぬ裸でってのは恥ずかし過ぎる!!
しかも先輩の肌と密着して、伝わる体温から昨日を思い出しそうだし……!!
慌てて降りようともがくけど、身体が痛んでやめざるを得ない。そんな私を見下ろしながら、先輩は「なんもしねーから大人しくしとけって」と一言。
疑ってないと言えば嘘になるけど、先輩は本当に私をお風呂に運んでくれただけだった。
無気力にシャワーを浴びながら、私は鏡の中の自分の身体に赤い痕がいくつもあるのを見つける。
「……」
鎖骨、胸元、おへその近く……内太もも……視認できるのでもこれくらい。
何の意図があってこんな痕を残したのか考えたけど、あの人のことだ。多分何も考えてないのが正解かな。
あずき先輩を正しく理解したつもりはない。けど、少なくとも私の目から見る先輩はそういう人だ。
熱いお湯に打たれてると頭がさっぱりしてくる。だらだら髪と身体を洗って、少しは気分も身体もだるくなくなったところでお風呂を出た。
ふわふわのタオルに顔を埋めて、「はぁー……」と息をつく。
今日は何もしたくないな。うん、何もしない日にしよう。
着替えて、髪を拭きながらリビングに戻る。
私に気づいたあずき先輩が手招きした。
「ここ座って」
ソファに腰掛ける先輩のちょうど前に、私は座らされた。
なんだろう、と考えていると、温風が私の髪を撫でる。
髪乾かしてくれるんだ。じゃあ、遠慮なく甘えよう。
人に髪を触られることってそんなに無かったから、先輩の指が髪を梳く感触が心地良い。
少しうとうとし始めたところで、先輩はドライヤーを置いた。
「眠い?」
「少し。でも大丈夫です。」
だって、さっき起きたばっかりだし。ここでまた寝たら、だらだらしすぎなんじゃって思う。
それでもあずき先輩は隣に座った私を自分の膝を枕に横たわらせて、「寝とけ」とか。
なんか、すごい甘やかされてる……? なんで今日そんなお兄ちゃんしてるの……?
なぜか優しいあずき先輩に戸惑うあまり、睡魔は遠のいてた。
どうすればいいのか困惑していると、先輩はパソコンを弄る片手間に私の頭を撫で始めて。しばらくそうされているとまた瞼が重くなってきた。
ちょっとくらい、いいかな。今日は何もしないって決めたもん。ちょっとくらい、いいよね。
瞼を閉じるとすぐに意識は深いところへ落ちていった。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる