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保険って大事でしょ
しおりを挟むダニエルは私が彼の誕生日にプレゼントしたピアスを、渡したその日から常に身に着けてくれている。本当にいい子!
ただのピアスと侮ることなかれ。それには万全の見守り機能をお付けしましたよ。何せ努力の天才ですから!
私だって最初から並外れたチートって訳じゃなくて、魔法を使う為の魔力の量が、ちょっと人より多いかなって程度でしかなかったんだよね。
でも、魔法が使えちゃうんだよ? そりゃあ、使ってみたくもなるでしょう?
その魔法があまりにしょぼかったら、鍛えたくもなるじゃない?
ちょっとだけ、ちょっとだけって、地道にコツコツとやってたら、どんどん成果が目に見えて分かるようになって、そしたら楽しくて夢中になっちゃって。
チートがバレたら大変な事になるから、これ以上はダメだって、もう止めなきゃって思うんだけど、止められなくて―― はっ、これって魔法中毒なのでは!?
いやでも、大丈夫! 隠蔽の魔法もパワーアップしたから、危険度は増したけど、能力も増強されたから、総合評価的にはプラマイゼロでしょう。ねっ!
ダニエルのピアスも高機能なのを隠蔽してあるから、絶対にバレたりしませんよ。
どこからどう見ても、ちょっと珍しい石をつかった装飾品。うん、問題なし。
危険な仕事をするダニエルに何かあったらって、心配だものね。
いざという時のバフ付与や追跡効果に抜かりはありませんよ。ふふふっ。
まぁ、あの子には『ストーカー、ヨクナイ』って、警告されたけど……。
いやいやいやいや、迷惑行為と一緒にしないで頂きたい。
ストーカーじゃなくて、ダニエルの専属SP(セキュリティポリス)ですから!
以前の私は好きな人の私生活の観察に熱中し過ぎちゃって、いきなり通報されて、ポリスメンにちょこっと注意を受けちゃったけどね。あはははは、はぁ~?
そういうのって直接一言、言えば良くない? 同じ友達グループでつるんでいて、知らない仲でもないのに酷くない? 可愛さ余って憎さ百倍〇ンパンマン。
まあ、顔も忘れたし。今更ヤツのことなんか、ミジンコよりどうでもいいけど。
でも、今回はダニエルのピンチに迅速に駆け付ける為の対策であって、言うなれば福利厚生ですよ。うん、きっとそう。保障が手厚いって嬉しいことでしょう?
レムちゃんは精霊だから、その辺の微妙なニュアンスの違いが理解できないだけ。たぶん、きっと、恐らくそう…… だといいなぁ。
私の召喚精霊であるゴーレムのレムちゃんは、クールでお堅く、多少口うるさい。
見た目は小石の寄せ集め人形で全く萌えないので、名前だけでも可愛くしたけど、レムちゃんの事を考えたら、小言の数々まで思い出してテンション下がるわー。
けど、でも、だって、仕方なくない?
お嬢様のエリスだと、何でもかんでも許可を得ないと行動できない籠の鳥だから、ダニエルとの距離もぜーんぜんっ、縮まらないんだもの。
ちょっとくらいズルしなきゃ、私の人生お先真っ暗へまっしぐらなのよ!?
物心がついた時には修道院に居て、光属性の魔力があるからって神殿に連れて行かれーの、いつの間にか男爵家の養女にされーの、王族の前に引っ張り出されーの、聖女に祀り上げられ――て堪るか!
流され続けて人生終了なんて、冗談じゃないっ! 回避すべく頭をフル回転させ、衆人環視の中での再鑑定で秘かに魔力を『Low』状態にキープ。
神官にしつこく何度も鑑定されようとも、バレるようなヘマはしませんよ。
その結果「光属性だが魔力は微弱で、聖女には成り得ない」と結論が出された。
よっしゃー!
まぁ、お陰で男爵家での扱いは雑になったけど、常に使用人に傅かれたり、手厚く世話をされるのは性に合わないから、不満はない。むしろ、ホッとした。
私が全属性の高魔力保持者だと知られたら、聖女認定で王家に即売待ったなし。
ムリムリムリムリっ! 王侯貴族も神殿相手も断固拒否っ!!
学校で風景に溶け込むくらい地味にしていても、キラキラ男子な王子や公爵子息、先輩、後輩に絡まれ、その婚約者のお嬢様方にやっかまれるし……。
行事は仮病を使ってパス。強制参加の合同授業などは手加減して成績上位を避け、キラキラ男子たちが近付く気配を感じたら、透かさず全力スルー。
目を付けられれば、猛アプローチが待っている…… ガクガクブルブル。
どいつもこいつもお呼びじゃないってーのに。自分の彼女を構ってろや!
何なの? モテ期とかいうやつ?? 本気で要らないんだけど。
お昼は校舎裏に隠れてボッチ飯。ご令嬢に囲まれれば、理不尽に詰られる日常。
されど、正論論破など容易いわ! 小娘が私に口で勝とうなど、百年早いっ!
それでも嫌がらせは尽きず。階段落、池ポチャ、誘拐などなど…… しつこいっ!
まあ、事前に察知して、きっちりお仕置きしてあげたけどね。ニヤリ。
私じゃなきゃ絶対ケガしてたもん、あったり前だよね~。人生甘くはないのだよ。
それにしても、階級社会がなんぼのもんじゃいっ! 生き辛過ぎるでしょう!?
前世のしがない人生と違い過ぎて、馴染める気が全然全くこれぽっちもしない。
私は山も谷もない平々凡々、平和でのどかーな暮らしを切望してるって言うのに、誰も分かっちゃくれないし!
最終難関は『卒業記念パーティー』だけど―――― 誰が行くかっ!
まあ、キラキラ男子たちから無事に逃げられても、このまま男爵家に厄介になっていれば、私の意志などお構いなしの政略結婚が待っているだけなんだよね。
そうなる前に、何が何でも逃げ出してみせる!
そんでもって、愛しのダニエルとラブラブハッピーな日々を過ごすんだから!
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