絶対記憶~彼は今日も知識欲を満たす

高戸

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21話

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 大陸の最北端、此処には1つの国が有る。
 圧政国家キャロだ。

 勿論圧政とはこの国が名乗っている訳では無く、もとは商人の噂話から広まったキャロの体制による物だ。
 キャロという国は他の国に比べて劣っている部分が多く、国民を不当に虐げる王族や貴族が多い事から、圧制国家と呼ばれるようになった。
 その規模は小さく、他国からは国としてあまり認知されていない。

 キャロはこの大陸において唯一魔法国家アラインに入学することが事が出来ない国だ。理由は簡単にキャロがアラインに対して支援金を払っていなため。

 キャロ以外の国に、移住資格を持っている者は入学する事は出来るが、それ以外の魔法適正の高い者は才能を生かしきれずに、不完全な魔法すらも覚えられない。

 一応キャロには魔法学校が設置されているが、教師は初級の魔法しか使えず、本も全くと言っていいほど置かれていない。
 そんな中で魔法を覚える事は不可能に近いだろう。

 キャロは遂に資金が底を尽きかけ国家滅亡が目に見えるほど切羽詰まった状態になった。

 そんな時キャロの国王がすがったのは、異世界から勇者の召喚。
 この計画は勇者に魔王討伐をしてもらうためでも、この町の治安を良くしようという計画では無かった。国王は他の4つの国家に戦争を仕掛けようとしているのだ。

 勇者召喚には魔法陣に加えて空間と召喚の適性が必要だった。
 そして王女には空間と召喚の適性がそろっていた、これが国王が勇者召喚に踏み切った理由の一部でもあるだろう。

 だが、その3つの条件が揃ったとしても、勇者召喚には莫大な研究資金や王女の魔法の勉強などが必要だった。

 資金の方は今まで通りならば20年は持つだろう、だが研究資金によりその25%程が必要になった。

 そして肝心の王女の方は勇者召喚には反対だったが、国王や自分の姉などの殆ど命令に近い言葉と共に身分を偽り魔法国家アラインの魔法学校に入学した。





 入学から7年後、彼女は淡い恋心を使命感で押し殺しながら、シエラ・キャロは生徒会長の仕事をこなしていた。




「会長、また貴族や商人たちから、クラスマッチの中止の苦情が大量に届いてます」

「またなの!?もうあれから一週間よ、それに龍が1000匹も来たんだから中止はしょうがないじゃない! それに貴族や商人の相手は先生達の仕事でしょ」

「生徒会が手伝わないと先生達も倒れますよ疲労回復の魔法をフルに使って先生達も対応してるんですから」

「そうよね、そういえばクラ君以外のの皆は?」

「アル君とサラさん以外は職員室で通信魔道具でんわの対応です。アル君とサラさんは新しく研究室に入ったとかで、あ、でも2人とも自分の分の仕事は終わらせていきましたよ」

「そっか、じゃあ2人きりか」

「会長よく聞こえませんでした、なんて言いました?」

「いやね、私今週、凄く頑張ったから自分へのご褒美を貰ってもいいと思うのよ」

「そうですね、会長は頑張ったと思いますよ」

「でしょ?じゃあクラ君暇になったら一緒に買い物に行きましょ?」

「え、俺が一緒に行く必要あります?」

「荷物持ちよ、ふふ」







 クラスマッチが終わり5日が経ったころ、シャラルに自分の研究室に入らないかと誘われた。
 俺は了承した、それでも生徒会が忙しく研究室に顔を出すのは今日が初めてだ。

「こんにちわ」

「あらやっと来たの、いらっしゃい歓迎するわアル君」

 研究室は学校の空き教室を利用している者達が多いが、教室を使うには費用を1年契約で払う必要があるため、部員が1人しかいないこの研究室は、シャラルの自宅に設けられた部屋を使っている。

 基本的には広さ20畳位は有るだろうが研究資料や実験道具、本などがそこら中に有るため体感では6畳程の広さしかない。

「じゃあ、もう一度この部の目的や手法を説明するわね」

「ああ」

「まず、この研究室は魔法の開発を主な活動にしています、そしてその方法は魔法の理解だけではなく自然現象や性質の理解から導き出せると私は考えています」

 まあ、これ以上は魔法の理解ではどうにもならないレベルでこの世界の魔法は進歩していると思う。

 テレビと呼べるかは別として遠隔ディスプレイは存在するし、魔石を使えば水は無限で火も簡単に起こせる、電球は無いがそれも魔石で作る事が出来る。

 この世界は現代日本と比べるとまだまだ発展途上だが技術的に見れば日本を凌駕するほどに魔法というファクターが進歩している。

 例えば家作り、日本では平均4ヶ月かかるような工事でも、土魔法と木魔法で更に空間魔法まであれば1週間程で終わる。
 ただ、地震や落雷に対しての知識が甘いので防災面では現代日本に軍配が上がるだろう。

 そしてこれらの事から、この世界がこれ以上発展するには魔法では無く科学の進歩が必要なのだ。

 俺の使えるオリジナルの魔法も殆どが【絶対記憶】によって引き出された、現代知識によって作られたと言っても過言では無いのだから。

「この研究室の事理解してくれたかしら?」

「ああ、解ったよ」

 その時だった。

「お兄ちゃん!!」

 サラが駆け込んできた。
 お兄ちゃんって言われたの何年ぶりだろうか。それに何しに来たんだろう?

「ここ一応私の家なんだけど、不法侵入よね」

「アル君、この子は何でしょうか?」

「え、この学校2位でこの研究室の部長のシャラルさんだよ?」

「それは知ってるよ、そうじゃなくて、その子はアル君の…か、彼女なの!?」

「「はあー!」」

「サラ、何言ってんだよ」
「かかか、彼女だなんて何を言っているのかしら、あなたの妹は」

「いや妹じゃ無いから」

「え?でもさっきお兄ちゃんって」

「いやそれは・・」

「そんな事よりアル君、説明してよ」

「だから、」

「アル君ってば」

「説明してくれるかしら、アル君」

 何でこんな鈍感主人公みたいな立ち位置に!?
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