絶対記憶~彼は今日も知識欲を満たす

高戸

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22話

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サラとシャラルの誤解や関係性を説明して信じて貰うまで2時間と言う長い戦いを乗り越えた。

「じゃあ、彼女とかじゃ無いんだね?」
「妹じゃ無くて幼馴染なのね?」

「ああそう言ってるだろ」

「「わかったわ」」

 説明だけに2時間も使うとは厄介過ぎる。

「あのーシャラルさん、私もこの研究室に入ってもいい?」

「えっと…」

 シャラルが露骨に不機嫌になった気がした。

「ダメかな?」

「ダメでは無いけれど、その、私は変人って呼ばれてて」

 なるほど、この研究室は一時期はかなりの生徒が在籍していた。
 それがシャラルだけになったのは、シャラルが言いだした『変な事』に有るらしい。

 内容は知らないが例としてはアインシュタインみたいな物だろう、シャラルの事が理解できなくなった生徒が変人と呼び出した。

 実際地動説を唱えたガリレオは天動説を唱える人々から異端者扱いされ投獄までされた。

 結局天才とは孤独だと言う事なのだろう。

「変人かー、多分大丈夫だと思いますよ」

「最初は皆あなたみたいに優しかったけど次第に離れていった、あなただっていつか・・」

「いや、自分を過大評価しすぎですよ。シャラルさんよりもアル君の方がよっぽど変人だから大丈夫ですよ」

 え、ここで俺かよ、そして変人扱い。酷くね。

「え?でも私、なんで人間は地面を歩いているのかとかなんで飛べないかとか、意味の解らない事言うのよ?」

「あー多分アル君なら知ってるから大丈夫じゃ無いかな」

「本当に?」

「知ってるぞ、人間が地面を歩く理由は地面に吸い寄せられてるからだ」

「は?」

 間抜けな声が出た、いつも冷静だったシャラルから出た初めての声色だった。
 いや重力とか高校生だったら普通に理解してるって、はっきり言って小学生でもわかるレベルだ。

「あの、どういう事なのかしら?全然意味が解らないんだけど」

「ほらね、アル君の方が変人だったでしょ」

「そうみたいね、じゃあこちらからお願いしますサラさん、この部活に入りませんか?」

「勿論です。」

 この時にはもう夕方だった、俺たちはもう遅いし残りは明日にしようと言う事で帰り支度をしようとしていた。

「アルくーん大変だーーー!!、会長から、で、で、デデデートに誘われてしまった!」

 クライ先輩鈍感副会長だった。

「私の家の防犯ってどうなってるのかしら」

「で、なんですかデデデートって、美味しんですか?」

「そんなことを言わずに頼む!、デートのイロハを教えてくれ!」

 声がデカすぎる、興奮するのはいいがこっちの鼓膜の事も少しは考えてほしい。

「えっと、なぜ俺に?」

「消去法だ」

 つまり俺以外に適任者が見つからなかったと。
 人に言えた口ではないが、もう少し友達を増やした方が良いと思う。

「アラン先輩などではダメなんですか?」

「彼は堅物だからな、デートのアドバイスができるとはとても思えない」

 まあそうだよな、それでいいなら最初からここには来ていないだろうし。

 それにシエラがデートなんてを言った理由も大体は心当たりがある。

 シエラがファミリーネームの『キャロ』を隠していることと関わりが有りそうだ、それにこのタイミングでって事はそろそろこの学校を辞めるのではないだろうか。

 会長がクライ先輩を好いてるのは見てれば解るし、多分気が付いて無いのはクライ先輩だけだろう、まあ相思相愛だって事だ。

「そのデートに付いては男の俺の意見より此処に居る女性の意見の方が参考になるのでは無いですか?」

「確かにそうだな、2人ともお願いしてもいいだろうか?」

「私はいいですよ、デートはしたこと無いですけど」

「私もデートなんてしたこと無いわよ?」

「それでもクライ先輩には分からないような、女性の望むデート像とかは解るだろ」

 この後直ぐに作戦会議を開始した。

 クライ先輩に一通りの説明をしてもらった結果、クライ先輩は単なる荷物持ちと言う名目で呼ばれたようだったので、行く場所は余り決める必要はないだろう、それにデートは次の休み、つまり明後日なので明日もプランを練るようだ。






 あらかたのプランが決まったところで解散となり、明日に持ち越しになった。


 ~デートの前日~

 生徒会の仕事を終わらせ3人でシャラルの屋敷に向かった。
 会長とクライ先輩はそわそわしっぱなしだったので2人以外はニヤニヤを抑えるのに精一杯だった。




 今日で肝心のプランは固まったので解散した。




 ~デート当日~

「クラ君おはよう、またせちゃったかな?」

「いえ、俺も今来たところです」

 シエラ先輩の服装はいつもの制服では無くワンピースのような服装だった。
 クライとしては身もだえるのを我慢するのに精一杯だ。

「そっか、じゃあ行こっか」

「そうですね」

 最初に2人がやって来たのは当初の予定通り洋服店だった。

 お店の中は様々な洋服が有ったが全体的に高そうなお店だった。

「会長は美人だから何でも似合いそうですね」

「そ、そう?」

「はい」

「そっか…」

 【プラン1】取り敢えず褒める。
 やはり洋服店でデートと言えばこうなるだろう、現代日本ではナルシストと言われてしまうような台詞でもこの世界での口説き文句としては最先端だ。

 例えばそこら辺のゴロツキが使う口説き文句は「おい姉ちゃん、ちょっと付き合ってくれや」だ、これが一般的な世界ではこの言葉は確実にクリティカルヒットだろう。

 そして【プラン2】早い段階で緊張感をほぐす。
 これもも今の台詞で大体は成功しているだろう。

 そしてこれが作戦会議で出たプランの全てだ。これ以外にする事は無い。
 ここからはクライ先輩の技量次第と言えよう。



 この後も予定通りにデートは進んで行った、来店した洋服店は6つそれにお昼の飲食店を含んだ全7店をめぐり終えた2人は公園のベンチに座っていた。
 デートの方はほぼ成功と言っていい、そもそも相思相愛なのだ失敗してもただの笑い話で終わるだろう。

「クラ君、話さなといけない事があるの」

「どうしたんですか?」

 クライは人生で最大の緊張を迎えていた、夕方の公園でベンチに2人。
 デートの最後に言われる事など、いくら鈍感主人公属性があるクライ先輩でも予想できる。

「その、私、この学校をね今月中に辞めるの」

「え………」

 会長がその言葉を口にした瞬間頭が真っ白になり、今までのピンク色の考えは吹き飛んだ。
 そして急速に、理解しがたい、理解したくない現実が襲って来ている。

「なんで?…」

「私の名前はシエラ・キャロ、王都キャロの第2王女です、私は今月中に魔法学校を中退して勇者召喚の儀式を行います」

 シエラの口にした言葉、クライは真剣に受け止めた。
 今、シエラは冗談を言っている訳では無い、それが解るような震える声、そして何より彼女の目は、今にも零れ落ちそうなほどに潤んでいた。

「それは、どうにかならないんですか!?」

「本当は、去年には帰って来いって言われていたの、それを無理言って引き延ばして貰ってるわけだから、これ以上は多分無理だと思う。」

「…」

「キャロはこのまま、世界征服に乗り出そうとしている、実際には魔王を倒した後だから3年後か4年後か、でも確実にそれは実行される。そしてその作戦に絶対必要な私はどれだけ逃げようが連れ帰られる、これは絶対に覆せない」

「そんな…そんな事って」

「クラ君、友達の居なかった私に初めて話しかけてくれた愛しの人、6年間ありがとう、そしてさよなら」

 シエラは小走りで買った服も置いて、クライに背中を向けて走って行った。
 クライはただ、呆然とするしかなかった。

 と、ここまでが監視用の魔法道具をクライ先輩に取り付けて見ていた俺・の調査報告でした。

「クライ先輩、いんですか?シエラ先輩を圧制国家キャロなんかに取られて」

「アル君か、だがこれじゃどうしようも・・・」

「そんな事は関係ないです、あなたはどうしたいんですか!?」

「-ーーッ、そんなのは助けたいに決まってる!!!」

「よく言いました、それでは始めましょう。俺達の作戦会議を」
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