絶対記憶~彼は今日も知識欲を満たす

高戸

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25話

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 勇者たちはタイプによって分けられて訓練をするそうだ。

 前衛・後衛・その他。
 この三つの内2つは解るだろう、前衛は剣や盾を使った文字通りの前衛、後衛も魔法を使った文字通りに戦闘時に後ろで戦う奴らだ。

 分け方としてはLレジェンドスキルの内容によって前衛か後衛に分けられる。そしてLレジェンドスキルを持っていない者がその他に分けられる。
 ま、俺の事だな。

 だが、意外な事に、その他組は10名程いた。

 理由は【アナライズ】によって直ぐに分かった。彼らはLレジェンドスキルの代わりに異能力を持っているのだ。
 異能力はこの世界の理から外れる能力のため、あの水晶では感知できない。

 だが自分で開いたステータス画面では見えるはずなので、こいつ等は自分に異能力がある事に気づいているだろう。

 それでその他組の訓令内容は、自由だそうだ。前衛に混じるもよし後衛に混じるもよし図書室に行くのもよし。自主訓練をするのもよしと、ただの投げやりである。

 俺は取り敢えず図書室に行ってみたが、一度読んだことのある本ばかりだったので、直ぐに図書室をでて取り敢えず不良の亮君とクラスのリーダー玉木君がいる前衛組の見学に行った。

 前衛組は自分のスキルやLレジェンドスキルの訓練(実験)をおこなっていた。

 そこにはその他組改め異能力組の内、小野屋君、下野君、四ノ宮さんの3人が居た。

 3人の異能力は【念動力】【幻覚】【現象再現】といった能力だ。

 小野屋君の【念動力】はそのまんま物を触らずに動かす能力らしい。実際今見せびらかしてるし。

 下野君も文字通り幻覚を見せる能力だと思う。なんか組み手の相手が明後日の方向を見ながら意味の無い言葉を呟いている。

 最後に四ノ宮さんの【現象再現】は良くは解らないが、見たところ雷を落としている。

 こいつ等はそろいもそろって見せびらかして、バカなんじゃ無いだろうか。それとも、皆と同じ様に戦えることをアピールしているつもりなのだろうか。

「お前も訓練に参加するか?」

 騎士団長みたいな顔の、おっさんが話しかけて来た。その他組の3人が前衛組の訓練に参加して力を見せている事から、俺も同じだと判断したのだろう。

「いえ、俺は見学だけで結構です」

「そうか、なら参加したくなったら遠慮なく言ってくれよ。俺は騎士団長のゲインだ」

 どうやら本当に騎士団長だったらしい。【アナライズ】の結果レベルは60とまあ人間にしては高い数字だった。

「はい、よろしくお願いします、俺はアルトです」

 ゲインは訓練に戻って行ったので勇者観察を続けようと思う。

 まずはリーダー玉木君、コイツは実質的な意味でクラス内での決定権を持っている。カリスマ性が高いと言うか洗脳がうまいというか。
 Lレジェンドスキルは【魔法剣】といって剣に付与エンチャントを付ける事が出来る。

 次に不良の亮君は【衝撃操作】で衝撃を発生させそれらを操作する事で衝撃が右に左にと追尾する。
 不良仲間の木村君と中田君は【聖剣召喚】と【魔剣召喚】をそれぞれ持っている。

「おいてめぇ、何見てんだよ!?」

 どうやら見ていたのに気づかれたようだ、隠密系のスキルは所持してないんだししょうがないよな。

『スキル【気配遮断】を習得しました』

 さいですか。

「なにニヤついてんだよ! つーか無視してんじゃねーよ、【限界突破】も持っていねえクセによー!」

「うるせえ、黙れ。殺すぞ?」

『スキル【威圧】がLレジェンドスキル【覇気】に進化しました』

 あ、はい。

「てめえ、調子乗ってんじゃねえか!?」

 どうやら異世界に来てスキルという力を手に入れた事で人を見下す傾向が強くなったようだ。
 それにLレジェンドスキルの脅しを食らっても怖気づかないのは流石不良だ。

「調子に乗っていたとしてもお前が関与する理由にはならないだろ」

「そうだなぁ、だが俺を怒らせた事でお前のリンチは確定だぁ!!【衝撃操作】」

 その瞬間亮君の目の前の土がえぐれそのえぐれがどんどん俺に近づいてくる。

 衝撃波が俺に当たる直前消える。

「何で、吹っ飛ばねんだ!?」

 いや普通に結界魔法だけど? いや結界の適性持ってるのこのクラスの中では2人だけだったか。そりゃ珍しい。

「もう終わりか?」

「てっめえ!! おい木村、中田あれをだせ!!」

「「ああ!」」

 木村と中田が詠唱を始めた、恐らく【聖剣召喚】と【魔剣召喚】を使うつもりなのだろう。

 2人の前に魔法陣が現れ、2本の剣が召喚された。
 召喚されたと同時に木村と中田は膝をついた、相当量の体力かMPを使ったのだろう。

 聖剣は両手剣で魔剣は日本刀と2本とも持つ事は出来なさそうな2本の剣を亮君は無理矢理持ち上げた。

 亮君は二振りの剣を大振りで振るう、【剣術】のスキルを持っているとは言っても2本の伝説級の剣には完全に技量負けしている。

 避けるのは容易かった。

 だが避ける事はせずに食らってみる事にした。

 聖剣と魔剣の能力は基礎効果が腕力2倍、そして追加効果が聖剣は魔族に対する攻撃が1.5倍。魔剣は切った相手をランダムで状態以上にする効果がある。

 二振りの剣は俺に当たり亮君はニヤついたが直ぐに自分がやったことに気付いたのか焦るような顔になった。

 だが俺の身体に傷がつくことは無く、聖剣と魔剣は木刀のように俺の身体に当たっただけだった。

 だが魔剣の追加効果は発動するらしく、体が麻痺して動かなくなった。

 ま、抵抗レジストが発動して直ぐに治ったが。

「何で切れてねんだ!?」

 そりゃ、君の腕力が150と仮定しても倍の倍で600、耐力が2万を超える俺に通用するわけがない。

「おい君達何をしているんだ?」

「た、玉木、ただの遊びだよ」

 その瞬間、亮君の腕が切れ落ちた。

「あ、何が?」

「アルト、何をやっているんだ!?」

 勿論やったのは俺だ。

「あ? ただの遊び(・・)だろ?」

「ああああああぁぁあ、いでえええええ」

 木村中田玉木は何をしているんだ?という目で見てくる。
 まあ通常の反応だな。

「はいはい、ヒールヒール、」

 かろうじて亮君の出血は止まる、だが無くなった腕までは戻らない。戻すことも可能だがこいつに使うなんて馬鹿げた事はしない。

 そのまま亮君一派は治療室に連れていかれた。
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