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18話 休日
しおりを挟む「重い」
目が覚めると俺の家の布団の上だった。
布団と言っても、敷き物を裁縫師で簡単に作って敷いているだけの簡単な物だ。
だがそんな事よりも今の状況の方が切実だ。
何故、エリスとアリアとシリアが俺にのしかかってんだ!?
確かハクレイチョウからアリアを庇って、それで…えっと、シリアがライフルで銃弾をハクレイチョウに撃ち込んでて。アリアに回復魔法かけて、それでアリアの意識が戻ったあたりで俺は気絶したんだったか。
で、何故こんな状況になってる?
「ん、あー。 ネイト!?起きたの!?」
「ああ、」
「良かった、……良かった」
「質問してもいいか?」
「うん!」
「まず、俺が気絶してどれくらいたった?」
「ネイトが気絶したのは昨夜で、今が朝の7刻だから9刻ぐらい経ってるかな?」
9刻? 9時間か? 昨日の夜に俺が気絶したのは多分10時位だったと思う。それで今が朝の7時だって言うなら計算はあうか。
「そうか、ならなんでお前ら3人は俺ののしかかって寝てるんだ?」
「ダメ?」
いや、ダメでは無いし嬉しいけどさ。
「ダメじゃ無い」
「なら良し。後でアリアに聞いて見て」
アリア? アリアが関係してるのか?まさかアリアが言い出したのか!?
庇ったから?……かな。いやでもなんで添い寝? まあ聞けば解るなら後で聞けばいいか。
それにハクレイチョウのせいで出た被害も気になる。
「ちなみにハクレイチョウの被害はほぼ無し。多少の果実が青いまま吹き飛ばされて地面に落ちたのを被害にするなら、被害有り」
「じゃあ、怪我人とかは?」
「シリアが倒したのが早かったから、かすり傷程度の人しか居ない」
それは何よりだ。被害は無いようし、この分ならハクレイチョウの肉とか計算すると利益の方が多いんじゃないか?
「ネイト、にやけてて気持ち悪い」
エリスさん、それは思っても言わないでおくれや。
「すまん、じゃあ今日の予定通り厠を作りに行くか」
「ダメ」
「え?」
駄目なの?なんで?
「ダメ」
「聞こえてるから。そう言う事じゃ無くて、なんでダメなんだ?」
「ノームの人達と話し合った。今日はネイトは休日、意義は認めない」
あ、なるほど。
ノーム達の事だ、俺に気を使ってくれたんだろう。それにこれは好意だろうしな。なら断るのも悪い、今日は自分の能力やシリアの能力の把握でもするか。
「ネイト、働いちゃダメ」
「解った」
「解ってない顔してる」
それは俺の思考をエリスさんは読めるって事ですか?
「取り敢えず、ネイトが働きだしたら私が止めるから」
「ああ、じゃあ久しぶりに二度寝するよ」
「うん、一応怪我人だし安静にね?」
「「お休み」」
_______________
「おはよう、今何時?」
「おはよう、今は11の刻ぐらい」
さて、なぜ「何時?」って質問に疑問を覚えることなく、的確な返しが出来るのか。この世界の時間って刻なんだろ?
やっぱ心読んでるだろ。
「アリアとシリアはさっき起きて、朝ごはん作るって言って出ていった」
「そうか」
「ネイトの分も作るって」
「そうか……」
「どうかした」
これフラグじゃないよな?
「何でも無い」
「シリアは下手でアリアは上手いって」
エリスさん心読んでますね。 異世界にはこんな特殊能力が有るのか、気を付けなければ。
これどうやって回避すればいいんだ?
ま、エリスだしいいか。
あれ、少し前まで裏切られないようにって考えてたはずなのに、もう信用してるのか。俺チョロすぎだな、気を引き締める意味でもこの休日を使わせて貰おう。
「じゃあアリアとシリアの所に行くか」
「うん」
_______________
「あ、ネイトさん起きましたか」
「おはよう……ございます」
「ああ、おはよう」
ん? アリアってこんなに静かな性格だったか? 元気が無いのか? 俺の記憶ではもう少し活発的な性格だったような気がするけど。 それか朝は弱いのか。
「ネイトさんも朝食取るでしょ? もうすぐ出来あがりますからそこに座ってて下さい」
「ああ、解った」
この村には、一軒一軒に調理用のスペースがある訳では無く、4軒に一スペースの割合で大きめの調理場が設置されている。
ま、ノーム達が「長には専用の調理場でいいでしょう」と言った事で、俺の家の裏には俺ん家専用の調理場が作られた訳で、そこに有る木製の自作テーブルに配置された4つの同じく自作の椅子に俺とエリスは腰掛けている。
アリアとシリアは並んで調理しているが別の料理を作っているようだ。
アリアの方からは、昨日の昼食以降なにも食べていない胃袋を刺激するようないい匂いがしてくる。
対照的にシリアの方は黒い煙が上がっていて、もう修正不能なほどに調理をミスってるとしか思えない匂いが漂ってくる。
職業料理人でなくても調理自体は可能だ、料理人は調理器具の使用や調理知識が他の職業の者に加えて多い事が特徴で、その結果美味しい料理が出来あがる。
何が言いたいかと言うと、シリアでも美味しい料理を作る事は可能だと言う事だ。
「(現実逃避……)」
エリス…そんなに俺は顔に出やすいのか?
後ボソッと言っても聞こえてるから、無論当たってる訳だけど。
あーシリアの料理食べたくないな。
「出来ました」
「出来ました!」
シリア楽しそうだな~、なんであんなテンション高いんだよ。 すっごい美味しく出来たのか?
俺の考えが当たってますように。
「まずは卵焼きです」
出される皿は二枚、右がアリアで左がシリアが作った物だ。卵焼きってこの世界にもあるんだな同じ名前だし。
まずアリアの卵焼きは黄金色で、調味料が無いはずのこの村でどうすればそんな美味そうな香りが出るのかはファンタジーとしか言いようがない。
次に、シリアの卵焼きだが、色は何故か黒く炭化しているのは間違いない。はっきり言って残飯レベル。
右の皿に乗っている卵焼きを一口食べる、一口サイズにカットされているので食べやすい大きさで箸でもつかみやすかった。ちなみに箸はこの世界では一般的では無く俺の自作品だ。
アリアの卵焼きは日本で食べた調味料てんこ盛りの物に比べると薄味だが、気にならずに食べられるほどに美味しい。
でも卵なんてこの村に有ったか?
あ!!
「これってハクレイチョウの卵か?」
「ん? 他に卵が無かったので、それにハクレイチョウの卵は大きくて4人暮らしでも1ヶ月はもつって言われているんですよ」
1ヶ月か、確かにもちそうな大きさだったな。
「美味い!」
「良かったねアリア」
「うん!!」
「それじゃあ私が作った卵焼きも食べて下さい」
「お、おう」
これ、毒とかじゃ無いよな? 一応鑑定しとくか?
_______________
ハクレイチョウの卵の卵焼き レア度1
備考 シリアがネイトのために作っ
た卵焼き。だが、炭化しているため
見た目は黒く変色している。
ハクレイチョウの卵で作られている
ため一定の味は保たれている。毒は
無い、通常は料理人C以上の者が作
るのが前提であり、それ以下も物が
作った事で味は大きく落ちている。
_______________
料理の場合はこんな備考になるのか、それよりもハクレイチョウって便利だな。誰が調理しても一定よりおいしく出来あがるらしいし。
毒も無いようだしこれなら食べられるな。
でも見た目がな、これ唯の炭だし。
「ネイト、あーん」
エリス、お前自分が食べたくないだけだろ。
「わかった、食べるよ」
「「あーん」」
「うん、美味しいよ」
確かにうまい、この触感さえなければだが。元々卵だったとか信じらないな。
「良かったー。私、昔から料理が下手で美味しいなんて言われたの初めてですよ!」
「そ、そうか」
もうやけだ、食うよ。
「よし」
モグモグモグモグ
シリアの卵焼きと言う名の炭を口に書き込み水で一気に飲みこむ事で、ギリギリ全ての卵焼きを食べる事が出来た。
「もう、そんなにがっつかなくても。そんなに美味しかったんですか?」
シリア、これは言っていいのか? ダメだろ。
これからは絶対にシリアの料理はさせないようにしないとな。
「美味しかったから、これからはシリアの料理はお祝い事の時だけにするか」
「え、?」
「やっぱ、毎日作るのか?」
「いえ、私たちってまだ此処に居て良いんですか?」
そういえば、泊めるのは今日だけって言ってたっけ?
「構わないと思うぞ。実際シリアがいなけりゃハクレイチョウを止められなかっただろうし」
「本当にいいんですか?」
「無理にとは言わないが?」
「いえ、喜んで受けさせて貰います!」
「ああ」
「良かったね、アリア」
「…うん」
「あ、そっか」
「どうかしたか?」
アリアの様子が朝からおかしいんだよな。 朝だからテンションが低いのかと思ってたが、料理を褒めた時は満面の笑みを浮かべて喜んでいたし。
「ネイトさん、」
「ん?」
「「ごめんなさい!」」
え?
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