ステ振りの王様

高戸

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25話 迷宮で

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「なんで迷宮なんだ?」

 犬の魔物を蹴り飛ばしながら質問する。
 反応速度にいつも振っているおかげか、今では使わなくとも相手の動きが見えるようになった。流石に使ったときの方が見えるが、この辺りに出現する魔物には必要無い。

「1つは私がネイトに貢献したいから」

 貢献。
 確かにノームや白樹は道具開発に、シリアはちゃんとした戦力になっているし、アリアはそれこそゴーレムでも持たせればシリアよりも活躍するだろう、エリスが言っているのはそういった事なんだろう。

「私は【剣士】だけどエルフでもあるから生半可な戦力にしかならない。今、ネイトの国で私は何の役にも立てて無い……だから」

 確かエルフは魔法適正が高い代わりに、妖精族の欠点として身体能力という劣等部分も持っている。
 理由は解るが、なんで迷宮に俺と来る必要があるんだ?

「だから迷宮を完全攻略すると貰える【力】を手に入れてネイトの役にたちたい」

 それで迷宮なのか。それよりも迷宮で手に入る力って何なんだろうか?

「なら2つ目の理由も聞かせてくれ」

「それは、ネイトと2人きりになれるから」

 な、んで……俺はまた口説かれてるだよ?

「2人っきり?」

 口説かれている、何て勘違いの可能性も大いにある。だから確認は絶対に必要だ。

「いつもはシリアやアリアが居て、それも楽しいけど、2人でここまで走って来た時のネイトはカッコよかった」

「そっか」

 いやエリスが俺の事を好きって言ってくれたのはついさっきだし、口説かれてるんだろう。
 でもまだ結婚や恋愛をしている余裕は俺には無い。大陸の真ん中に位置するこの場所に国を作ったんだ、他の国が本気になれば簡単に潰されてしまうような規模しか無い状態で、一国の王になろうって奴が幸福に満たされても、いい事なんて何も無い。

 エリスが好きな事に偽りは無い、けど……

「今は治める者として俺自身を甘やかす訳にはいかない」

「うん」

 そんな気持ちのいい笑顔で同意しないでほしい。
 全く。我慢の限界の方が早いぞ。

「この話はここまでにして、今日中に攻略する」

「ああ」

 それじゃあ俺も効率重視で本格的に本気で行くか。

 方法は有り、試した事もある。それでも大幅なレベルアップは不可能だったし資源も必要だった。でも今は資源は集まり、それが魔石であっても倉庫として使っている家の1つに行けばストックはかなりの数を用意できている。

 つまり魔物の素材は有れば新たな閃きが生まれる可能性があるが、魔石に関してだけ言えばこれ以上必要ない。
 大量に必要になったとしても森や、この迷宮でもかなりの数をかなり短時間で効率的に採取できるだろう。

 そしてここで出てくるのは【変換師】の能力だ。

 (様々なポイントをステータスや他のポイントに変換する事が可能
 魔力やお金をポイントに変換する事が可能、逆も可能)


 今回の着目点は『魔力を』という部分だ。『魔力』基本的に目には見えず魔法を使う際に消費されるエネルギーの事。これを変換できると言われてもそんな不可視で不明瞭な物を変換する、手に取る方法が解らない。
 ではこの魔力を固体化、結晶化させた物である魔石であれば魔石に含まれる魔力をポイントに利用できるのではないか。

 この実験はすでに終了していて可能だという結果が出ている。

 だが変換効率は何というかかなり微妙だった。

 ゴーレムの魔石が1つ1p、芋虫の魔石が0.8pと銀貨8~10枚分のポイントにしかならなかった。
 この迷宮ダンジョンであっても蛇の魔石が1.3pで効率的では無い。

 それでも数値となって確実に自分のレベルアップに繋がり、魔石がこれ以上必要ないのであればその程度の事はするべきだろう。100体で130pと考えれば悪くない数値だ。



・・



 それから歩く事1時間。
 1階のルートはすでに解っていたので最短ルートで10分ほど歩き2階に到達。2階も1階と同じ様に洞窟が続いていた。だが、1階と異なり分かれ道は殆ど無く40分で2階を突破して今3階に足を踏み入れている。

 1階と2階で出会った魔物の数は24体、41pを稼ぐことに成功した。魔物は基本的には蛇の魔物一択だったが3回に1回ほどの確率で他の動物に類似した魔物が現れる。
 蛇の魔石の変換ポイントが1.3pなのに対し3回に1回の魔物の変換ポイントは平均2pと変換率は悪くなかった。

「迷宮って何階まで有るんだ?」

「迷宮にもよるけどここみたいな出来て数年しか経過していない迷宮は10階以下の物が殆ど」

 10階以下か、帰りの時間も考慮すると探索できるのは良くて後1時間程度だろう。4階か5階が最下層なら今日中に終わるだろうが、迷路のような階層があると厄介だな。もし10階まで有るんなら1日はかなりきついか。

「ちょっと急ぐか」

 白樹に貰った時計の時針は現在3と4の間を指している。ここまで来るのにかかった時間が1時間で最悪10の刻までには帰りつきたい。

「うん」

 それからは早かった、1階2階と同じ様に洞窟型の迷宮をエリスの光の魔法を頼りにほぼ全速力で走る、魔物が現れた場合は止まるが【暗視】と【遠視】で先に見つける事が出来るので俺かエリスの先制攻撃で直ぐに終わる。
 3階には分かれ道が数か所あったが、運を無理矢理上げて進んだので間違ったルートに入る事は無かった。

 結果的に3階は20分という好成績で終了した。残り時間は40分である。

 3階までに迷宮攻略方法が何となく見えて来た、次は4階だが今までの階層よりも更に楽になるのではないだろうか。

 4階に繋がる先に見えたのは扉だった。5メートルはある大きな扉は俺とエリスが警戒しながら近づくと触れもせず勝手に開いた。
 迷宮ダンジョンにある大きな扉、この先を想像するのは簡単だろう。ボス部屋。
 この危険な二文字が俺に脳裏に移った瞬間、扉の中から……

「こんにっちわ~」

 気の抜けるような声が飛び出した。

 それは恐らく妖精に属する者なんだろう。エルフやノームも妖精族って種族のでは有るが、手乗りサイズ、4枚の羽その姿は完全に俺の想像通りの妖精だった。

「では!、恐らく迷宮初心者の貴方達に凄く省略した説明をするので聞いて下さい」

 ツッコミ処が多そうなやつだな。まあ説明をしてくれるのであれば質問ツッコミよりも先に説明を聞いた方がスムーズか。

「うざい」

 ああ、そうだったエリスって若干KYだった。

「うざくありません!! 後質問などは私の説明が終わってからき・き・ます」

 俺がなにかを言うまでも無かったか。
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