ステ振りの王様

高戸

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24話 魔道具を造ってみよう『ゴーレム』

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「デートだって」

 シリアはアリアに尋ねるように、ネイトとエリスが迷宮デートに行ったことを告げた。

「やっぱりネイトさんはエリスの事好きなのかな?」

 ネイトが時間を間違えて白樹と話している頃、エリスはアリアとシリアに初めて見せるような笑顔でデートの事を話していた。それを聞いた2人はエリスがデートに向かったのちに、この会話をしている。

「どうだろうね、でも私たちがここに来るまで女の子はエリスだけだった訳だし恋仲って可能性も否定できないと思うよ」

「そうだよね~」

 シリアは自分が発した言葉に、アリアはシリアが出した考えたくない可能性に、あからさまに元気が無くなった。

「うん、じゃあ点数稼ぎでもやってみる?」

「点数?」

 シリアの提示した事に疑問を抱いたアリアは、それを口にする。瞬間にシリアの言葉の意味を何となくだが理解できた。

「ネイトさんの役に立つって事?」

「そう!」

「でもどうやるの?」

「それはね~、後のお楽しみです。取り敢えず白樹さんの所に行こうか」

「白樹さん?」

「うん、昨日この村に来た人よ。今は魔法道具の研究をしているらしいわ」

 白樹については村で住むことが決定した時点で、村の殆ど全員にネイト同伴で挨拶をした事と、村のネイト以外の人間だということで有名だ。当然アリアとシリアがそれを知らない訳は無い。

「魔法道具の研究でどうやって私たちがネイトさんの役に立つの? それって白樹さんの点数稼ぎじゃないかな?」

「そうね、でもこれ以上は白樹さんに会ってからにしようね」

「?。はーい」

 2人は白樹の家に向かってみる事にしてネイト宅を後にした。

 歩く事3分、白樹の家はまだ見えないが白樹本人を発見した。ネイト宅から白樹宅に行く途中、厳密に言えば冷蔵庫を開発した場所の近くに新開発をメインとした場所が4軒分有るのだが、その前で発見した。
 シリアが代表して白樹に話しかける。

「ちょっといいですか?」

「ああ、シリア君とアリア君だったか?、どうしたのかね?」

「はい、少し相談が有ってですね」

「うむ、決まった予定は特に無いから構わないよ」

「アリアの固有職業についてなんですが……」

 シリアの言いたい事を察した白樹は、その内容に惹かれそれについての研究、開発を始める事に躊躇しなかった。白樹はこの村に来て魔石を研究する時間は1日しか無かったにも関わらず圧倒的な速度で魔石についての資料を完成させていた。

 完成出来た資料の中から使えそうな物を選び、完成図を想像し、それを作り始めた。

「目的は戦力の確保か。一重に戦力と言っても使い方次第な訳だから応用の利く物を作る必要がある。だが普通ではつまらんし、それに戦力としても生半可な物になるぐらいなら魔法なんかを組み込んでもいいかもしれない」

 魔石には絶対の法則が存在する。

 白樹が発見した物の1つに『命令は命令した者の想像力が少なからず関わっている』という物がある。例えば冷蔵庫の『保温』や『温度管理』には欠けている部分がある、初期的な設定温度だ。保温するにしても何度の状態を保っているのかは明記されていない、だがその命令でも温度は冷蔵庫として使い物になっている。

 それを疑問に思った白樹は魔石の法則を調べ『思考が魔石に影響を与えている』という結論に至った。

「まずは人形を操る能力の理解からだな」

 そう言うと白樹は家に一度戻り糸釣り人形のような物をを3つほど持ってきた。

「まずはこれを操ってみてくれたまえ」

「は、はい」

 アリアは人形の額に手を置き、置いた手を戻した。その動作が終わった直後に人形は2本の足で立ち、歩き始めた。

 その後も実験は続き以下の事が解った。
・視覚と聴覚は共有できる。(目と耳が無い物は操作不可)
・物理的に立て無い物は操ったとしても立てない。
・人形の出力の最大値はクオリティー(完成度)によって大きく左右される。

 この事から、白樹の頭の中でゴーレムの設計図と技術が出来あがって行く。

(思考によって操作可能と言う事は、魔石にも影響を及ぼせる可能性があるな)

「では次にこの魔力切れの『水球』の魔石を装備した状態のゴーレムに魔力を与えて魔石の能力を使ってみてくれないか?」

 例えば『水球』という命令をセットした時点でそれは発動され、命令した者が考えたスピードと大きさで連続的に魔力が切れるまで放出されるため実戦では使う事が出来ない、そのことから白樹は魔力切れの魔石に魔力を直で流し込む事で魔法を使おうと考えたのだ。

「はい」

 だが結果は失敗だった。魔石を人形に持たせたとしても、通常の魔石を持った者が『水球』という魔法を魔石を介して使えない以上、ゴーレムにしても同じ事だった。

「なるほど、ではゴーレムの一部に魔石を組み込む事で魔石自体をゴーレムの機能にしてみるか」

 かなりの長い実験を末、ノームたちの協力もあって『マジックゴーレム』と名付けられたこの世界に1つしか存在しないであろうゴーレムは完成した。

 ゴーレムを疑似的に作る事は不可能とされているが、アリアの能力が有れば動く機能は必要無いため、人工知能やプログラミングも必要ない。
 加工系の職業能力は5時間でゴーレムの原型を作りだし魔石加工での命令は直ぐに出来た事が完成させる事が出来た大きな理由だろう。

「少し無骨では有るがどうだろう、アリア君」

「大きいね~」

 マジックゴーレム自体はネイトが日課のように倒しているアイアンゴーレムと変わらない大きさだが、身長120㎝付近のアリアから見れば膝を付いている状態で2mを超す身長とアリアの3倍はあるのではないかという肩幅はアリアに大きいと思わせるには十分だったようだ。

「では早速で悪いが魔法を撃ってみてはくれないか?」

「はい」

 額は届かなかいので、お腹の部分に触り操作開始を告げる。

 ゴーレムの起動並びに操作は問題無く行えた。
 問題は魔法である。

 肉体を動かす要領で魔法発動の為のスイッチを起動させ、水球の魔法を発動させた。
 水球の大きさは、命令を書き込んだノームの想像通りの大きさと速度で発動した。
 弾数に制限があるが、魔力を魔石に送る回路を作る事で魔法を発動させることは出来た。

「成功!?」
「やったー!」
「うむ」
「「これまた凄いものが出来たのう」」

 この世界で初の技術を目の当たりにした面々は自分の手で起こした進歩に驚愕するばかりであった。

「魔法は取り換えが可能なので、『索敵』と自然破壊を考えて『風刃』にしておこう」

「はい」

「「ありがとうございました!!」」

 アリアとシリアのお礼の言葉に白樹は頭をかきながら答えた。

「仲間だからね」

 その後もゴーレムの調整は続き白樹の夢のような悪魔的軍事力強化が図られた。

(宝石には魔石の効果を高める効果があるのだったな、炎は赤でルビー、水は青でサファイア、風は緑でエメラルド、土は黄色でトパーズ、宝石その物でゴーレムを作成すれば火力特化のゴーレムも作れるか?)

 このアイデアを利用した4色のゴーレムは★4職業の【魔導士】にも後れを取らない大勢力になった、なってしまった。
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