悪役令嬢の末路

ラプラス

文字の大きさ
58 / 68

燃えて、なくなれ【4】

しおりを挟む
 「この森はね、3年前に火事で森の大半が燃え尽きてしまったんだけど、木を植えたり、植物学者にアドバイスをもらいながら、今はこの通り。順調に回復している途中なんだ」
 「この森も、そうだったの…」
 「この森ってことは、リィナが住んでいた森も火事に?」
 「ええ」

 彼は私を客人として自分の屋敷に連れ帰った。
 それから、私と彼はたくさん、たくさん話をした。お互いのこと、森のこと、、、。

 カルロスとの会話は楽しい。私の知らないことを、彼は沢山知っていて、それを自慢するでもなく、知識のない私でもわかるように噛み砕いて教えてくれる。そして、ユーモアのセンスもあり、何度私は彼の冗談に笑ったことだろう。その度に、私の心は軽くなり、同時に彼への想いは日に日に強くなっていった。

 ある日、彼に聞いてみた。

 「どうして、そこまで森に親身になってくれるの?」と。

 彼は少し悲しそうに笑みを作った。

 「…贖罪なんだ」
 「え…?」

 「あの森には、昔、女の子が住んでいたんだ。けれど…」

 カルロスはそこで言葉を切る。何かに耐えているかのようだ。
 彼が、言葉の続きを話すまで待つ。
 数秒、間があった後、彼は再び話しはじめた。


 「私の父が彼女の居場所を奪ってしまった。殺してしまったようなものなんだ」

 彼は私の反応は確認せず、せきをきったように話を続ける。

 「父はここらへん一帯の領主だった。そして、かつて人喰いの森と呼ばれたあの森を邪魔に思い、森を焼き払って新たな街を作ろうと計画した。私は父に反対したが、その努力も虚しく計画はすぐに実行された。
 森はすっかり変わり果てた姿になってしまった。
 私はその姿を見て、森の秘密を知ったんだ」

 「秘密?それは一体…」
 「森は女の子を守っていたんだ」
 「どうしてわかるの…?」
 「焼け残った木の根っこの奥に、女の子の服が何着か埋まっていたのを発見した。他にも、木でできた食器や櫛など、も埋まっていたんだ。
 女の子の死体は見つかってはいないが、彼女が生きているのかはわからない。それでも、私は、燃やされる前の森に戻して、彼女に返してあげたいと思っているんだ」
 
 それが、あなたの原動力…。
 彼の中にいる女の子にちょっぴり嫉妬してしまいそうになる。
 ただ、その女の子と自分が重なるような気がして、さらに聞いてみた。

 「その女の子のものは、まだ残っているの?」

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

お飾りの妃なんて可哀想だと思ったら

mios
恋愛
妃を亡くした国王には愛妾が一人いる。 新しく迎えた若い王妃は、そんな愛妾に見向きもしない。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる

mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。 どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。 金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。 ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

処理中です...