悪役令嬢の末路

ラプラス

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夢【2】

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 木の根に腰を下ろすと、さっきまでの高揚感が落ち着いて、のんびりと目の前を眺めてみた。
 黄金色の小麦畑が広がっていて、そこに太陽の光が当たり、さらに輝いているように見える。

 「…とっても綺麗だわ」
 「そうだろう。今は春に播種はしゅした春小麦の収穫時期なんだ」
 「それじゃあ、目の前の小麦畑ももうすぐ見れなくなるのね」

 いずれ見れなくなる小麦畑に思いを馳せると、彼が微笑んだ気がした。

 「大丈夫だよ。今年の小麦畑はもう終わるけど、また来年があるんだ。来年、再来年、またその次の年…って、ずっと受け継がれて行くものだから、消えて無くなったりはしないんだよ」
 「そっか…そうよね」

 あったことをなかったことにすることはできないし、なかったことをあったことにすることもできない。例えそれが失われても、そこにあった記憶は無くならない。
 彼の言葉に、言われようのない安心感を抱き、再び私たちは長細い農道を歩いって行った。



***********


 「さぁ。この坂を上がったら別荘だよ」
 そう言われ、急な坂を登って行く。
 彼をチラッと見れば、慣れているのか、呼吸を崩した様子は微塵も感じない。
 普段からこんなに体を動かしたりしていない私は、既に息切れを起こしていた。
 「もう少しだよ。頑張って!」
 「頑張ってって言ったって、こんな坂無理よー!!」

 叫んだ瞬間、突然腕を引っ張られたと思ったら、坂は消えていた。

 「えっ、あれっ?」
 「登れたじゃん」
 「それはーー」
 ーーあなたがーーと言おうとすると、目の前の屋敷からいきなり人が飛び出してきた。

 「坊っちゃまっ!今までいったいどこをほっつき歩いていたのですか?!午後はご婚約者様が訪ねてくるとあれほどっ!」
 「わ、わかってたよ?バーサ、休んでなきゃダメじゃないか。それに、思わぬ事態が発生したから、人助けをしていただけだよ」
 「休んでなどいられません!……人助け?」

 そこで、やっと私の存在に気づいたらしく、バーサさん(?)は顔を赤くした。

 「至らないメイドで申し訳ございません。お嬢様。さぁさ、中へどうぞ」
 「あ、ありがとうございます」

 なんだか、メアリや屋敷の使用人達みたい。
 主人(?)の為だったら、怒ったり泣いたり、笑ったりする心優しいメイド達。



 バーサさんを見て、自分の周りには、こんなに優しい人たちがいることを、忘れていたことを恥じた。


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