24 / 68
夢【5】
しおりを挟む
りんご飴の行列は思ったより長く、予想以上に時間を要してしまった。
あとは…。
アイラはさっき通った通りに気になるもの見つけて、探し歩いていた。
**************
その頃彼は、河原に腰を下ろして、土手を流れる川を眺めていた。
今日は、何故か、いろんなものがキラキラして見える。
屋台や提灯のほんのりした灯り、みんなの楽しそうな声と対称に、密かに聞こえる川のせせらぎ、それらを照らす月明かり、全部、全部が、生き生きしていて、今まで感じなかった何かが、目の前にある。
全部のこたえが、ここにある。
手を伸ばせば、すぐそこに。
手を……。
「おっ待たせー!」
急に目の前が暗くなったと思ったら、顔に衝撃が来た。
「!」
「これね、お面って言うんだって。面白いでしょう?あとね、……っはいこれ。たこ焼きだよ。たこ焼き屋のおじさんがね、すっごい男前でさー、4コもおまけでつけてくれたの!すごくない?4コだよ?いやー、いい人だったなぁ」
「結局、買ったのはその面とたこ焼きだけか?」
「ううん。もちろんりんご飴も買ったよ。あとね……じゃじゃーん!!」
彼女が出したのは、同じデザインで色違いのブレスレット(2つ)だった。
「今日のお祭りの記念にって思って買ってみたの。…どうかな?嫌だった?」
「いや、確かにこれを見ればいつでも今日のことを思い出せそうだな」
そう言うと、彼女はホッとしたような顔になる。
「でしょう?…私があの別荘を…出ても、忘れないでね?私も忘れないから」
「ああ。約束する」
「…うん」
そのとき、彼女が小さく叫んだ。
「あ!ねぇ、あれ蛍よね?」
彼女の視線の先には、小さくもはっきり見える、緑がかった黄色の光。
「もっと近くで見て見ましょうよ」
そう言って、彼女は立ち上がり、蛍をもっと近くで見ようと、足を進める。
その先は……っ!
「待てっ」
僕が手を伸ばすのと、
「えっ?」
彼女が振り返ろう…としたところで、ぬかるみに足を取られ、身体が傾いたのは、同時だった。
彼女の身体を自分の腕に絡められたところまではよかった。ところが、僕まで足を滑らして、僕と彼女は、川のすぐそばまで転げて落ちてしまった。
あとは…。
アイラはさっき通った通りに気になるもの見つけて、探し歩いていた。
**************
その頃彼は、河原に腰を下ろして、土手を流れる川を眺めていた。
今日は、何故か、いろんなものがキラキラして見える。
屋台や提灯のほんのりした灯り、みんなの楽しそうな声と対称に、密かに聞こえる川のせせらぎ、それらを照らす月明かり、全部、全部が、生き生きしていて、今まで感じなかった何かが、目の前にある。
全部のこたえが、ここにある。
手を伸ばせば、すぐそこに。
手を……。
「おっ待たせー!」
急に目の前が暗くなったと思ったら、顔に衝撃が来た。
「!」
「これね、お面って言うんだって。面白いでしょう?あとね、……っはいこれ。たこ焼きだよ。たこ焼き屋のおじさんがね、すっごい男前でさー、4コもおまけでつけてくれたの!すごくない?4コだよ?いやー、いい人だったなぁ」
「結局、買ったのはその面とたこ焼きだけか?」
「ううん。もちろんりんご飴も買ったよ。あとね……じゃじゃーん!!」
彼女が出したのは、同じデザインで色違いのブレスレット(2つ)だった。
「今日のお祭りの記念にって思って買ってみたの。…どうかな?嫌だった?」
「いや、確かにこれを見ればいつでも今日のことを思い出せそうだな」
そう言うと、彼女はホッとしたような顔になる。
「でしょう?…私があの別荘を…出ても、忘れないでね?私も忘れないから」
「ああ。約束する」
「…うん」
そのとき、彼女が小さく叫んだ。
「あ!ねぇ、あれ蛍よね?」
彼女の視線の先には、小さくもはっきり見える、緑がかった黄色の光。
「もっと近くで見て見ましょうよ」
そう言って、彼女は立ち上がり、蛍をもっと近くで見ようと、足を進める。
その先は……っ!
「待てっ」
僕が手を伸ばすのと、
「えっ?」
彼女が振り返ろう…としたところで、ぬかるみに足を取られ、身体が傾いたのは、同時だった。
彼女の身体を自分の腕に絡められたところまではよかった。ところが、僕まで足を滑らして、僕と彼女は、川のすぐそばまで転げて落ちてしまった。
164
あなたにおすすめの小説
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる
mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。
どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。
金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。
ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。
【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。
逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?
魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。
彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。
国外追放の系に処された。
そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。
新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。
しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。
夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。
ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。
そして学校を卒業したら大陸中を巡る!
そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、
鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……?
「君を愛している」
一体なにがどうなってるの!?
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる