悪役令嬢の末路

ラプラス

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探し人《夢》【3】

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 私が生まれたとき、既に母と父の関係は冷めていた。元々、母と父もそれぞれ好きな人がいたが、無理やり強いられて結婚したという。
 それでも、血を絶やすわけにはいかないと、子を一人設けた。

 それが私。

 けれど、生まれた私を見た父は、母を怒った。
 私は、父とも母とも、全く似ていなかったのだ。
 ーーじゃあ、誰に似ていたかって?
 さぁ。それは私にも分からない。


 それから父と母は離縁し、私は施設へ。
 要するに、捨てられたの。

 父も母も、どっちも私のことを引き取るなんて言わなかったんだ。外聞が悪いとか、そんな理由で。どっちも自分のことばっかり考えて、一つでも私のこと、考えたことなんてないんだろうね。


 私、どうして生まれて来たんだろう。


 ずっと、施設でそれを考えてた。

 
 一年ずつ、一歳ずつ歳をとって行くたびにね、わかることがだんだん増えていくんだ。その度に、父と母のことを考える。

 私を捨てなきゃならなかった理由を考えるの。


 でも、どうしても、いくら考えても答えは同じ。


 ーー自分のため。


 自分から愛することも、他の誰かから愛されることも知らない私は、愛していた人から裏切られる痛みを知らない。それが痛みになることすら知らなかった。


 だから、涙なんて一滴もこぼれなかった。


 こんな私はおかしいのかな?


************


 そんなある日のこと、少し不思議な夢を見た。

 私を捨てた後…の父と母の夢。
 そして、私はなぜかその夢の中で幽霊みたいに夜の街を歩いていた。


 冬だった。夢で見た母は暖炉の火もない真っ暗な部屋に一人で椅子に座って、ずっとお腹をさすっている。たまにお腹に向かってか、話しかけたりもしていた。膝の上には産着が置いてあって。頬はこけて、前より一層細くなっていた。記憶にある母とはあまりにかけ離れていて、私はつい…夢の中の母の側による。
 すると、母は私に気づいて、不思議そうに首を傾げた。

 「まぁ。どなた?」
 「私は……アイシアナ」

 両親から呼ばれることのなかった名を告げる。

 「アイシアナ!奇遇ね。この子の名前も、アイシアナって言うのよ」

 そう言いながら、お腹をさすっている。まるで、そう、お腹にいる子どもを愛しているかのように。
 そっと覗いてみる、けれど母のお腹はぺったんこ。

 もしかして…。

 「あなたは、その子を愛しているの?」
 「勿論。自分の血を分けた家族ですもの。愛しているわ。ずっとね…」
 「どんなことがあっても?」
 「ええ。どんなことがあってもずっと、ずっと、この子を愛してる。この子の成長は私の喜び。この子の笑顔は私の幸せ。この子が生まれてくるのをね。毎日楽しみにしていたの。……あれ?私……」

 突然、母は身を抱き込むように縮こまった。
 頭が痛むのか、頭を手で押さえている。

 「ああああああああああああああ!!」
 「かぁ、さま…」

 口をついて出た声に、母がピクリと反応した。


 「あなた、誰?」
 「っ……あなたは私の子じゃない!出てって!出て行きなさいよっ」



 ずっと…。


 愛を、探してる。
 そのは、きっと私が受ける筈だった愛。でも、もう手に入らない。



 なら、私の愛は何処にある?


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