悪役令嬢の末路

ラプラス

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探し人《夢》【18】

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 アイシアナは来た道を帰ってきていた。

 声が聞こえた方向と、小さくて、密談に向いているような小屋を探す。
 すると、また声が聞こえた。

 「声が大きいぞ、ファーガス。私のことを呼ぶときは特に気をつけろといったはずだ」
 「も、申し訳ございません」
 「ふん。まあ良い。明日になればあの村も燃えてなくなるのだ」
 あの売女の意思も、一族の恥も一緒にな。


 あそこだ。
 見つけた。小さな明かりが見える。
 もっと近くに…。

 「それで、準備は完璧なんだろうな?」
 「もちろんでございます。あの村の近くの山に住んでいる山賊にたんまり金を渡して、指示してございます。頭は元々あの村に恨みを持っていたようで、すぐ頷きました」

 嘘!?ハルトはそんなこと言ってなかった。

 「わかった。だが、口封じはちゃんとしろ。変なところから私の名が出てきて爵位をはく奪されてはかなわん」
 「御意」

 声の2人が中から出てくる。
 アイシアナは咄嗟に物陰に隠れた。
 流れるような銀髪が月明かりに照らされ、光を放つ。

 貴族…。

 彼らの姿が完全に見えなくなると、アイシアナは物陰から飛び出した。
 帰らなきゃ。帰ってローディーに知らせないと。

 そこで、ハタと立ち止まる。

 ローディーがこのことを知れば、きっと火災は起らない。
 それはつまり、過去を変えてしまうことになるわけで…。
 タブーを犯してしまうということ。

 それだけは絶対にダメだ!
 だけど…。

 アイシアナは迷っていた。
 帰り道でも、お布団の中でも、頭にあるのはさっきの会話のみ。それ以外頭に入ってこない。

 どうすればいいの?

 これはもう既に流れた過去。だから一度過ぎてしまったことを変えてはいけないのもわかる。
 でも…。でも…。
 その過去を目の前にして、知っていて何もしないなんて胸がもどかしくて、痛みを訴えている。
 いくら胸を掻いても、その痛みからも、もどかしさからも解放されない。
 
 とても、辛い。

 火災で何もかも燃えてしまうのだ。
 あの小麦畑も、私たちの思い出も。

 なにもかも…。

 そして、この村に住む人たちが積み上げてきたものも一緒に。


 なんだか考えていたら腹が立ってきた。
 今日はもう遅い。明日会ったら文句言ってやる。あの性格の悪い貴族に。

 最後はもうヤケ。
 アイシアナはそう決めて、目を閉じた。
 まぶたに映ったのは、あの綺麗な銀髪だった。


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