50 / 68
探し人《夢》【20】
しおりを挟む
ーー笑い声が、聞こえる。
「あははははっ。見ろ、ファーガス。村が燃えているぞ!」
「はいっ。公爵様」
「とても楽しそうですね」
やっと、見つけた。
「誰だ!」
「ただの通りすがりの村人ですわ。公爵様に、一つ言いたいことがあって参りました」
「なんだ?見てわかるように私は今とても忙しいんだ。そんなことは後にしてくれ」
「炎に怯え、逃げ惑う人々がそんなにも可笑しいですか?」
「ああ。可笑しい。あの村「バカっ」」
気づけば、公爵の頬に平手打ちをかましていた。
公爵は尻餅をついて、呆然とこちらを見ている。
「バカ…バカ…」
これまで誰かに打たれたこともないのか、それとも女に打たれたことすらなかったのか、はたまた両方なのか。私の言葉を繰り返している。
「あなたは馬鹿です!大馬鹿者です!人の不幸を笑い、ましてや自分自身がそう仕向けたなど…。それは人としてやってはいけない最低なことです。それが、たとえどんな理由があろうとも…」
そこで、目の前の公爵が、景色が消えてきていることに気づく。否、消えかけているのは自分か。
「…たとえ、どんな理由があろうとも、私はあなたを許さない」
そこで、プッツリと目の前が真っ暗になった。
「公爵様!」
ファーガスは慌てて主人の元へ駆け寄る。
「ファーガス…」
「はいっ」
「……惚れた」
「えええええええええええええええええええええええええ」
ファーガスの絶叫が、炎の中に消えていく。
**************
どんっと鈍い音が聞こえ、ベラドンナは後ろを振り返った。
しかし、其処には誰もいない。
「アイシアナ……?」
**************
「…ん。あれ?私、帰ったはずなのにどうして…ここは一体…?」
すると、いきなり目の前に火が現れた。
「何!?」
「カルロス様!」
気づけば、目の前には炎に囲まれた男性と、その外に女性がいる。
その女性は…
「私に、似てる?」
「リィナ…。早く逃げなさい、此処は危ない。きみだけでも逃げるんだ」
「そんなの嫌!私もあなたのおそばにっ」
リィナと呼ばれた女性は、炎の中の男性の胸に飛び込んだ。彼女の瞳から零れ落ちた涙が、結晶に変わる。
「ずっと、あなたと一緒に…」
リィナは満足げにカルロスの胸に寄りかかり、瞳を閉じた。
「あははははっ。見ろ、ファーガス。村が燃えているぞ!」
「はいっ。公爵様」
「とても楽しそうですね」
やっと、見つけた。
「誰だ!」
「ただの通りすがりの村人ですわ。公爵様に、一つ言いたいことがあって参りました」
「なんだ?見てわかるように私は今とても忙しいんだ。そんなことは後にしてくれ」
「炎に怯え、逃げ惑う人々がそんなにも可笑しいですか?」
「ああ。可笑しい。あの村「バカっ」」
気づけば、公爵の頬に平手打ちをかましていた。
公爵は尻餅をついて、呆然とこちらを見ている。
「バカ…バカ…」
これまで誰かに打たれたこともないのか、それとも女に打たれたことすらなかったのか、はたまた両方なのか。私の言葉を繰り返している。
「あなたは馬鹿です!大馬鹿者です!人の不幸を笑い、ましてや自分自身がそう仕向けたなど…。それは人としてやってはいけない最低なことです。それが、たとえどんな理由があろうとも…」
そこで、目の前の公爵が、景色が消えてきていることに気づく。否、消えかけているのは自分か。
「…たとえ、どんな理由があろうとも、私はあなたを許さない」
そこで、プッツリと目の前が真っ暗になった。
「公爵様!」
ファーガスは慌てて主人の元へ駆け寄る。
「ファーガス…」
「はいっ」
「……惚れた」
「えええええええええええええええええええええええええ」
ファーガスの絶叫が、炎の中に消えていく。
**************
どんっと鈍い音が聞こえ、ベラドンナは後ろを振り返った。
しかし、其処には誰もいない。
「アイシアナ……?」
**************
「…ん。あれ?私、帰ったはずなのにどうして…ここは一体…?」
すると、いきなり目の前に火が現れた。
「何!?」
「カルロス様!」
気づけば、目の前には炎に囲まれた男性と、その外に女性がいる。
その女性は…
「私に、似てる?」
「リィナ…。早く逃げなさい、此処は危ない。きみだけでも逃げるんだ」
「そんなの嫌!私もあなたのおそばにっ」
リィナと呼ばれた女性は、炎の中の男性の胸に飛び込んだ。彼女の瞳から零れ落ちた涙が、結晶に変わる。
「ずっと、あなたと一緒に…」
リィナは満足げにカルロスの胸に寄りかかり、瞳を閉じた。
88
あなたにおすすめの小説
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる
mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。
どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。
金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。
ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。
逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?
魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。
彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。
国外追放の系に処された。
そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。
新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。
しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。
夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。
ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。
そして学校を卒業したら大陸中を巡る!
そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、
鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……?
「君を愛している」
一体なにがどうなってるの!?
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
捨てられた妻は悪魔と旅立ちます。
豆狸
恋愛
いっそ……いっそこんな風に私を想う言葉を口にしないでくれたなら、はっきりとペルブラン様のほうを選んでくれたなら捨て去ることが出来るのに、全身に絡みついた鎖のような私の恋心を。
初恋にケリをつけたい
志熊みゅう
恋愛
「初恋にケリをつけたかっただけなんだ」
そう言って、夫・クライブは、初恋だという未亡人と不倫した。そして彼女はクライブの子を身ごもったという。私グレースとクライブの結婚は確かに政略結婚だった。そこに燃えるような恋や愛はなくとも、20年の信頼と情はあると信じていた。だがそれは一瞬で崩れ去った。
「分かりました。私たち離婚しましょう、クライブ」
初恋とケリをつけたい男女の話。
☆小説家になろうの日間異世界(恋愛)ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18)
☆小説家になろうの日間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18)
☆小説家になろうの週間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/22)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる