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「みぃんな差し上げますから、ね?」
しおりを挟む『… ーーー ぅあ……!?』
リリィの影からゾロリとなにかが這い出し、クソ王子に絡み付く。
リリィが可憐に微笑む。まるで悪戯が成功したおてんば娘の様に。
黒い……なにか。
魔力の高い者ならそれがどんな形なのかわかるだろう。
腕 ーーー だ。
無数の腕が、リリィの影から這い出てクソ王子を拘束していた。
『…ぎゃっ……あ、ああ!ぐぅ…っ!!』
黒い腕が撫で回した場所がジュウ…と嫌な音を立てる。ガラスで隔たれたブースにも臭いが来そうな光景。
クソ王子がリリィの首を掴んでいた手を堪らず放した。
『…ああ、皆さま。大丈夫ですよ?慌てないで?』
幼い子供を諭す様にリリィは言う。
『大丈夫、大丈夫。お約束通り、みぃんな差し上げますから、ね?』
リリィは笑う。花が綻ぶ様に、可憐に。
あまりの異様な光景に、会場は静まり返っている。スピーカーから聞こえるクソ王子の苦悶の声と、リリィの密やかな笑い声が響く。
リリィが《手》と呼ぶコレは、《無垢なる乙女の怨嗟》という禁呪の死霊術で作り上げられた怨霊の塊だ。
この死霊術が禁呪である理由は3つ。
一つ、材料が《非業の死を遂げた無垢なる乙女の魂》であること。それは新しく、かつ惨たらしく殺されれば殺されるほど良いらしい。これを狙って過去には陰惨な事件が頻発した。
二つ、使役者は乙女の魂の今際の際を追体験しなくてはならない。これは下手したら術者が狂う。精神に傷が付くと肉体までダメージを負うこともある。超危険。
そして最後の理由が、この術が禁呪である最大の理由だ。
三つ、ある一定の条件さえ満たせば、それは神々さえも捕らえる。
《……のう、怪異よ。妾は死んでから初めてこの域まで到達した。それなのに、だ。我が弟子は、まだ少女でありながら妾を超えようとしている…》
ふるりとジュリエッタが震えた。
《なんと愉快な!なんと…!なんと世界の愉快な事よ!これだから輪廻などに戻る気も起こらぬ!》
ジュリエッタの瞳が紅く、紅く。爛々と輝いた。
《ああ、見せておくれリリィ!我が愛する弟子よ!生きながら死者の女王に到達した化物よ!妾に悍しくも美しい世界を見せておくれ!》
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