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しおりを挟む馬鹿だった。糞が。こんなことなら、クリスの同意も取らずにさっさと実家に連れて行くんだった。
寝台の上で眠るクリスの汗を拭く。
明らかに、あの男を見て吐いた。あの王太子…いや、もうただの王子の専属騎士。クリスの呪いが解けたその時に、クリスを抱いていた男。よくもまあ騎士になれたものだ。第一騎士団長の次子…だったか。甘いものだ。
ああ…だからか。あの王子の側近程度なら務まるということだ。ベーレンドルフ公爵家の後ろ盾を失った第一王子は、もはや王家にとっていくらでも代わりのきく王子に成り下がった。この国の王位継承者は多い。魔王領に隣接するためだ。戦になれば、スペアはいくらあってもいい。
クリスが精力的に動き回るのをもっと抑えていればよかったのか。俺もルードヴィッヒ様も、クリスがあまりに嬉しそうだからつい……。
多分、王家はクリスが『渡界人』だと気付いた。けれど、一度呪われて問題を起こした貴族令息など、すぐには保護できない。
クリスには王家から召集がかかっている。ルードヴィッヒ様は体調不良を理由に断り続けていたが、辺境のエーヴェルシュタイン領まで第一王子自ら来た。恐らくは陛下か王妃陛下に「エーヴェルシュタイン令息を誑かしてこい」とでも言われたのだろう。餌は……件の愛人か、それとも王太子に戻してやるとでも言われたか。
「クリス…」
額に張り付く前髪を、そっと避けてやる。
荒い呼吸。熱い頰。乾いた唇。医者は心因性のものだと言った。
クリスの唇に、俺のものを重ねる。
卑怯な男だと思う。クリスの意識のない時に、こんな……。
「お前を愛している、クリス ーーー 」
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