側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや

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側妃、で御座いますか?

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「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」


15年来の婚約者、セオドア・ルネライト殿下は言った。


「側妃 ーーー で御座いますか?」


わたくしは笑顔を崩さない。そう教育されてきた。あらまあ、おかしい。殿下の背後に控えるケイレブの方が驚きすぎて固まってるわ。視界の端にチラチラ見えるピンクは何かしら。


「シャーロット、おいで」

「セディー!」


目に痛いピンクが近付いて来たと思ったら……あらまあ。この令嬢のドレスだったのね。

わたくしはセオドア様の膝の上に座った令嬢を観察する。あらあら、まあまあ。恒例の茶会の席が今回多いと思ったらこの令嬢のためだったのね?それなのに椅子に座らずにセオドア様の膝に?それにしてもこの目に痛いピンク。大きなリボン。リボン。リボン。リボンだらけのドレス。どこでお作りになったのかしら?独特な感性ね。


「恐れながら殿下ッ!!」


あら?ケイレブが復活したわ。早かったのね。ケイレブはこんなに背が高くなって筋骨隆々なのに相変わらず不測の事態に弱いのね。


「なんだい、ケイレブ?」

「な…なんだい、ではありません!!これはどういうことですか!?お戯れにも限度がございますでしょう!?エマ嬢との茶会に、こんな……っ」

「お久しぶりねケイレブ!これからよろしくね!」

「~~っ!」


あらまあ?ケイレブったら、相変わらず感情の沸点が低いわね?ああ、でも「名前を呼ぶ許可は出してない!」とか叫ぶのを我慢したのね、えらいわケイレブ。


「戯れなんかじゃないよ?私はシャーロットと結婚しようと思っている」

「やあん、セディー!うれしい!」

「殿下ッ!!!」


まあ、3人ともわたくし抜きで楽しそうね。嫉妬しそうだわ。


「つまり、そちらの令嬢を王太子妃に迎えたいから、わたくしを側妃に?」

「そうだよエマ。シャーロットは3ヶ国語どころか母国語さえもあやしくてね?とてもではないが公務は任せられない」

「そのような女を何故…っ!?」

「黙れケイレブ。私はエマと話している」

「……っ…!」


あらまあ、可哀想に。ケイレブが真っ青だわ。仕方ないわね。わたくしたち幼馴染に初めて拒絶されたのだもの。


「彼女を正妃に迎え、公務は側妃であるわたくしが担う、とそういうことですか?」

「後継を産むのも君だ。シャーロットは男爵家の娘だが、母親は春を売る平民だった。彼女の産む王子は王位につけない」

「さようでございますか」


ふう、と溜息を吐いて、冷めてしまった紅茶で喉を潤す。



あらあら、まあ……これは大変ですわ。



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