側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや

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マダムサティンはお怒りで、もう1着作ってくださるようです

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うららかな午後のこと。王都で一番の服飾デザイナーであるマダムサティンがいらっしゃいました。


「どういうことでございましょうッ」


あらあら?まあ……淑女の鏡とも名高いマダムサティン様が絹のハンカチーフを噛みながらお怒りですわ。わたくしてっきり、マダムサティンはわたくしのウェディングドレスの打ち合わせに来たと思ったのですが…。


「お嬢様のドレスは順調ですわ!むしろ1ヶ月納期が伸びたことで諦めていたアレを取り寄せてアレしようと…」


マダムサティン?アレってなんですか?


「それなのにっ!先日あの女狸が私のアトリエに土足で踏み入って、「これで我慢してやるからよこせ」と……きいいいいいいいいいぃぃぃいいいい!!!」


あら……まあ………

殿下のお相手の令嬢、ウェディングドレスをマダムサティンのお店で注文されたのね。そして暴挙に出た…と。


「まあ…大変でございましたね」

「ええ、ええ!でもお嬢様のウェディングドレスは死守致しましたわ!!あれは2年前から私がお嬢様のためだけに命を削って制作している最高傑作品!渡せません!!」

「命は削らないでくださいまし」

「ああっ!お優しいお嬢様!!ヒモ付きの売れない針子だった私のパトロンになってくださり、トップデザイナーまで育ててくださったお嬢様のためならっ!!」


そう、マダムサティンはわたくしが5つの頃からわたくしの服や髪飾りを作ってくれている。マダムサティンは異世界のゴテゴテしたドレスが苦手だったわたくしの救世主。荒れた手をした針子のサティン。草臥れて、今よりずっと老けて見えた10代の少女は針子よりデザインの才能がありました。


「それよりお嬢様!その……あの女狸の結婚式にお出になると聞きましたが?」


あら、お耳が早いわ。


「ええ、招待状が来ましたの。幼馴染の結婚ですもの。お断りする理由がございませんわ」

「………(チッ)」


あら?あらあら?マダムサティンのお顔が恐ろしいわ?


「(神殿の結婚式なんて招待状なしでも参加できると言うのに何を考えてるのあのバカ王子お嬢様もお嬢様です自分の婚約者と未来の王妃の地位と名誉と式の日取りを奪った泥棒狸を祝ってやる義理もないでしょうにしかもあの狸代金はシーグローブ公爵家に付けておけとか冗談じゃありませんよクソ殿下もどうして止めないのアトリエ中の針子が唖然としておりましたわこんちくしょう死ね良いから死ねあのクソどもには糸一本でさえ惜しいわ)」

「サティン?」

「いいええ!なんっでもございませんよお!お嬢様!!」


前世で言う般若のお顔が一瞬で優しいサティンに戻りました。イリュージョンですね!


「ではお嬢様!一着仕立てましょう!」

「えっ?」


マダムサティンはどこからか巻尺メジャーを取り出し、ギラリと目を光らせました。


「公爵様にも御了承頂いてます!さあ!さあ!」

「え…あ…あの?」

「コンセプトは『女神降臨』!これこれこれこれ!これですよォ!お嬢様の瞳と同じ色の布地が手に入ったのです!お嬢様が王太子妃になった暁に着ていただこうともうデザインも書き上げていたものですがッ……ああ、でも未婚ですもの!少し甘さを出して露出はレースでカバーいたしましょう!!今すぐレース工房に発注して……ああ、お色は!お色はペールイエロー?いいえ白金色?ガツンとぶつけてやりましょう!!」

「………そうね、では黒で」

「え……」


マダムサティンが固まった。






「レースは光沢のある黒でお願いするわ。だってエスコートはケイレブにお願いするんだもの。ね?ケイレブ」



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