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【悪役令嬢との茶会】中間報告
しおりを挟む中編の掲載後、『月明かりの恋』の作者ベリンダ・オールディス女史から抗議があった。便箋30枚以上だというのだからなかなか御立腹のようだ。読者からも様々な便りが届いているのでここで言わせていただこう。
僕のコラムは事実である。けれど『月明かりの恋』を批判するものではない。僕自身、自分用保存用布教用と3冊買ったし、E嬢に贈ったものを含めると、個人としてはかなりの冊数を購入していると自負している。物語自体はとても良くできているし、ベストセラーだというのも頷けるほど面白い。だがあの思わせぶりな後書きがE嬢を『悪役令嬢』に仕立て上げたのだとしたら、それは悪である。見ず知らずの人間から向けられる悪意ほど怖いものはない。
さてE嬢の最後の取材の日、面白いことが起こった。なんと『月明かりの恋』のヒロインのモデルとされているC嬢がE嬢邸宅を訪れていたのだ。隠れ聞いていると「取り消せ」「嘘だといえ」とC嬢が叫んでいる。屋敷全体が殺気立っていた。この殺気を受け流せるE嬢はさすがと賞賛したい。僕なら失禁する。
C嬢は僕が自己紹介をすると平手打ちを食らわせ、ひとしきり吠え、脅し、激しく悪態をつきながら守衛に引き摺られて行った。暴力と権力に屈しない。それが記者だ。本音を言うと以前取材した地下組織のゴロツキより怖かった…。令嬢の繰り出す拳じゃない。平手打ちだが。
僕の目から頬にかけてが酷く腫れ上がってしまったので、その日の取材は延期させて貰った。それどころかE嬢は僕を心配して会社まで馬車で送る手配をしてくれた。
なので今回の記事は【後編】ではなく中間報告になる。
次回の掲載だが、例の2人の結婚式、E嬢はなんと出席するらしい。ダメ元でその日に延期をお願いするとE嬢は「お父様が良いというのなら」と笑った。
記事 ーーー モーリス・オブライエン
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