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結婚式は、ちょっとした商家の娘さんなら手が出る程度の装いです
しおりを挟む殿下とお相手の令嬢の『結婚式』。その日は夜明け前から起こされて磨かれました。わたくしが夜明け前に起こされたということはメイドや侍女たちは多分徹夜ですわね?
この国では『結婚式』と『婚姻の儀』は少し違います。『結婚式』はあくまでも《人間》に「この人と結婚しました」と知らしめるものですが、『婚姻の儀』は《神々》に「この婚姻を認めてください」と願うもの。ですが時代は変わり、神の家である神殿が『結婚式』を、王家が《婚姻の儀》を行うようになったのは皮肉ですね。
つらつらと考えているうちにお風呂に浸けられ、良い匂いのするオイルで顔から爪先までマッサージ。コルセットをつけて、マダムサティンの新作ドレスを身に纏います。ちなみにわたくし、キツキツのコルセットが嫌いで布の柔らかいコルセットを開発しました。前世の知識でフワッと覚えていたのですが、マダムサティンが見事に再現してくださいました。
深い深い海の青のドレス。動きやすいマーメイドラインは体のラインが出るのであまり注文がないとマダムサティンが嘆いていました。胸元の薄い青から爪先は黒に近い紺碧。光沢のある布が動くたびにカッティングされた宝石のように輝く不思議なドレス。首筋から手の甲までを漆黒のレースが隠してくれます。あら?今日は手袋は?正式な場ではない?殿下の結婚式なのに?……???そうですの?ああでもパティ。貴女が塗ってくださったこの爪も素敵。綺麗なシェルピンクで華奢な指輪が映えますわ。
髪は派手すぎないように編み下ろし。たくさんの方がいらっしゃるでしょうから邪魔になってはいけませんしね?ゆるく編んだ髪に、マダムサティンのドレスに付いているのと同じ歪んだ真珠を数粒飾ります。招待客は花嫁より目立ってはいけませんからね。今日の装いはお値段控えめ。ドレスの布地以外は、ちょっとした商家の娘さんなら手が出る程度のおしゃれです。
「お綺麗です、お嬢様…!」
パティがうっとり目を潤ませた。嬉しいわ。でも貴女のその感動、半分はランナーズハイだろうから少し仮眠をとってくださいね?
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