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それは誠実でしょうか、それとも裏切りなのでしょうか
しおりを挟むわたくしとお父様の乗った馬車は、真っ黒な騎馬に守られながら進みます。街中は事前に交通を規制していたため他の馬車はなく、輿入れというには少し異様な行列に見物人の皆様の困惑が透けて見えます。
「あらあら、まあ……嫌だわ。もしかしてどこかに攻め入るとでも思われているのでしょうか?」
「でもこれがシーグローブの嫁入り風景だよエマ」
そうなのです。お姉様が他国にお嫁に行った時は、親戚中から援軍が送られてもっと規模がすごかったと聞きます。お姉様はシーグローブ一族のお姫様ですからね!
西の離宮に到着すると、控室にてもう一度チェック。ドレスの皺や形をマダムサティンが確認します。本当はこれはパティの役目だと思ったのですが、マダムサティンが譲らなかったそうです。
迎えにきたお父様に手を引かれて祭壇の間へ。貴族たちがずらりと並ぶ真ん中の道を通って進みます。
………あら?
なんだかざわざわしていますね?祭壇の前に立った殿下を見ます。
「………………」
「……ああ、やってくれるよ糞が」
お父様が小さく呟きました。
白い礼装の殿下。柔らかい微笑みは7か月前、わたくしに側妃になれと言った時から変わりません。今日はわたくしとの婚姻の日。けれど、その胸を飾る宝石の色は
ーーー 桃色。
そう、王太子妃の髪と瞳のお色です。
ああ、ああ、ああ……。やはりそうなのですね、殿下。わたくしを側妃に。あなたはそう仰いました。わたくしを側妃に。あなたがそう仰いました。わたくしは覚悟はしていたのです。覚悟をしたつもりだったのです。あの言葉の真意を。あなたの真意を知りながら、わたくしは知らない振りをしていたのです。
でももう、あの3人で手を繋いでいた頃には戻れないのですね。
ざわざわ、ざわざわ。神聖な神の御前であるというのに囀りと囁きが止まりません。
わたくしは笑います。笑うことしか教えられていません。
「……行きましょう、お父様」
それは誠実でしょうか、それとも裏切りなのでしょうか。
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