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元公爵令嬢と秘書
しおりを挟む私とグレンの結婚は、持参金も結納もアレコレ全部ナシ!王国が文句言ってくる前に ちょっぱやで やっちゃおう!ってことで進んでいった。
それに一番抵抗したのは なぜかチョロ兄だったが、タケノコノサト商会の秘書さんに理詰めで責め立てられ「……じゃあドレスだけでも…」と非常にブーたれて引き下がった。
「……俺がパッパたちの代わりだから立派に嫁に出したかったのに…」
この場合のパッパとは、転生前のお父さんのことだろう。
いやチョロ兄、心配しなくたってちゃんと立派な花嫁になるからね!
てか、私、結婚式にさほど夢持ってないから!
「嫁様!ドレスの材料はあたしが出します!!」
桜さんはノリノリだ。だが嫁様っていうのやめい。
アシさん、『調教済み』とか教えてくれなくて良いから!正直知りたくなかったから!
なんとかの毛皮とか蜘蛛の糸だの繭だの翅だの鱗だの…。桜さんは次々と謎空間から謎物質を引きずり出していく。
インベントリ、とかいう空間収納とかいうらしくて、すごく便利そうなので後で教えて欲しいところだ。
魔力は有り余ってるしね。
『《空間魔法:空間収納》は取得済です。今すぐ起動しますか?《Yes》《No》』
マジか。今んとこはNoだね。後からじっくり検証しよう。
「…ほう、これは素晴らしい」
やたらとキラキラした謎素材に食いついたのは秘書の小鉄さん。
えらく古めかしいお名前だと思ったら、前世は大正生まれだったよ…。平成まで株取引とかのお仕事してたんだって。凄いねえ。
前世では祖父母はすでに他界していたし、今世では下半身がだらしないクズ祖父と、光り物大好きカラス祖母しか知らないから、こういうまともなお爺ちゃんは好感度が高い。
小鉄さんは外観はすごく若いイケメンさんだけど、雰囲気お爺さんなのだ。
「ではこちらで素材をお預かりいたしまして、残りは当方にお売りいただいてよろしいですね?」
「……えっ!?ちょ…ちょちょ、待って!余ったら返してよ!注文も受けてる素材だってあるんだから」
注文受けてる素材を嫁のドレスに使っちゃダメでしょ桜さん!
「ふむ、では……(パチパチ)このくらいで」
ソロバン出したよ小鉄さん!しっぶいwww
「ダメダメ、全然!共和国ならあと5割増しで買ってくれるよ!」
「ほぅ…?帝国に卸さずに共和国ですか?」
「……………」
帝国っていうのは桜さんの所属する冒険者ギルドのある国で、共和国っていうのは帝国と今現在絶賛戦争中だ。
あれ?…ってことは………
「……便利ですよねぇ空間収納。関所もボディチェックも すり抜けて、密書も兵器も運び放題!…ま、容量は当然あるんでしょうけど」
ニタア…と小鉄さんの口角が吊り上がった。
………あれぇ?小鉄さんはまともな お爺ちゃん……だった、は、ず…………
「加えて桜様はSランク冒険者。色々な国を審査も許可証もなしで動き回れる。ふふ…そのインベントリには他になにが入ってるんでしょうねぇ?」
チッ!と桜さんは殺気をダダ漏れにさせて舌打ちした。
「……長生きしたけりゃ首突っ込むなやソロバン野郎」
「おお、怖い。ではこのくらいにしましょうかねぇ」
小鉄さんのソロバンが「終わりだ」と言いたげにジャッと鳴った。
「ギーヴ!喜んでください、桜様が余っている素材をうちに卸してくれるそうですよ!」
「はぁあ!?」
「おっ (`・∀・´) まじ?」
呼ばれたチョロ兄がヒョコヒョコやってくる。
「さーんきゅーなーチェリたーーーーん!さっすが帝国Sラン(*≧∀≦*)」
チョロ兄が桜さんをぎゅっと抱きしめて、その小さな背中をバンバン叩いた。
ちょ!チョロ兄!!桜さんは人妻だよ!!!ドントタッチ!ノータッチ!!
「やっ…!ま、まて!売るって言ってな……てか、はなれろおおおおおおお!!」
「おっと失礼(`・д´・;) 」
あまりの桜さんの混乱っぷりに駆けつけたグレンパパ ーーー ディルクさんが目を見開いた。
ディルクさんは嫉妬の滾らせる。………桜さんに。
そう、大変残念なことに。非常に残念なことに!ディルクさんの嫉妬は桜さんに向かってしまったのだ。
「………ハニー…(なんて羨ましい)…………!」
私のデビルイヤーはディルクさんの呟きを拾ってしまった。デビルイヤーのバカバカバカ!!
「まってダーリン!誤解なの!!(キラキラウルル~ン)」
「誤解もクソもあるかアアアアアア!!ズルイ!タカシ先輩!俺もギュッてして!!」
「やなこった ( ゚д゚) 、ペッ」
「ダァアアアアアアリィィィィィイイイイイインンンこんちくしょおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
この事件が引き金で、ディルクさんは冒険者に戻って素材狩りに精を出すようになる。
どうしてこうなった!?
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