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元公爵令嬢と神降ろし(4)
しおりを挟むヒグッと鳴ったのは私の喉だったのか。
青い空の一部が ーーー 裂けた。
そしてそこから、真っ黒な手のような、細長い何かがズルゥッと出てくる。
明らかに『良くないモノ』。
怖い…!
怖い、怖い、怖い、こわい、こわいこわいこわいこわいこわいこわい!!
なにこれ!?
息ができないくらい空気が重い!刺すように空気が冷たい!
大概、何があっても動じないグレンでさえ、私を抱きしめながら凍りついていた。
何もないはずの空間を引き裂き、それはやってきた。
「………いまさら、かよ…」
呆然としたようにチョロ兄が呟く。銃を撃つ手はいつのまにか止まっていた。
ずっ…ずるり、ずるり……
脚を引きずるように、それは私の前に来る。
怖い!
ああ……でも…………
あの女神のように、気持ち悪くない。
《…娘…よ……》
「……は、はい…」
《我、を…呼んだ、のは……そなた、か………》
「…はい」
《ぅむ…うむ、よか…ろう……望みを、口に、せよ……》
「……ぅ、あ、ああ…、な、な……なんなのよっ、ソレ…!!」
顔を血まみれにした女神が叫んだ。
だが異形の影は……『ほこらのかみさま』は そちらを見向きもしない。
《…望みを、言うが…よい、娘よ……》
唇が震える。
怖い。怖い。怖い。怖い…!
でも、きっと ーーー これが最善策。
私はグレンをそっと押しのけて、『ほこらのかみさま』の前に跪く。
「尊く慈悲深き御方『ほこら』さま。わたくし、ローズマリーを しもべ にお加えくださいませ」
《…うむ……ぅむ、承知…した……ローズ、マリー…よ、そなたは、いま…この時より、我が、子、我が…娘……なんびとたりと…そう、たとえ、異界の…主神、で、あろう…と……その、心を、…その、身を……魂、を……侵す、こと、能わず》
ぱあっと視界が開ける。
《我が、名に……かけ……そなたを…守護、しよう……我が娘、ローズマリー》
『ほこらのかみさま』が優しく笑った気がした。
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