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【ロゼマリア視点】
しおりを挟む何が悪かったのだろう。体から滴っていく水を見ながら私は思う。
何が悪かったのだろう。私は努力した。自分を律して『完璧』であろうとした。
私には前世の記憶がある。
化学と科学の発達した世界。遠く離れていても瞬時に言葉を交わし、ボタン一つで国が滅ぶ。そんな自由で窮屈な世界の記憶。
私は転生した赤ちゃんの時から『記憶』があった。だから私の名前と置かれた立場から、この世界は生前プレイした乙女ゲームのストーリーに良く似ていると気付いた。
まずは将来虐げる未来の異母兄。屋敷の地下に母親の死体と共に閉じ込められた兄を助け出した。そうして6歳まで一緒に過ごして、言葉巧みに母を騙して遠くの子爵家に養子に出した。
次に婚約者の王子。驕らず、我儘を言わず、将来共にこの国を守っていくのだと、一生添い遂げて支えていくのだと愛した。王子はあまり賢い方ではなかったから、懸命に勉強した。側近たちとも付かず離れずで上手くやったと思う。常に王子の後ろに控えて、目立たず、模範的な『令嬢』を目指した。
なのに…。
ぽたり。ぽたり。と血の混じった水滴が頭から滴る。
「ロゼマリア!ウルリカの恐怖と苦しみはこんなものではないぞ!?貴様が池に突き落とした!私があそこを通りかからなばウルリカは死んでいただろう!」
「ルドルフ様!良いんです…!ルドルフ様たちが助けてくれたから……でも…あ、謝ってください!それだけで良いんです!」
ガツンと空になったバケツが体にぶつけられた。
池に突き落とした?……ふふ、知らないのね。私、水が怖いのよ?体や顔を洗う水なら良いけど川や池は怖いの。前世の死因がフェリー船の転覆だからかしら?こうしてバケツの水を浴びせられたくらいで動けなくなるの。
ああ、気持ちが悪い。
踠いて暴れて沈んだ記憶と、今までの努力が浮かんでは消えていく。倒れ伏した私に婚約者たちが何か怒鳴っている。
もう…良いかな……
もう良いよね。
最後に浮かぶのはあの子の顔。
綺麗な綺麗な異母兄。ゲームのスチルなんかよりずっと可愛いあの子。
「……ルー………ス…」
「なんの騒ぎだ、これは?」
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