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レーヴァンシュタインの悲劇【現王視点】
しおりを挟む「では生存条件だ。シャルル、そのアバズレの爪を全て剥がせ」
「……え………」
征服者であるアレクシス様が言った。まるで「そこの物を取ってくれ」というような気安さで。混乱する私の拘束を黒尽くめの服を着た、顔も見えない男たちが解いていく。
「聞こえなかったか、シャルル?その女の爪だ。手足20枚。全て剥がせ。ああ、心配するな、道具は貸してやる」
「…い…いえ……アレクシス、さま……え………?」
「なんだ?使い方がわからんか?ここに指を入れて思い切りレバーを下ろす。これだけだ。……ああ、なんだこれは、新品じゃないか。錆びたやつ持ってこい」
「ええ~…アレクシス様、悪趣味ぃ」
「ルーカスはわざと失敗していたぞ?その方が早く囀るそうだ」
「ええ~…ルーカス兄さん素敵ぃ」
目の前に差し出される錆び付いた何か。赤茶色の汚れと錆が浮いた……
「アッ…ア、アレクシス様ッ!!何を仰るのですか!?クララは…クララはっ、私のっ…!!」
「だからなんだ?やれと言っている。聖女を騙った王妃クララの爪を全て剥がせ」
「アレクシス様!!!」
まさかそんな!!道具を差し出す男に、骨が軋むような力で握らせられる。
「ひっ…!」
投げ捨てたそれがガシャリと音を立てて落ちた。
「あーあー、壊れたらもっと痛いですよ?さ、しっかり持って」
レイジーンが拾って手渡す。
「やっ…やめろ!こんな…!!レイジーン!!お前…何故こんな……!!」
レイジーンは……私の………僕の、数少ない友人で………何故…どうしてっ!?
「レイジーン!お前もクララを愛していたはずだ!何故クララを…僕を裏切るんだ!?」
「え~?裏切るも何も、俺はいつだって俺の味方です。姉さんの胎から生まれたくせに、どうしようもないボンクラに育ったあなたの味方になった覚えはないですね?大体なんで俺が暗部だって知ってるのに信じちゃうかなあ?攻略対象ってやつだから?ざーんねん!俺はルーカス兄さんとロゼ姉さん以外には攻略できないよ?」
なんで……どうして………
「ほら、がんばりましょう?アレクシス様も生存条件って言ったじゃないですか?生き残れるんじゃないですか?シャルル様だけは」
「……っ…!?」
僕……だけ…?
「そ…んな、……クララ、は………?」
「そこのアバズレはまた別の条件だ」
「はあ!?な…なんでそんな話になってるのよ!?待って!騙されないでシャルル!私たちを仲違いさせるつもりなのよ!シャルル!」
「……で、できない………だって、クララは、僕の…」
声が、体が震える。けれど僕は助かるかもと思ってしまった。手の中のざらついた『爪を剥がすだけの道具』がズシリと重い。
「ま…待って!じゃあ私がシャルルの爪を剥がすわ!それでいいでしょう!?」
「………っ!?」
え……クララは…なにを言って………?
「ほう?できるのか?愛する夫だろう?」
「できるわ!だからお願い!私を殺さないで!逃して!そうしたらもうこの国から出て行くわ!お願いよ!!」
「ク…ララ……?え…なに……どうし…」
「もういいわ!なんなのよもう!バグなの!?神様にお願いしてリセットよ、リセット!!大体さあ!なによ!ぜんっぜん使えないじゃないの!なんで王様なのに暗部掌握してないのよ!良いのは顔だけ!?エッチも下手だし優柔不断だし、アッタマ悪いしケチだし、もー、さいあく!!!あんたなんかこれっぽっちも好きじゃなかったわ!ただ一番贅沢できそうだしルーカス様に近付けると思ったから攻略してあげたのに、見当違いもいいとこよ!こんなことならマシュー選んどくんだった!あー、そうよ、マシューなら平民だけど商人でお金持ちだし、こんな一揆みたいのに巻き込まれなかったわ!あんたが悪いのよ!あんたが悪い王様だからこんなことになったんでしょう!?私は関係ないわ!逃して!逃してよ!!もう嫌!バッカみたい!あんたなんかに構って損したわ!!」
「…………クララ……」
ああ、この目の前の女は誰だ?
クララは…私の……妻、で……………あれ?そうだったか?クララは…クララは、こんなこと言わない。クララは…優しくて、可愛くて、嬉しいことばかりを言ってくれて……。
手の中の『道具』がさらにズシリと重くなった気がした。
「この縄を解いて!!やるわ!私がシャルルの爪を剥がすから!早く!」
この女は誰だ?
薄汚れたウエディングドレス。乱れた髪。醜く歪んだ顔と、汚い言葉。
違う。クララじゃない。だってクララは可愛くて優しくて、気持ちいい。こんな醜くて酷くて、僕を痛め付ける女がクララなはずはない。
「早くしてよ!!ねえ!」
息ができない。心臓が苦しい。ああ…そうだ……
これは魔女だ。
魔女は、殺さないと。
すうっと目の前がクリアになる。ゆっくり、ゆっくり。魔女を逃さないように追い詰める。
「はや……ヒッ!?え……う、うそ…よね……?シャ…シャルル?どうしたの?怖い顔よ?……うそよ!本気じゃなかったの!やめて!違うわ!私、こうやって油断させて…そう!油断させてあなたと逃げるつもりだったの!違う!違うのよ!!やめて!その機械を持ってこないで!!イヤ!やめ…や、や、や……やめて!こっちに来ないで!!イヤッ!いやよ!!こんなの違う!イヤッ!触らないで!!いや!いや!いや!!いやあああああああああ!!」
バチン。
「先ずは1枚…」
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