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終わり【ワンコ視点】
しおりを挟む吾輩は犬である。名前は『ワンコ』。由緒正しき(?)ユキ様の一の眷属である。
……ん?『犬じゃない』?誰だそのような不敬を口にする愚か者はッ!吾輩は犬である!ユキ様が吾輩を犬と言ったから犬なのである!少しばかり大きな犬。そうであろう?この500年で少しばかり成長したが、体のさいずを変化させる魔法を覚えたので問題ない。
今はユキ様が撫でやすい大きさになり、伴侶の千早様に仕込まれた『おすわり』をして足元に侍っている。ユキ様は鼻歌交じりにりょうりをされている。ダンジョン生まれの犬の吾輩は、『りょうり』というものはユキ様の眷属になって知った。肉を焼いたり煮込んだり、やさいと混ぜてあじをつけたり。千早様が不在の時限定だが、ユキ様は吾輩にもりょうりを食させてくださる。ユキ様のりょうりは非常に美味いのだ。餌とは全く違う。あまかったりしょっぱかったり、生肉とは違うあじなのだ。
「でーきた!むむ…どれどれ………うん、美味しい!ワンコ!ワンコも食べる?」
「わふっ」
「んふふ…味見だよ、味見!だって千早ったらワンコにも嫉妬するんだもんねえ?千早が帰ってくる前に味見しちゃお?」
「わふわふ!」
すいはんきと呼ばれる魔道具から良い匂いがする。吾輩の餌皿にこんもりと盛られた夕焼け色のりょうり。大きめの肉が飾られている。
「今日はねえ、炊飯器で作るチキンライス!オニオンスープはワンコにはダメかもだから、代わりに牛乳あっためてあげるね!ハチミツ入れる?」
「わふわふわふっ!!」
ユキ様は牛の乳にトロリとした黄金のあまいのを入れて、混ぜる。ウオオーン!アレ絶対美味しいやつ!!
「ワンコ!マテ!マテだよ~?」
んおおおおおおお!早く!早く、ユキ様あああああ!!
「……ぷっ…くく……ワンコ、よだれすごい!ヨシ!」
うおおおおおおおおおおおおお!!
お許しが出て、吾輩は一心不乱にりょうりに貪りついた。おおお!すっぱいとあまいとしょっぱいが混ざり合ったこめ!やさい!肉は鳥のようだ。噛めばじゅわっと汁が……
「ほーう?良いモン食ってんなあ、犬っころ」
「わふっ!!!???」
「あっ、千早、おかえりー!早かったね?」
「歯応えのある奴もいねえし、そろそろみんなと合流しようか」
「そうなの?」
「ああ」
「お腹空いてるよね?今よそうね?」
「うん」
「…………」
どうするべきか。ち…千早様の視線が怖い。だがユキ様のりょうりを残すなど……!
「全部食え、犬」
ガシッと頭を掴まれた。怖い怖い怖い怖い!!
「米粒1粒も残すんじゃねえぞ?」
ヒイイイイイイイイイイイ!!!
「もー!千早!ワンコいじめちゃダメ!それ味見なんだから!味見!」
「味見にしちゃあ多いなあ?」
「多くないの!ほら!テーブル座って!あっ、手は洗った?埃っぽいなら服も着替えてね!」
千早様がチッと舌打ちして、吾輩の頭が解放される。ユキ様最強…!
ああ、尊くも美しく愛らしい吾輩の主人。この命続く限り、お傍に居させてください!!
ちきんらいすうまあああああああ!!
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