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【千早独白】※
しおりを挟む※子供に関する胸糞と残酷な表現があります。ご注意下さい。
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笑うユキの柔らかい頬を撫でる。ユキはおかしい。こんな俺を好きになってくれたり、俺の本性を薄々気付いても逃げ出さない。
俺の両手は地球にいた時から血で真っ赤だった。
俺の仮親は屑だった。ソープで働いてたらしい母親は、誰の子だかわからない俺を産むだけ産んで祖父母に預けた。まあその預けられた期間だけは、俺はまともに生きていた。あの公園で兄弟たちと犬っころみたいに転げ回って遊んだ期間だけは。
変わったのは中学に上がる前か。突然現れた『母親』が青い顔して俺を引き取りたいって言い出したらしい。『母親』を溺愛してた祖父母は「やっと心を入れ替えたんだろう」って俺を渡した。……疑うことを知らない馬鹿な爺さんと婆さんだったよ。嫌いじゃなかったけどな。
母親に手を引かれて行った場所は……まあ、なんていうか『まとも』な場所じゃなかった。俺ぐらいのガキが十数人集められてて、ガキの目から見ても異様な空気だった。
まず「殴れ」って言われた。は?って感じだろ?でもな、そう言われたんだ。隣のやつでも、誰でもいい。殴れ、って。誰でもいいから動かなくなるまで殴ったら飯を食わせてやる……って。狂ってるだろ?
……スナッフフィルム、って言うらしい。殺人を動画にして、それが金になるんだと。幼気な子供ならなお高く売れたらしい。要するに、俺は『母親』に売られたんだ。
最初にぶん殴ったのは隣のやつ。名前も知らない。名前を知ってて、友達になったやつもいたな。ある日突然ナイフ握って襲ってきたから、動かなくなるまで刺した。鶏ガラみてえな女が部屋に投げ込まれて、その頭を潰れるまで殴った。……後で気付いた。それは俺の『母親』だったよ。まあその頃には、俺はとっくに麻痺してた。悲しくもなんともなかった。
俺はなんていうか………まあ、こんな顔だ。すげえ人気があったらしい。『死の天使』とかって、イカれたキャッチコピーでさあ?でもな、イカれた俺にはイカれた客がついてた。
俺が死ぬのが見たかったらしい。見ながら奴隷にしゃぶらせるんだと。
手足縛られて、抵抗したら爺さんと婆さん殺すって、目の前に連れてきて。まあその頃には疲れ切っててさあ。爺さんたち連れて来なくたって死んでやってもよかったのに。
あとはもう……あれだよ。殴る蹴るの暴行だ。爺さんと婆さんがすげえ声張り上げて俺の名前を叫んでたのは覚えてる。ああ、やべえなあ……と思ったらこの世界に来てた。
……泣くなよ、ユキ。ああ…もう、だから言いたくなかったんだよ。…ほら、泣くなって。もう何百年も前の話だ。もうなんともねえよ。顔も覚えてねえんだ。
顔……くらい、覚えてたら、良かったなあ。
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