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勇者と拓哉と俺と由希
しおりを挟む急に始まってしまったヨギばあちゃんとワンコvs女の子たち。えっと、どうしよう…。普通に魔法の火の玉とか飛んでくるんだけど!俺、下がってた方がいいよね?
俺、窓の近くまで後退。そしたら何でか拓哉が大股で歩いて俺の前まできた。えー…何で!?
「由希、大丈夫だ!大丈夫だから、俺と一緒に行こう」
「えー…だから、なんで?」
「俺が由希のこと好きだから」
「………………は?」
「ずっとずっと好きだった。でも……地球じゃ俺たち結ばれなかっただろ?男同士だったし、家のこともあっただろ?でも、異世界なら大丈夫だ!な?……どうせここでも虐げられているんだろ?魔王に弱みでも握られて好きになったふりをしているんだろう?今、俺は勇者なんだ!女神の代行者!だから…俺が守ってやる!魔王からお前を守る!俺がお前を愛してやるよ由希!」
「……………きも……」
「……は…?」
自分に酔ったようにセールストークを繰り広げる拓哉に思わず本音が出た。
ああ、そっか。こういうやつだったよ。
『かわいそうな由希』と『それを気遣う俺』っていう、なんだかよくわからない上から目線。俺は確かに家事とか一切しない両親の家庭に生まれたけど、飢えたこともなかったし、少ないながらもちゃんとお小遣いももらってたし、学校に行くのは当たり前だって行かせてもらったし、殴られたり蹴られたりとかされなかったし、酷い言葉も言われたりしなかった。千早みたいに売られたりもしなかった。なのに拓哉はいつも俺を憐れんだ。かわいそうな俺と、それを気遣うヒーローに酔っていた。
「ねえ拓哉?俺ね、竜王国に拉致監禁されてたんだよ、5年間」
「………それ、は…知っている……」
「知ってる?知ってるんだ?俺があの変態ペド野郎に毎晩犯されたの知ってるんだ?それを助けてくれたのが『魔王』だって知ってるんだね?」
「………っ…!」
「『魔王』に…千早に助けて貰ってね。俺、今、千早の嫁なんだ。新婚だよ?超幸せ!もうね、日本にいたことも忘れてたくらい幸せなんだ」
「……由希…それは、お前が洗脳されてるだけだ!あんなバケモノと一緒にいて幸せなはずないだろ!血塗れの魔王だぞ!?狂ってるぞあれは!いつかお前も…!」
「いいよ、殺されたって」
「由希!」
「あのね拓哉、俺は『ユキ』なの。『由希』はもういないんだよ」
「…なに…いって……」
「俺をあの地獄から助けてくれたのは千早で、美味しいもの食べさせてくれたのも千早。恋をしたのも、愛してるを教えてくれたのも千早。死にかけのお母さんを助け出してくれたり、俺の村を丸ごと守ってくれたのも千早だよ?俺をこんなに幸せにしてくれたのは千早なの。千早はちょっとおかしいけど、それでも俺は千早が好きだよ?」
「騙されてるんだ由希!お前はいいように利用されてるんだよ!なんでわかんないんだ!?」
「うーん……じゃあね?拓哉は『由希』に何をしてくれたの?」
「……は…?」
「由希のこと「かわいそう、かわいそう」って言いながら、結局何してくれたの?児童相談所に連絡したこと?だってあれ、虐待じゃないって言われたでしょ?だって俺、そんなに辛くなかったもん。俺が学校帰りに買い食いとか誘われないようにしたこと?お金ないのにかわいそう…って?でもねえ?お小遣い少しはあったんだよ?コンビニでアイスくらい買えたよ?クラスの男子で「あの子可愛い」とかそう言う話題になったら絶対邪魔してたよね。だんだん俺に話しかけてくれる生徒がいなくなって……ねえ、俺を孤立させて気持ちよかった?ぼっちの俺はかわいそうだった?それでも頼らない俺は可愛くなかった?」
「…ゆ、由希……」
「拓哉は『正しいこと』が大好きだったよね?俺がここに居たいっていうのに連れ出すのが正しいことなの?」
「良いから来い!由希!!」
拓哉が大きな声を出した。俺の腕を掴 ーーー
「良い子だ、ユキ。正確だ」
どさっ、と。伸ばした拓哉の腕が床に落ちた。
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