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王都編
刀と短筒
しおりを挟む披露目式の翌日、朝から陛下のお呼び出し。なんでもエロピアスのご褒美をくれるらしい。場所はあの執務室だから非公式で。
「先日は悪かった。兄上に続いてイヴリン……王妃まで、と頭に血が登った。許せ」
「頭をお上げください。元凶はラド殿下なので」
「……うむ。だが疑った私も悪かった」
ショボーンとする陛下。あー、ラドの前だとこんな感じなのね。へいへい、ご馳走様。
「エイヴが私の愛を疑うのがいけないんですよ?」
「兄上…」
はーい、そこ!ティグレ少年の教育に悪いからやめてねぇ!!ラド!陛下の髪をいじりながら顔を近付けない!!近い!2人とも、それ兄弟の距離じゃないからな!?……あー、でもそうしたら疑問が残るなあ。もしかして。もしかしたら…
「あー、陛下?陛下は、王妃殿下も愛していらっしゃる?」
「う…うむ。私はもちろん王妃イヴリンのことも愛している。ただ、王妃への愛は家族への愛だ。戦友のようなものである」
「さ…左様でありますか……」
「……………」
ヒエッ…!ラドの笑顔が怖えええええ!
まあ、そうだよなあ。嫌いじゃなきゃ王子が2人、姫が3人もこさえねえよなあ?陛下、めっちゃ流されやすくねえ!?兄とデキてて、でも嫁も愛してるとか…。昼ドラかよ!?見たことねえけど。……やめて!やめてやめて!ドロッドロの陛下争奪戦に俺を巻き込まないで!!あと王妃様は多分絶対あんたらの間に挟まろうなんて思っちゃいねぇから!!めっちゃニコニコしてたから!
ごほん、と陛下が誤魔化すように咳払いをする。
「なので、本日は詫びとして宝物庫から何か下賜しようと思う」
「ファッ???」
宝物庫ォ!!??
「ああ、大丈夫であるぞ?聖剣や宝冠などの、本当に国宝級のものは置いていない、国王の私財の宝物庫である。なので換金してよし、プレンダーガストの屋敷に飾ってよし。そういうものだ」
「ありがたく頂戴いたします」
うわあ!気遣いすっばらしい!!これこれ!こういうのだよ!理想の上司!見習えラド!!
「……なにか?」
「いいええ!なんでもございませんっ」
ラドの先導で執務室を出て、長い廊下を歩いて階段を登り、歩いて、降りて、また上がる。ふむ…なるほど。迷路だな。本当にどこに部屋があるかわからない作りになってる。歩いて、降りて、登って、歩いて、ずっとずっと降りていく。やがて窓のないプライベートエリアに辿り着く。薄暗い廊下に、同じような扉が並ぶ中、ラドが芸術品のような大きな鍵を懐から取り出して扉の一つを開錠した。
こぢんまりとしたその部屋は、前世の博物館のように『宝物』が美しく展示してあった。
「…ぉお……」
「この中から一つ……いや、二つほど持っていくが良い。私の勘違いと、兄の横暴のぶんだ」
「エイヴ?私はリオに優しく、誠実に接していますよ?」
「「「…………………」」」
俺と陛下、そしてティグレが「嘘だろ…」と信じられないものを見る目でラドを見る。
「…では失礼して」
「うむ、存分に吟味せよ」
ティアラや首飾り、金ピカ鎧に雪白姫に出てきそうな姿見。妖精が閉じ込められた水晶、生花が這う大弓。
「………え…」
煌びやかなその中で、異質なそれ。真っ黒な曲刀。柄、鍔、鞘、全てが光も通さぬ漆黒の、ヒノモトの刀。吸い寄せられるように手に取り、抜く。刀身も漆黒。波紋も見えぬほどの『黒』。
「おお、それは小麦畑に埋まっていたという、農夫からの献上品だ。なんの付与術式も付いておらず、なんの魔法効果もないただの剣だが、火に焚べても燃えず、溶けず、どのような剛力を持ってしても曲がらず傷付かぬ、ただの切れ味の良い剣よ」
「こ…これで!!」
思わず漆黒の刀を抱き込む。
ふおおおお!見つけた!ヒノモトの刀!!鍛治師探そうと思ったけどこれでいい!これがいい!!んおおお!手に馴染む!!
「おや?即決して良いのですか?もっと色々ありますよ?」
「……前世で使っていた剣と同じ形です。これがいい」
「ふむ、ではそれと同じ場所にあったと献上されたのはこれですね」
「!?」
短筒!?いやでも火挟みも火皿も無い。火蓋は何処だ!?弾丸も火薬も付いてない…か。とんだ欠陥品じゃねえか!?
渡された『銃に似たもの』はとんだ骨董品だ。形だけは似せてあるが、正常に動くための機構がない。これは……
ああ、でも手に馴染む。黒い銃身が『使え』と 責っ 付いてくる。まさかこの刀と短筒は揃なのか…。
「これで」
「うむ、そうか」
あー、これさあ、呪われてたりしねえよなあ?
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漆黒の日本刀と漆黒の銃は『異世界大量転生』から『7人の魔王』で共通して出てくる『漆黒』シリーズ
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