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偽神編
最終話
しおりを挟む目が覚めたらティグレの顔があった。疲れて窶れたティグレの顔。お…いっちょまえに無精髭なんか生やしやがって。生意気な。
「リ…リオ…!?」
「……ん…………は、よ…」
おお…声がガラガラだ。まるで何日も寝てたような……。さては口開けて寝てたか。
「リオ!リオ…!!いっ…生き、てた!生きてた!リオ…!!」
「お…?お?お、おう……???」
縋り付いてギャン泣きするティグレ曰く、俺は10日ほど眠り続けていたらしい。新しい左腕が馴染むまで、とかなんとか。そういや俺の腕、偽神に齧られたってぇのに生えてきてら。すげえな異世界。
俺の腕を生やしたのはアンティエーヌじゃないらしい。
見舞いに来てくれたアンティエーヌに礼を言おうとしたら、すっげえ不本意そうな顔で「新しい神様が癒してくださいました」とかなんとか…。その辺は何故か緘口令が敷かれているらしく、推測できる材料といえば王妃様がめっちゃ嬉しそうな件。……あー、うん。あれか。イケメンなんだな、その神様とやらは。
白湯に近い重湯から始まって粥、柔らかいパンと野菜のスープ。今日はティグレお手製のハムサンドになった。……ふむ、そろそろか…?
「あのなティグレ」「あのねリオ」
「「あ……」」
うーむ、同時か。さすがだティグレ。何が流石なのかわからんが。
「あ…え、と……リ、リオからどうぞ?」
「いや、ティグレからいいぞ?」
「ええ…」
ティグレは困ったようにへにょりと眉尻を下げた。
「えー……えー、…うん……その、ね…?ぉ……おっ、俺と…!」
お?
「俺と結婚してください!!!」
「………………は?」
えっ???あれ?そういや卒業したてぇのにティグレまだ北の大地に行ってねえな。
「だ…第二夫人でも愛人でもいい!俺はやっぱりリオと一緒にいたい!」
「ええぇ……」
「ごめん…ごめん、リオ……おれ、やっぱりあきらめられなかっ……」
ポロリとティグレの目から涙が溢れる。
「待て……待て待て待て待て待て!?どうしてそうなる!?ってか愛人って結婚してねえじゃん!?」
「…ぅう~……だって………」
「だってもクソもねえ。お前が俺と結婚してくれるんなら他の嫁も愛人もいらんだろ」
「………………はぁ?」
はぁ?じゃねえんだよ可愛いなチクショウ。
「明日……いや、まだ役所開いてるな?よし、届け出しに行くぞ!んですぐに新婚旅行だ!」
「ええええええ……???」
だってこういうのはさっさとやんねえと、だろ?メアリーばあちゃんは絶対衣装を揃えて小っ恥ずかしい結婚式やろうとするだろうし、ラドは絶対渋ってなんだかんだ理由をつけて俺を拘束しようとするだろう。アンティエーヌや王妃様はついてくるって言いかねないし、騎士たち全員も付いてきそうだ。
それはダメだ。おれは!ティグレと二人で旅行したいんだよ!!
「海を見に行こう!途中でプレンダーガストに寄って結婚指輪を見繕って、ケレスで食料を買い込んでいこう。本で見た永久凍土の大雪原にも行こう。古代火龍の棲む火山に砂のバラが咲く大砂漠。七色に変化する妖精の湖に夜空にかかる星の大河。自由都市の大市場とか、帝国の夜景も見たい!あと、ヴィンセントから魔王国に遊びに来いって言われてるんだ。さあ、忙しくなるぞ?」
「リ…リオ……」
「ん?ほら、準備しろ。まあ服なんか行く先々で買っても良いけどな」
「君って人は………」
「あぁ?なんだよ?」
「……いや、いいよ。こういうのは惚れた方が負けなんだよ…」
何が言いてえんだよ!行くったら行くんだよ!!
「そうだね。リオも不眠不休で働き詰めだったし、ちょっとくらい我儘を通しても良いよね?モンサロ王国を救っちゃったんだし?」
「そーいうこと!」
ティグレが笑う。それだけで世界が輝いて見える。すげえな、これが脳味噌お花畑ってやつか!だが悪くない。
ラスボスに生まれた俺だが、何故か勇者になって、今日、結婚する。うん、悪くない。これが幸せってやつか。
ティグレとキスをする。
偽神はもういない。けれどこれからも都合よく平和な毎日が続くとは限らない。むしろここからが人生の本番だろう。神通しをした俺の寿命があと何年あるかはわからない。だから毎日、この瞬間を。大切に。正直に生きていこう。
リオ・プレンダーガストはラスボスであった。
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