【7人の魔王2】してもない婚約を破棄された聖女の兄なのだが、なんだかんだで魔王の嫁になっていた。

とうや

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「慰謝料は頂けるのですか?」

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「シャーロット・ハルフォード。私はお前との婚約を解消する」


??????


建国記念の夜会会場で。俺の護衛する主人がおかしなことを言い出した。ツッコミどころは多々ある。なんで今この場なんだとか、きちんと根回ししてるのかとか、婚約者のエスコートなしに会場入りしたと思ったらその腕にくっつけてる女はなんだとか。

しかも何故事前に側近の俺に言っておかないんだとか。


言っておかないからこんなことになるんだ馬鹿殿下……。


唯一の救いは妹が語っていたように高らかに宣言しなかったこと。ホンットそれだけ……。

俺は頭を抱える。溜息をかなかったのを褒めて欲しい。妹は妹でガン無視してケーキ食ってるし。……本気で気付いてないのかも知れんが。


「シャーロット・ハルフォード!!」

「うわっ!?」


大声で呼ばれて流石に妹は気付いた。淑女としてあるまじき驚き方だ。そのフォークに刺していた苺がポロッと落ちそうになるが、無駄にいい運動神経で軽業士のようにフォークの腹に着地させる。


「あっぶない!メイスター地方の苺が落ちるところだったわ。落ちても食べるけど!」


食うな。

妹は真っ赤な苺をパクリと口に入れてジェームズ殿下の方に目をやった。

ジェームズ・メンドゥサ王太子殿下。10年前に俺と妹を貴族の養子にしてくれた主人だ。俺は騎士に、妹は何を間違ってか教会認定の聖女になった。

妹はこうべを垂れ最上位の礼をとる。そう、まだ発言の許可が出ていない。正しい判断だ。殿下の舌打ちが聞こえた。あー、不敬罪とかそういうのも期待してたのか。


「シャーロット・ハルフォード。お前は聖女としての実績も無く、家も男爵家だ」

「………」

「よって私はお前との婚約を破棄し、スタンスフィールド公爵令嬢と婚約する」

「…………………」


よし、正しい。視線を上げる許可も発言の許可も出ていない。心の中では「王太子はクソ」とか罵っているんだろうが、礼儀作法は完璧だ。


「言いたいことはあるか」

「発言をお許しください」

「許す」


妹は顔を上げ、ふわりと微笑んだ。無垢な微笑みと春の妖精のような姿だが……。


?」

「あっ…ああ、そうだ」

「慰謝料は頂けるのですか?」

「……っ!がめつい女だ!やはり平民根性が抜けておらぬか」

「お金は大事ですよ?が被った金銭的損失と心理的な負担への補填、これから起こりうる事態への補償、それから……」

「ええいうるさい!金など払ってやる!ただし、だ!この性悪女を押し付けてしまった補償金として慰謝料は好きなだけくれてやろう!!貴様は身分剥奪の上処刑だ!」


……うん、やっぱりな。俺も巻き添え…。っていうか、。めんどくせえなあもう。


「そっかあ…うふっ、良かったあ!ね?ウリエラ?」

「………ええ、本当に」


妹の友達が笑った。背筋が凍るような微笑み。女って怖えな!


「……ってことは、俺は用無しか」


俺はマントの留め金を毟り取って投げ捨てた。入隊式に陛下から頂くブローチだ。「汝はメンドゥサの騎士である」…と。


「お兄ちゃん!」


満面の笑みで妹が駆け寄ってくる。クッソこの疫病神め。妹でなけりゃ斬って捨ててるわ。

まあ今回の限っては俺が原因だろう。王太子であるジェームズ殿下にあれこれ言いすぎて鬱陶しがられてた自覚はある。でもさあ、俺だって無能の主人には仕えたくないし、頭ン中お花畑の殿下や側近どもに冷水ぶっかけたりしたよ?あ、比喩だぞ?物理じゃない。何度か本気で物理でやりたかったけど。あのお人好しの両陛下にもされてたしさあ?

抜刀した同僚たちが取り囲む。用意のいいこった。


「リアム!貴様もずっと私を騙していたのだな!!」


うん???


「あの嵐の日……私を助けたのはお前じゃなかった…!!」


ああ…うん、その話か。ずっとそう言ってるじゃねえか。「俺とアンタを助けたのは」……


「私を救ってくれたのはエレオノーラだった…!!」

「はあ?」


あー……こいつ馬鹿だ馬鹿だって思ってたけど、正真正銘馬鹿だった…。

ハア…と溜息をく。それも気に入らなかったんだろう。


「お前のッ!!そういう小馬鹿にした態度が気に入らないんだ!!!」

「小馬鹿になんかしてねえ、馬鹿にしてんだ馬鹿殿下」

「なんだと!?」

「馬鹿だろ!あのさあ、あの嵐の中、13歳のガキが13歳にしちゃあお前をどうやって岸まで連れて泳ぐんだよ?俺だって助けようと船から飛び込んだはいいが一緒に死にかけたよ。助けてくれたのは翡翠の瞳の精霊様だっつってんだろ。何回言わせんだよアッタマ悪ぃのかよ?」

「……っ!」


そう…。10年前の嵐の海で。俺は殿下共々死にかけた。それを助けてくれたあの人のことは今でも覚えている。艶やかな黒い髪と翡翠の瞳をした、震えのくるような美貌の精霊様だった。


「それにさあ?スタンスフィールド公爵令嬢はうちの妹より年下だろう?当時9歳以下のガキンチョがどうやって助けられるんだよ?『贄の儀式』の間は魔法も魔術も一切効かないんだぜ?」


「ええい、うるさい!お前はっ…!!お前は黙って言うことを聞いていれば良いんだ!!首を刎ねられたくなければ…っ!」


主人の白刃が輝く。誰かの悲鳴が背後でした。












「ねえ?要らないならくれないかな?」



















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