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モブと首飾り
しおりを挟む『わたくしという婚約者がありながら、何故そのような平民をお傍に置くのです!?』
そうルミナの目の前で、ルクレツィアが王太子に涙ながらに詰め寄る場面がある。その時だ。
ルクレツィアの首飾り型のアミュレットが砕け ーーー 数日後にヴァッサロ将軍の訃報が届けられるのだ。
ぐらりと目の前が揺れる。あの……緑の宝石の首飾り。
「オズ!?」
吐き気を覚えた俺をテオが支える。
「だい…じょ……ぶ…」
そう。大丈夫。大丈夫だ。
ルクレツィアはもう我儘いっぱいの令嬢ではないし、学園にも通っていない。それどころか王太子との接点はまるでない。
テオも原作のように戦場から戦場を飛び回るような事にはなっていない。火種になりそうなものを潰すよう、予言として丁寧に助言していったからだ。
大丈夫。大丈夫だ。だって ーーー
だって、隣国が攻めてくる前に、俺が1人残らず殺そうと思ってるから。
要は見せしめだ。
開戦の火蓋が切られたその時に、その場にいた敵兵は全員殺す。そりゃ多少は討ち漏らすだろうが、1人も逃さず捕虜にもせず掃討してくれと頼むつもりだ。
テオドール・ヴァッサロ将軍の妻は、敵には容赦をしない大量殺人鬼だと知らしめるために。
「………オズ兄様、まさか、この首飾り…?」
「…ううん、大丈夫。大丈夫だよ?綺麗な……アミュレットだね」
俺は箱に入ったままの首飾りを、ルクレツィアの手ごと包み込む。
「この首飾りが、俺の大事なルクレツィアを、あらゆる苦難から救ってくれますように…」
目蓋を閉じて祈る。
この首飾りが、砕けることがありませんように。
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