絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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ep277 アクロバット下呂温泉

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 夕暮れ時のデイライト上空。

 地平線の彼方で太陽が、本日の役目を終えようとしている。

 眼下では人々が忙しなく動いている。早々に店じまいをする商人、運良く宝物を得た冒険者パーティ、這々の体で勝利を掴んだ傭兵、暗躍する悪人たち。

 その誰をも、太陽は今日一日等しく照らしていた。

「うひょおおおおおおおっ!!!」

 ──ゴオオオォーーーッ!

 僕はスリル満点のアクロバット飛行に歓声を上げる。

「楽しいいいぃっ! ひょああぁっ!」

「ふふ、そう言えばケイとこんな風に飛んだことはなかったな! たまにはいいものだ!」

 プっさんもノリノリでさっきからアクロバット飛行を楽しんでいる。

 僕がそう注文したのだ。「非日常を味わえる、とびきり刺激的な空の旅を僕とウィンティに味あわせてほしい」と。

「いくぞぉっ!」

 ──バオオオォォォッ!!!

 プテュエラが翼をひるがえす。
 次の瞬間、僕たちの体が一気に押し上げられた。
 視界の下でデイライトの街並みが豆粒みたいに遠ざかっていく!

「しっかり掴まっていろ!!」

「うおおおおおおおおっ!!!」

 急上昇からの反転、
 風を切り裂いて垂直落下!!

 世界が逆さまになる。
 空と地面がひっくり返って、胃が浮く。
 風圧で髪が千切れそうだ!

「まだまだっ!」

「いぇぇぇぇぃっ!」

 プテュエラは翼を半ば畳み、
 縦に落ちながら螺旋を描く──スパイラルダイブ!
 空気が爆ぜる。
 視界の端で建物の屋根が連続して通り過ぎ、
 心臓が口から飛び出しそうだ。

 地面すれすれで翼を広げ、風を一気に掴んで反転。
 翼の外縁が屋根瓦をかすめて、
 後ろでパリンと陶器が砕けた!
 野良猫がびっくりして飛び起きる。
 
 それでもプテュエラの完璧なる魔力制御のおかげで、地上に被害がでることはないのがすごい。

 街の上をステルス爆撃機が縦横無尽に飛び回っているのに、大した音も無ければ風も無い。とんでもないよ。

「ひょおおおおっ!!!」

 旋回、急上昇、また旋回。
 プテュエラの動きはまるで風そのもの。
 ひと息ごとに空気の流れをつかみ、
 音速すれすれで空を縫う。

 彼女は真紅の夕空を蹴り、翼を畳んで一気にロール。
 僕はその胸の中で逆さまになりながら、
 遠心力で視界が霞むのを感じた。

 あたまくらくらすりゅ~。

「どうだ、ケイ? この空は最高だろう?」

「い、命が……飛んでいきそう……だけど最高ぉぉぉっ!!!」

 頑強スキル先輩によって、一流パイロットよりも強い肉体を得た僕にとっては、だいふ刺激強めのジェットコースターくらいの感覚だ。

 ちなみに重力による身体への負荷はあまり感じない。これもプっさんの魔法のおかげか。シンプルに視界がぐるぐる回って酔う感じ。僕は全然平気だけど。

「ふふふ。羽慣らしはここまでだ。さぁ、クリソプレーズ王国までかっ飛ばすぞ!」

 最後にプテュエラは太陽の残光を背にして翼を開いて、溜めを作る。

 空気が渦巻き、尋常ではないくらい圧縮されていく。

 ──バヂッ! バチバチッ!

 灼光した風が荷電粒子を帯び、プラズマ化した。
 
「はぁっ!」

 ──ゴバッ!

 周囲に異常な音が鳴り響く。

(ソニックブームだ!)

 音を置き去りにする急加速によって、僕たちはいとも容易くに空気の壁を突破した。

 ──ッキィィィィィンッ!

「さぁ! このまま風の極致を楽しもうではないか!」 

「いぇーーーい! ウィンティたのしんでる!?」

 僕は腕の中でウィンティに声を掛ける。なんといっても彼女の提案だからね。楽しんでいないわけがない。

 これは文句無しに非日常でしょ。

「おーい」

 ぷにぷにと柔らかいほっぺをつつくとパチっと目を覚ました。至近距離で見ると、まつげが長い。肌に一点の曇りもシミもない。シンプルに顔が強い。

「えっ、あっ」

「イェーイ、楽しんでる?」

 そして眼下の大地を一瞥し、自分の状況を再び理解すると──


「ひぃィィィィィィィィィッ!!? ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッ!!!?」

 ウィンティは白目をむき、髪を逆立て、口をぱくぱくさせながら絶叫。
 綺麗な顔が歪んでとんでもないことになっている。
 音速の風圧に煽られて声がちぎれる。
 ちなみにリュートは落としたら危ないので僕の鞄にしまってある。

「うわぁぁぁぁっ!? 地面、地面がッ、空がっ近っ──!!!」

 垂直降下のたびに、悲鳴と笑いと泣き声が入り混じる。
 プテュエラが螺旋を描くたび、ウィンティの頭がぐるぐると回転して、眼が完全にバグった。

「……ォッ、オッ、ウォッ、ぅおおおオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ッッッ!」

 そして清らかな吟遊詩人が決して出してはいけない野太いデスボイスが、その喉から発せられる。

 すっご、プロ並みのフォールス・コード・スクリームだ。

「ふはははははっ! 良い歓声だ!」

 ノリノリのプテュエラはフワッと一瞬、宙で静止したあと、急降下と急上昇を繰り返す。

「ンィャァァアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッッッ!!!」

 ウィンティは口と鼻からダラダラと体液を流して、非常にきれいな高音のフライスクリーム。

 すぐにメロデスバンドで活躍できると思う。

 鼻水とヨダレが後方に流星のようにキラキラ散っていくのがやたらに綺麗だわ。

 そして──ぷつん。

「ア゙……っ」

 気絶。

「むっ」

 プテュエラがちょっと嫌な顔をした。どうしたんだ?

「ほらウィンティ、起きなきゃ!」

 ずぼぉっ!

 彼女の鼻水と涙でぐっちゃぐちゃになってもなお美しい、ボーイッシュ妖精顔の、その可愛らしい鼻に指を二本入れる。

「……ふがっ!?」

「ほら、ウィンティ。君の望んでいた非日常だよ。存分に味わってくれ」

「ふがっ、ふががががっ!」

 ウィンティは再び、空と重力の饗宴に身を置くことになった。絶叫につぐ絶叫と美人崩壊ブサ顔と涙よだれのダム決壊で、ひどいもんだ。突っ込んだ指先が、こもった鼻息によって暖められて、ぬくみを感じる。

「ヴォぉぉぉぉぉぉオ゙オ゙オ゙オ゙ッ!?」

 覚醒すると同時に低音デスボイス。

「ヴォゴロロロロォゴロォォォっ!」

「喉に下水道敷いてる?」

 今度は排水口が詰まったかのような汚いガテラルボイス。ちょっとさすがに喉が心配になってきたけど、ウィンティはまだまだ元気いっぱいに叫んでいる。
 
 ──以降、約数十秒間隔で絶叫リサイタル繰り返された。

「ひっ……あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁあああっ!!!」

「ぴぎゃああああっっ!!?」

「ゔぉわぉぉぉぁぁぁア゙ア゙ア゙ア゙ッ!」

 彼女の声が澄み渡った空に響く。

 今更だけど声量がすごい。

 こうして密着していると、彼女の腹式呼吸が伝わってくる。まるで全身が喉になったかのような一体感だ。

「あ、あぁっ……う……ふぇ」

 すると目が虚ろになったウィンティが、妙に大人しくなったあとぎゅっとしがみついてきた。

「ふぇ、ふぇぇぇぇん……!」

 次の瞬間、彼女は僕の胸に顔を押しつけて、ぐずぐず泣き出した。
 今までとは違う、かなり子供っぽい泣き方だ。
 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、掠れた声で訴える。

「もうやだぁ……おそらこわい……おちる……おうちかえる……ふぇぇぇん……!」

「あっ、幼児退行しちゃった」

 さっきまで翠吟のウィンティだった彼女が、まるで迷子の子どものように嗚咽を漏らしている。

「ぎゅってして、ぎゅってして、こわいよぉ……っ」

「お、おお……よしよし」

 超然として余裕綽々だったボーイッシュ妖精詩人が、その尊厳を崩壊させて無防備な幼女に還っている。めちゃくちゃ可愛いな。

(ギャップ萌え著しいぞ)

 ちなみに、さっきからずっと両足と片手でしがみつかれているので、慎ましやかっぱいがムニムニと当たってなかなか興奮する。ついでにお尻ももにゅもにゅ揉んでみるが全く気づく気配はない。お尻は意外と鍛えられていて筋肉質だが、女性らしい丸みを帯びていて、なかなかえっちだ。

 ネチョ。

 え、なんかねちょってしたんだけど。

「うわっクサっ!」

「おい、ケイ。そいつ漏らしてるぞ」

「まじかよ! どっちを!?」

「どっちもだ」

 それは想定外!

「もれちゃうもっちゃう!」

「ちょ、我慢してくれ!」

「うーちゃん、ううっ、がまんできないっ」

 うーちゃんて。昔はそう呼ばれてたのか。

「うーちゃん! がまんがまん!」

「ううっ……あっ、ふぅ……」

 ンボップ!
 ンボボボンップ!
 
 ぬわぁぁぁぁぁっ! ウィンティの下水道が下水道の音出してる!

「おええええぅ、クサックサッ! プテュエラ換気頼む!」

「すまん、外とは空気を遮断する必要があるからそれはできん」

「ヴォエッ! 構わないから換気してくれっ! ヴォォォエッ!」

「いや、今急にケイたちを包んでいる風の繭に穴を開けたら大変なことになる。空気すら凍る極寒の風が刃となってお前たちを襲うだろう。あと、うまく言えんが多分内側から爆発する」

 圧力的なサムシングですか!?

 くおおおっ!

 そ、そうだっ。口呼吸すればいいんだ!

「すーはーすーはー」

 ……匂いはなんとかなったけど、UNCHIスメルが口から入ってるかと思うと嫌な気持ちだ。でもそんなの実際に入るよりかは全然マシだ。背に腹は代えられない。

「あ、あ……」

「ウィンティ? どした?」

 すると幼女うーちゃんは、あどけなくなった顔を僕の顔に近づけて、頬やら耳やらを「はむはむ」と甘噛みし始めた。

(ああ、幼少期ってなんか口でコミュニケーションとるんだっけ?)

 口唇期とかいったか? でもあれって一歳くらいまでだったはず。単にウィンティの癖かもな。

「守って……こわい……ん……んむんむ」

 むほっ!

 ウィンティはそのまま僕の口に顔を近づけると、唇を甘噛みし始めた。

(これはもうちゅっちゅですよ!?)

 僕もウィンティの唇を堪能する。ひたすらにぷにぷにのプルプルで、唾液すら甘く感じる。さらに舌を絡ませると、片腕で必死にしがみついてきた。甘い香りの奥から、ほのかに酸っぱい匂いもする。甘酸っぱい女の香りと味……。

(ちょっと待て、けっこう強めの酸っぱさだぞ。なんだこれ、歯周病?)

「あむ……あむ……うぷ……」

 もっもっもっ、とウィンティの身体が、猫がアレするようにびくつき始める。

 察した時には遅かった。

「う、うべぼろらろろおろおろおろおろぼろろろろろっ」

「おぎょああああああああっ!」

「……ケイ、さすがにその性癖にはついていけないぞ」

 口呼吸するために開けていた僕のお口に濃厚な下呂温泉が源泉掛け流しされた。ジタバタともがく僕にプテュエラ機長は呆れていた。
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