絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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姉さん

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 さあて、お昼ご飯だー。ちょうどおなかも空き頃だね。

 田植えってのはいいな。ほどよく汗かけるし、ずぼずぼあったかい泥に何度も挿入するのは気持ちがいい。またやってみよう。

「ほら、シルビア。そんな顔してはいけませんよ」

「……きっ」

 広間に行く前に、なんかこちらを睨むシルビアと呆れた様子のカリンが僕を呼び止めた。あ、そうだ。僕シルビアと微妙な空気だったんだよね。でもさっきコスポ渡してくれたし、もうそんな怒ってないのかな。そうだと信じたい。というより、今の僕は絶賛賢者タイムなので、とても穏やかなマインドだ。今なら何を言われても受け流せると思う。

「意識の無い女奴隷にあんなことするなんて……この変態……っ」

「はい。私は意識のない女奴隷に田植えをする変態農家です」

「シルビア! もう、違うでしょう?」

「だ、だって……」

 カリンがぴしゃりと力なく言い訳するシルビアをたしなめる。

「ケイ様、シルビアが先ほどのことを謝りたいと申しております」

「ふむ。先ほどとは、どのことでしょうか?」

「シルビアがルーナと新しい奴隷のニステルとの一戦に対する、貴方様の態度を糾弾したことでございます。あと、敬語はどうぞおやめください」

「わかった。シルビア、そうなのかい?」

「うぅ、そうだよ。私、考えも無しに物を言っちゃった。私の価値観ばかり押し付けて、ケイのこと、何も考えてなかった。ごめんなさい」

 そう言って彼女は、ペコリと頭を下げた。部屋着っぽいゆるゆるのシャツから、ささやかな谷間がチラリと見える。さらにその奥にある二つの桃色丘が。あっ、あと少し。あと少し。ああっ、顔を上げてしまった。

「……私ね、ケイって何でもできる人間だと思ってたの。ちょっと変だけど、すごい強いしもっと強い亜人様を従えて、商業ギルドを手なづけて、伝説のポーションの材料まで簡単に取ってきてさ。スラムの人たちも救って、大勢に感謝されてるのなんて、吟遊詩人の英雄みたいだなった思った」

 シルビアの頭の中では僕そんな英雄みたいになってたの? なんかもっとこう、彼女とは気安い関係だと思っていたんだけどな。

「でも、あの時、ケイはなんだかすごく遠く感じたの。ルーナが傷付いてるのにどこか、他人事で……。大怪我にも動じずポーションの効果も試していて、すごく冷静だなと思ったけど、それよりもずっと怖かった。なんだかケイが、知らないところに行ってしまう、みたいでさ……」

 ポツポツと話すシルビアの声は少し湿っていて、瞳も心なしか潤んでいるよう見えた。その様子を見て、僕は理解した。

 不安なんだ。

 すとん、と彼女の気持ちが僕の中に落ちてきてすっぽりと収まった。

 そして自然に言葉が紡がれていく。

「ねえ、シルビア。僕はね英雄でも何でもない。ただの社会不適合者だよ。僕はね、周りの人たちに生かされてるんだ。君たちが優しいおかげで、なんとか生きてこられている。力があるのなんてたまたまさ。本当に、ただ僕のところにお鉢が回ってきただけ。
 僕はシルビアと仲良くやっていきたい。気安い関係でいたいんだ。だからその、馬鹿なことも言うし、遠慮ない態度をするけど、そうだね……、恥ずかしいけど君に甘えているんだろうね。
 シルビア、また僕がおかしな素振りをみせたら遠慮なく叱ってくれ。カリンは僕をいつも全肯定してくれて、心に寄り添ってくれる。でも、君みたいに僕を遠慮なくぶっ叩いてくれる存在はいないんだ」

 自分でもびっくりするくらい言葉がスラスラと出てきた。僕、シルビアをこんな風に思ってたんだな。ぜんぜん、自覚してなかったよ。

「……ケイは、私に甘えてるの?」

「ま、まあそういう側面もあるのかな、と」

「ふ、ふーん。そっか、なるほどそっか」

 ふ、ふーん。とシルビアは腕を組んで向こうを向いてそそくさと何処かに行ってしまった。

 あれ、なんか中途半端な感じで終わっちゃったな。

「さてケイ様。お昼ご飯にしましょう」

「ええっと、シルビア大丈夫かな?」

「問題ありませんよ。ケイ様からは見えていなかったでしょうが、こっちから見た彼女はニマニマ笑っていましたから」

 カリンは苦笑して僕をお昼の席に案内してくれた。んだよ、なんか恥ずいぜ。

 んでその後みんなとお昼を食べてたら、いつの間にかシルビアが横にやってきて、並んでご飯を食べた。なんかいつもより距離が近くて、時折こっちを伺ってきてた。胸元もゆるゆる、古着っぽいズボンも隙間が多い。な、なんか上目遣いがいつもよりキュートで意識してまう……。

「うっ」

 バステンがうめいて前かがみになっていた。すまん、頼もしき奴隷長よ。ちょっとフェロモン強すぎるよねここ。彼にはあとで娼館費を支給しておこう。


 お昼が終わって、じゃあそろそろ出かけるかってなった時にニステルが広間にやってきた。堂々とした佇まいで、いつもの傲岸不遜な感じだ。あ、でも僕を見て少し顔を紅くしたぞ。

「……なんでしょうか?」

 昼食を終えたばかりのルーナの前に立ち、見下ろす形になる。すると横でまだ食べていたマイアが慌てて立ち上がり、ずいっと彼女をかばう形で割って入った。

「な、なんでふか。ルーナちゃんふぉ、いじめたら、ふるふぃまふぇんよ!」

 毅然とした態度だけどせめてご飯を飲み込んでからにしてくれ。

「……ルーナ・クレース、と言ったね」

「ええ、そうです」

 周囲に緊張が走る。すわ、一触即発か。そんな空気が漂う。プテュエラはのんきに羽繕いしていた。

「……今朝のことはあたしが悪かった! すまない。この通りだ」

 警戒するマイアを尻目にニステルはその場であぐらをかいて、拳をついて頭を下げる。めちゃくちゃ堂に入った任侠っぽい謝り方だ。

「あんたの言う通り、あたしは心構えができていなかった。どうか、許してほしい」

「構いません」

 ルーナはニステルの肩に手を置き、顔を上げるように促す。

「貴方が来た時、私は内心喜びました。なんて強い獣人かと。これならばより一層、御主人様をお守りすることができると思いました」

 そんなふうに思ってたのか。表情が読みにくいから分からなかったよ。僕もまだまだだな。

「貴方の立ち振舞い、仕草から絶対の自信と誇りを感じ取ることができました。しかし、同時に貴方を『納得』させなければ私たちを心から仲間と思ってくれない、とも感じました」

「だから、あんなふうに身体を張ったっていうのかい?」

「ええ。貴方に理解してもらうにはあれが一番早そうでしたから」

 ルーナがそう言うと、ニステルはぐっと唇を噛んで俯いた。マイアはよくわからないようで、ハテナマークを浮かべている。

「……よく理解したよ。今後は主殿に仕え、あたしの全力を持って忠誠を尽くす」

「ええ。貴方がいれば大抵の敵は取るに足らないでしょう。歓迎します。共に御主人様を支えましょう」

 にこり、と微かにルーナが笑う。驚いた、あんまり笑わないイメージなんだけどな。それだけニステルには期待しているのだろう。ちなみに僕は不意を突かれてティンピクしてしまった。あふぅ。

「ああ。よろしく頼むよ。ルーナ姉さん」

「……姉さん?」

「あんたは肝の座った尊敬すべき獣人だ。あんたほど気合が入ってるやつはみたことない。あたしよりよっぽど『仕え方』ってのをわかってる。だから『姉さん』と呼ぶことにした」

「……それは、御主人様のご許可がないと」

「許可する」

 困ったようにこっちを見るルーナが面白かったので、速攻で許可を出した。ルーナは最高だからね。彼女が尊敬されるのは僕も嬉しい。

「ということだ。よろしく頼むよ、姉さん」

「……承知しました」

「わぁ! ルーナちゃん、よかったですね! なんかよくわからないけど、強そうな妹ができましたよ!」

 マイアは難しいことはよくわからないようで、とりあえず雰囲気だけではしゃいでいるようだ。まあ、そこがマイアのいいところだ。

「くっくっく、妹ね。確かにその通りだ」

「ルーナちゃんの妹ならわたしの妹みたいなものですね! よろしくね、ニステルちゃん!」

「ぶふぉっ」

 巻き込まれないように気配を消していたバステンが噴き出した。ぷるぷると肩を震わせている。

「……バステン、何がおかしいんだい?」

「い、いや。何でもない、姐さん」

 ニステルがゴゴゴと不可視のオーラを発生させてバステンを問い詰める。バステン……気持ちは分かる。ニステルちゃんは違和感すごいよな。今度ベッドの中で連呼してみよう。

「こらっ、バステンくんをいじめたらだめだよ!」

「はっ。分かったよ、マイア」

「マイア姉さんでしょ!」

「いやー、あんたを姉さんと呼ぶ気にはなれないね」

「なんで!」

 すげなく断られ頬を膨らませるマイアのおかげで、空気が和んだ。

 マイアはほんとムードメーカーというか、潤滑油的な役割を果たしていてくれて感謝してるよ。まさにミルクローションだ。リッカリンデンの雰囲気を明るくするのにすごく役に立ってくれている。家事も進んでやるし、文句言わないし、明るくて素直だ。裏表のない性格だから、接していて気疲れしない。

 さて、それじゃあぼちぼち商業ギルドに向かうとするか。でも、何か忘れている気がする……うーん。
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