人生をループしているという婚約者の第三王子が全力で謝ってくるのですが、私にはなんのことだかさっぱりわかりません!!

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第3話 王子様がいらっしゃいました!

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 ーーなぜお母様にそんな疑惑をかけられなければならないのか……。
 ーーそもそもお母様は、娘の私を一体何だと思っているのか……。

 仮にも公爵令嬢である私。いくら私の普段の素行が悪くとも、一国の王子を湖に突き落とすほど落ちぶれてはいない!!
 
 しかし、お母様は力任せに扉を叩く。私の力が強いのは実はお母様譲り。このままでは扉が破壊されかねない!

「シルヴィ、シルヴィっ! すぐに出てきなさい。……大丈夫よっ! お母様は怒っているわけではないんですからねっ!
ちゃんと出てきてお話を聞かせてちょうだいっ!
ちょっとシルヴィっ! このままお部屋に閉じこもるつもりなら、お母様は本当の本当に怒ってしまいますよっ! シルヴィっ!!」

 ーーもう十分怒っていらっしゃいますけどね!?


 だが、私の初動対応が功を奏したのと、アンナが協力してくれたおかげで、私はお母様の執拗な追撃をなんとかやり過ごすことができていた。

 扉の向こうのお母様からの情報によると、あれから湖で溺れてしまったというアルフレッドは、高熱に浮かされて寝込んでしまっているという。
 お母様は、婚約者としてすぐにでもアルフレッドの見舞いに行くように何度も私を説得しにきたが、私は体調が悪いから無理の一点張りで通した。

 だが、不思議なことにお母様は私が一方的に宣言した「婚約破棄」のことについては何も知らないようだった。
 プライドの高いアルフレッドのこと、まさか私から婚約破棄されたなどとは認めたくないため、周りに黙っているように画策したのかもしれない……。



 そして、私が自室に立てこもって二日目の朝ーー。


「お嬢様っ、お嬢様っ、大変ですっ!」

 扉を開ける秘密の合言葉も忘れて、アンナが扉の向こうで叫んだ。


「一体何よ? 誰がなんと言おうと、私はここから出るつもりはありませんからね!」

 私は扉に身体をもたせかけ、腕組みをする。

「それが……、なんと、いらっしゃっているのです」

「誰が?」

 そう尋ねた私だったが、アンナの答えはすでに想像がついていた。


「王子様が……っ、アルフレッド殿下が応接間でお待ちになっていらっしゃいますっ!」

「体調不良でお会いできないと伝えて!」

 すかさず私は答える。

 だが、私はすっかり忘れていた。
 相手はあの、アルフレッドだということを!

「もちろんそのようにお伝えしました。ですが……、それならお会いできるまで何時間でも、何日でもこのまま待ち続けるとおっしゃいまして!」

 ーー持久戦に持ち込む気か!? 
 なんてはた迷惑な王子! こちらの都合など一切考慮するつもりはないらしい。
 王族としてのマナーを、湖に沈んだときに、一緒に水の底に忘れてきてしまったのだろうか?

「わかったわ。行くわ」

 どのみちいつかは直接対峙して決着をつけなければならないのだ。

 都合のいいことに相手は病み上がり。この際うまいこと丸め込んで、婚約破棄を認めさせてしまおう!!

 とりあえずこちらもふせっていたということを信じさせるために、髪をいい感じに乱して、いかにも適当な感じのドレスを身につけると、私はアンナとともに応接間に向かった。

「シルヴィ!!」

 アルフレッドは私を見ると、ぱっとその顔を輝かせた。


 ーーこんなアルフレッドの表情を見るの、何年ぶりかしら?

 思わず感傷にふけりそうになる自分を戒めて、私はふらりとよろめいてみせた。

 もちろん打ち合わせ済みのアンナが、私を支えてくれる予定だった。

 が……、


「大丈夫? シルヴィ」

 瞬間移動してきたのではないかと疑う動きで、私はアルフレッドにしっかりと抱きとめられていた。

「アルフレッド……、さま……」

 超絶美形のどアップに、私の脈拍は測定不能なほどに跳ね上がる。

 空色の瞳が私を真っ直ぐに見つめている。
 しかしアルフレッドの美しい唇が紡ぎ出した言葉は、私を混乱させるのに十分なものだった。


「シルヴィ! 私が悪かった。すべて思い出したんだ!
このままだと君は、命を落とすことになるんだ!
だから……、すぐにでも結婚して、即座に私と子供を作ろう!!」

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