【絶対幼女伝説】 〜『主人公は魔王なのに』を添えて〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)

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幼女+紳士さん

24話 〜一期一会の好敵手〜①

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「とう! ついたー!!」
「……急に元気になったな」
 町を出て数十mの所。ラブラドリーテを囲む広大な平原に、オルランドとステラは来ていた。
 ステラは町を出るまではとても静かに抱っこされていたが、平原に出た瞬間オルランドの腕から飛び降りて駆け回り始めたのだ。オルランドは便利な乗りモノといったところであろう。
「えっと、プルプルをさがすんでしょ?」
 と言いつつ、ステラがオルランドに手を出した。
「む? ああ、そうだが。何だその手は……」
「スキャンは、ステラがしてあげる! おるにゃんは、たたかうんでしょ?」
「……ああ! 確かに、敵を相手にしつつスキャンは難しいであろうからな。では、頼めるか?」
 オルランドがプルプルを動けないようにして、その間にステラがスキャンするという布陣だ。
 オルランドの“自分がいる限りステラには戦わせない”という考えを守りつつ、ステラを暇にもさせない完璧な作戦。問題はプルプルを倒せるかだけであった。
「うん、いいよー」
 オルランドは魔力測定装置をステラに渡して、ベルトに差していた杖を取り出した。
「よし、気合いを入れるとするか……!」
 オルランドは杖を何度か素振りして、軽く手になじませる。
「あ! おるにゃん、プルプルがきたよ!」
 ステラの指さした方向から、緑色でゼリーの様な姿のモンスターが迫って来ていた。サイズはニンゲンの頭くらいで、大きさは正常だ。
「ステラ、一旦離れていろ。……む、いない?」
「こっちー!」
 オルランドに言われるまでも無く、ステラは既に遠くの茂みに避難していた。
「相変わらず素早いな……。よし、行くぞ!」
 オルランドはステラが安全な所に居るのを確認して、プルプルに向けて両手で杖を構える。
『プルルルゥ!』
 プルプルもオルランドに気付きこちらに迫って来た。
「掛かってくるがいい!」
『ルプー!』
 プルプルはオルランドに向けて突撃した。
「ぐあっ!?」
 プルプルの突撃は予想以上に重く、ガードした杖ごと後ろに後退させられてしまう。
『プルル!』
 仰け反って隙を晒したオルランドに、プルプルは体当たりで更なる追撃を加える。
「ぐぅ!」
 背後から攻撃を食らったオルランドは、バランスを崩し、膝を突いてしまう。
『プルルルゥ!』
 これ好機と、プルプルは自身を車輪のように回転させて、オルランドを轢いた。
「がはっ!?」
 直撃を受けたオルランドは大きく吹き飛び、地面に激突してしまった。
「おるにゃーん! おてつだいするー?」
 心配したステラが、遠くからオルランドを呼びかけた。
「くっ……。必要ない! この程度倒せなくては、我が名が廃る!」
 オルランドは泥まみれになりながらも立ち上がった。
「そか、ばんがれー!」
 それを聞いたステラは声援を送った。
「ここで勝たなければ、ここで踏ん張らなければ、何も成し遂げられぬ……」
 オルランドは呼吸を整えて、また杖を構えた。
『ルププ!』
 プルプルがまたも突撃してくる。
「くっ、やはり重い!」
 プルプルの突撃を杖で受け、オルランドは後ずさりしてしまう。
「だが……」
 オルランドは杖を傾けプルプルをいなし、
「今回も、同じと思うな!」
 隙だらけのプルプルに杖を叩きつけた。
『プルッ?!』
 水が弾けるような音が響く。
 いまの攻撃でプルプルにダメージを与える事ができたようだ。しかし、
「なっ!?」
 プルプルの体は弾力が強く、その反発でオルランドも弾かれてしまった。
「……そう簡単にはいかぬか」
 杖を地面に立て、体勢が崩れるのを防ぐ。
『プルル!』
 プルプルはオルランドのことを警戒しているようだ。
「ふんっ!」
 オルランドは地面を蹴り、プルプルまでの距離を詰め、
「はぁっ!」
 杖を絞る様に持って打ち付ける。
『ルップ!』「くっ!」
 咄嗟にプルプルも体当たりをし、両者とも跳ね返って痛み分けに終わる。
 だが、それだけに終わらない。
「はっ!」
 オルランドは跳ね返された勢いを活かして地面に手を突き、バック転の要領でプルプルを蹴り上げる。
 そして、体勢を低くして杖を横に振りプルプルを吹き飛ばした。
『プルル!』
 しかし、プルプルも引き下がらない。
 吹き飛ばされた勢いを、自身を回転させる事で緩和し、オルランドが追撃したところを狙って突撃。
 オルランドは回避を試みるが肩にぶつかり体勢を崩す。そして、プルプルは空中で回転して位置を調整、オルランドの胴目掛けて体当たり。
 オルランドは杖を使って跳躍し、プルプルを飛び越えてそれを避けた。
「ふっ」『プル』
 攻撃が届くかどうかの絶妙な距離をとり、お互いに睨みあう。
「……はぁあっ!」『……ルププゥッ!』
 初動は同時であった。オルランドは杖を振り、プルプルは回転しつつ突撃した。
「くっ!」『ルルッ!』
 互いの攻撃がぶつかり合い、互いに弾かれる。それに怯むことなくすぐさま攻撃を返し、また弾かれた。
 戦いは激しさを増していき、攻撃が当たれば相手が吹き飛び、攻撃が避けられればカウンターを浴び、打って打ち合って打たれて、吹き飛ばし吹き飛ばされ、避けて避けられ、防ぎ防がれる。
 互角の戦いがそこにあった。
 成長すれば相手を倒せる?
 否。片方が成長すれば次の瞬間に相手は成長し、また片方が強くなれば相手は強くなる。そして、お互い、相手の存在こそが己を最も成長させてくれたのだ。
「侮っていたが、なかなかやるではないか……!」
 オルランドは汗を迸らせる。もう、どれ程時間がたったであろうか?
『プル、プルル……!』
 プルプルは回転して自身に付いた泥を払う。
 互いに通じ合っていた。しかし、確実に戦いは終わりに近づいていた。
 そう、ふたりの体力はもう、限界だったのだ。
 故に、
「次の攻撃で……!」
『プルル、ルプル……!』
 オルランドは杖を握り直し、息を整える。プルプルは数度ジャンプし、自身の体の動きを確認した。
「ごくり……。ど、どうなるの?」
 ステラは思わず固唾を飲んでしまった。そして、
 ────────静かに終わりが始まった。
「……!」『……!』
 同時に踏み込み、距離を詰め、短いながらも募らせた相手への思いを込め、自身にとって最高の攻撃を、
「はぁああっ!!」『プルルゥウッ!!』
 相手にぶつけたのだった。

 ────────そして、決着は着いた。
 どちらも生き延びるなどという優しい終わりではなかったが、断言しよう、互いに後悔はなかった。
 そして、相手を越え、ひとつ漢を上げたのは、
「おつかれさま、おるにゃん!」
 オルランドだった。
「……プルプルはどうなったのだ?」
 オルランドは仰向けになったまま、静かにステラに訊いた。
「もう、うごいてないよ」
「そうか。このような出会いでなければ、私達は友になれたやもしれぬな……。いや、よそう」
 この戦い無くして互いを判りあう事はなかった。この戦い以外の出会いはなかった。
 そして、この戦いを無くすという事は、互いの気持ちを、誇りをにしてしまうという事であったから。
「これで、良かったのだ……」
 オルランドは空に手を伸ばし、ゆっくりと拳を握った。


「おるにゃん、このプルプルはね、えっと~、“ふつう”だって!」
 ステラが魔力測定装置の液晶を、頑張って読み取りオルランドに教えた。
「そ、そうか。……強い固体だと思ったのだがな」
 オルランドはボロボロで、節々の痛みに耐えながら身体を起こす。
「おもしろかった~!」
 ステラは楽しそうに笑う。
「そうか、それは何よりであるな……」
 苦笑いを浮かべながらオルランドは立ち上がる。
「またあんなみたい!」
 ステラの言葉に一切悪意は無かった。
「私はもう少し楽がしたいがな……。む、これは?」
 ステラの言葉は戦ったオルランド本ニンにとってはプレッシャーであった。
「どうしたの?」
 オルランドが何かを拾ったのを見てステラが寄って来る。
「ああ、あのプルプルが落としたものらしい。見てみろ、水晶のような結晶だ」
 オルランドはプルプルが落とした結晶をステラに見せてあげた。
「あ、きれー!」
「そうだな。記念だ、貰っておくとしよう」
 オルランドはそのプルプルの結晶をポケットにしまった。
「あ、そろそろごはん、たべよっか!」
 言葉を言い終えるが早いか、ステラのお腹が丁度鳴る。
「もう、そのような時間なのか?」
「うん。えっとね、いちじ……、よんじゅっぷん!」
 と言いつつ、ステラはパルトネルを見せた。
「パルトさん!?」
 思ってもみないタイミングの携帯万能機パルトネル登場に、オルランドは間抜けな声を出してしまった。
「あははっ。へんなこえー!」
 ステラはオルランドの声が面白かったらしく、ケラケラと笑ってしまう。
「ほら、笑い過ぎだ!」
 オルランドは眉間にシワを寄せて怒るも、ステラにとっては威厳や威圧感などもう微塵も感じなかった。
「は~い。……うふふっ」
 返事をしながらステラは思い出し笑いをする。
「……ステラ、パルトさんを持っていたのだな?」
 怒っても無駄だと判断したオルランドは、ため息をついてステラに訊いた。
「もってるよ。なんで?」
 ステラが首をかしげつつ言う。
「ああ、まさか持っているとは思っていなかっただけだ。そうだ、トニーの連絡先を登録してはどうだ? 何かあった時にわざわざ屋敷に戻らずとも、その場で連絡がとれるであろう?」
「うん」
「では夜にでも、トニーが屋敷に帰ってきたら聞いてみよう。後、一応あの屋敷の連絡先と、牧場の連絡先も登録してみるか? ああ、私のパルトさんが届いたらそれも登録しておかないとな」
「そだね」
「そうだ、ステラは魔機の扱いは上手いのか?」
 オルランドは杖をベルトに差しつつ訊いた。
「わかんない! あ、でもね、『パルトつかうのじょうずだね』って、いわれたことあるよ!」
 ステラは嬉しそうに言った。
「ほう! それは良い。では、私のパルトさんが届いたら、使い方を教えてくれるか? 大人に訊いても皆何かしら知識を得ている前提で話す故、全く付いていけぬのだ……」
 オルランドは少し困った顔をしてステラにお願いした。
「うん、いいよ。あのね、でもね、ステラもわかんないとこあったら、ごめんね?」
「ああ、構わぬ。その時は一緒に考えるとしよう」
「うん!」
「では、ひとまず昼食を食べに町に戻るか」
「うん! なにたべる?」
「そうだな。午後も身体を動かす故、力の付くものがいいな」
 オルランドは顎に手を当てつつ答える。
「じゃあ、おにく?」
「そうだな。牛にしよう」
「おみせ? それかおうち?」
「今はくたびれているからな、店で済ませよう。それに、勝手に屋敷のキッチンを使っていいか判らぬからな」
「そか。なにがあるかなー?」
「ふふっ。入りたい店があれば好きに言ってくれ」
「なんで? びんぼうじゃないの?」
「国から持ってきた金を両替できた故、今は少し金持ちなのだ……!」
 オルランドはニヤリと笑った。
「あ! また、わるいかおしてるー!」
 そうしてオルランドとステラは、昼食をとる為に一旦町に帰ったのだった。
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