【絶対幼女伝説】 〜『主人公は魔王なのに』を添えて〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)

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幼女+紳士さん

23話 〜おるにゃん〜②

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「トニーはわるいヒトじゃないでしょ?」
「どうでしょう? 僕なりに良いドワーフであるように努めてはいますが……」
 トニーは髭をなでながら困った表情になる。
「そか! じゃあ、がんばらないとね」
 ステラは口元を汚しつつ、チキンとマッシュポテトを平らげた。
「ふぃ~。おいしかったー」
「そうですね。僕ももっと頑張らないと! あ、そろそろケーキの準備をしましょうか?」
 トニーはふたりの皿が空になったのを確認して、デザートはどうするか訊く。
「ああ、そうだな。私は良いが。ステラ、どうする?」
 オルランドはとてもケーキを楽しみにしていたが、できるだけ顔に出さず、あくまで冷静を装った。
「う~ん。おなかいっぱい……」
 しかし、ステラは悲しそうな顔で言った。
「……ふむ。スナックミート一袋とチョコレートを食べたからな……。仕方ないな、明日にするか? ああ、それともこれから星を見に行く故、その後にでも食べるか?」
 オルランドは一瞬、表情に悲しみが出てしまいそうになるも寸前の所で堪え、今日食べられそうな選択肢を用意した。
「あしたにする~」
「そうか……」
「……オルランド殿だけ今日食べますか?」
 悲しそうな顔を抑えられていないオルランドを見て、トニーがいたたまれず提案した。
「いや、私も明日にする。食事は皆でする方が美味なのだ」
 オルランドの決心は固かった。
「それで良いなら、わざわざ止めませんが……」
 トニーは引き下がった。
「じゃあ、おほしさま、みにいこっか!」
 ステラはオルランドの顔に写る悲しみの影なぞ露知らず、な顔で言う。
「そうだな。気分転換にもなるでろう……。トニーも行くか?」
「いえ、僕は後かたづけもありますし、遠慮しておきます」
「そうか。先程、テレビとやらで『今日はよく星が見える』と言っていたが、良いのか?」
「ええ。ふたりの部屋も用意しないといけませんし、放っておいた仕事も少し目を通したいんです」
「わかった。では、私達だけで行ってくるとしよう」
 ゼティフォールは口元をナプキンで拭って立ち上がった。
「き~ら~き~ら~♪」
 ゴキゲンに歌いながらステラも椅子から降りる。
「おっと、ステラ。口をきれいにしなさい」
 椅子から降りた瞬間ダッシュしようとしたステラを捕まえて、ゼティフォールは綺麗なナプキンで口を拭った。
「うにゃあ! もう! ひとりでもきれいにできるのに~」
 ステラは怒って、オルランドの持っているナプキンを奪おうとする。
「いや、完全に忘れていたであろう! おっと、洒落にならぬから暴れるな、待て、すぐに終わる故、おとなしくしてくれ!」
「はなしーてー! もう、わがままだったら、『め!』するよ!」
 ステラがじたばたしてゼティフォールに抵抗する。
「『め!』とは、あの三つ目オオカミを吹き飛ばしたあの『め!』か? あのようなもの食らったら真に洒落で済まぬわ! ……良し、終わった!」
 ステラが暴れるせいで本来の数倍以上の時間を費やしたが、なんとかステラの口をきれいにできた。
 しかし抵抗はしたものの、三つ目オオカミを一撃で倒せる実力から鑑みるに、ステラも本気で嫌がっているわけでは無いのであろう。もし本気なら今頃オルランドは、“ボロ雑巾”よろしくみすぼらしく地面をなめている事だろうから。
「はい、ご馳走様だ」
 そう言ってオルランドはステラを離してあげた。
「あ、ごちそうさま。トニー」
 オルランドが言って思い出したのか、ステラはトニーの前に来て『ごちそうさま』を伝えた。
「はい。お粗末様でした」
 トニーも嬉しそうに応えた。


「街灯はありますが、足元は暗くなっているのでお気をつけて」
 とりあえずトニーから懐中ライトを借りて、オルランドとステラは屋敷の玄関前まで来ていた。
「はーい、いってきまーす!」
 ステラは元気よく返事をした。
「気遣い感謝する。では、行ってきます」
 そしてオルランドとステラは、星を見るためラブラドリーテの高台に向かった。

 高台を目指して幾らか歩いた時、ステラは何かを思い出したようにオルランドの方を向いた。
「ねえ、おるりゃ、おるなん……。おるにゃんどさ! ふんー、いいにくい!」
 ステラはオルランドに話しかけようとしたが、名前が上手く言えず苦戦する。
「オルランドだ」
 オルランドはステラに手本を聞かせる。
「う~ん。おるらんじょ! あれ? おるにゃ、おぶらん! ……ねえ、
 ステラは再度トライしてみたが、それでも無理だったので、諦めてあだ名でいくことにしたようだ。
「何だ、そのとは」
 当然、耳慣れない呼び方をされたオルランドはステラに訊いた。
 そもそも元がゼティフォールで、オルランドという名前すら先程考えた名前で馴染んでいないというのに、ものの10分やそこらであだ名をつけられてしまえば、いったい誰を呼んでいるのか判らなくなってしまう。
「いいでしょ、さんみたいで。おるにゃんのかお、こわいもん」
 確かにステラの言う通り、普段からオルランドはの称号に恥じぬ顔つきであった。
「……他に候補はないのか? もう少し格好の良い名前は」
 オルランドはステラに訊く。
「えー! かわいいのにぃ……。じゃあ……う~ん。やっぱり、おるにゃん!」
 ステラは暫く考えたが、特に候補は思いつかず結局元のに戻って来てしまったようだ。
「……まあ、呼びやすいのならいいか」
 オルランドは肩をすくめた。
「あ、あそこ!?」
 ステラは少し先に高台を見つけ、オルランドに確認する。
「ふむ、そのようだな」
 オルランドは懐中ライトで地図を照らして確認した。
 ちなみにこの懐中ライトは、電気式ではなく魔石が埋め込まれたで、正式にはである。
「そか、じゃあ。きょうそう!」
 ステラは言うが早いか、もの凄い速さで走り出した。
「今度は負けぬぞ!」
 オルランドは予想していたのか既に地図は懐に収め、ステラが走り出した瞬間負けじと足を運んだ。

「かちー!」
「くっ! 全く距離を縮められなかったぞ。どうなっているのだ……?」
 が、先に高台をに到着したのはステラで、オルランドは惜しくも二位であった。つまりである。
「あ、みてみて。おほしさま、きれー!」
 ステラは空を見上げながらオルランドの服の裾を引っ張った。
「む? ほう……! これは素晴らしい!」
 空を覆い尽くしそうな程の星の輝き。夜の優しさと星達の煌めきが織りなす幻想的なこの光景は、まさに圧巻としか言いようが無かった。
 オルランド達以外にも見物ニンがいくらか居て、家族、友、恋ビト、他に色々な関係のモノが見受けられるが、皆同様にこの夜空に心を奪われていた。
「きてよかったね」
「ああ。期待を大きくしていた故、裏切られるのではないかと思ったが、何の事はない。予想を大きく越えてきよった」
 オルランドの顔に自然と笑みがこぼれる。
「ねえ、おるにゃん」
 ステラが呼びかける。
「何だ?」
 オルランドが応える。
「なんでステラといっしょにいてくれるの?」
「どういう事だ?」
「スナックミートかってくれたし、チョコもかってくれたし、ちちうえをさがしてるっていったら、あぶなくないのかーっていってくれたり、ぼくじょうもいったし、おくちもふいてくれたよ?」
 ステラは思い出しつつ、指を折ってゆっくり話した。
「ああ、私が森で火を起こせず困っている時助けてくれただろう。それに、三つ目オオカミに襲われた時も、その後この町に案内までしてくれた。それがなければ今頃私は死んでいたかもしれない。冗談抜きでな。……故に、感謝しているのだ」
 オルランドはベンチに座って星を眺めながら言う。
「ふーん。でも、こまってたら、たすけるのはふつうだよ?」
 ステラも横に座って言う。
「そうか、ステラは私よりなのかもしれないな。後、そうだな、一緒にいる理由は……。あるヒトに似ていると思ったのもあるな」
「だあれ?」
 ステラはオルランドに目線を向けて訊いた。
「ステラと同じように金色の翼と赤い髪を持った女性がいてな、そのヒトも私を助けてくれたのだ。とは言っても、髪のクセは君程強くないがな」
 少し冗談ぽくオルランドは言った。
「うふふっ。ほかには?」
 ステラが笑う。
「他? その女性の事か?」
「そう」
「そうだな……。翼は大きかったな。それと、瞳は金色であった。あとは、とても優しそうなヒトであったな。因みにだが、私が探しているのはそのヒトだ」
「そのヒト、ににてるかも! ははうえもね、とってもやさいいいの!」
 ステラは嬉しそうに言った。
「ステラは、母上が好きなのだな」
「うん、だいすき! いつか、おるにゃんにもあわせてあげる」
「そうか、ありがとう。……ステラは、母上に会えなくて寂しくないのか?」
「……だいじょうぶ。ちちうえをみつけて、おうちにかえるまで、ステラはなかないってきめたもん!」
 ステラは小さいなりに気丈に振舞おうとする。
「そうか。まあ、何だ……。私に何かできる事があれば何でも言ってくれ」
「うん……。あ、ながれぼし!」
 ステラは空に向かって指を向けた。
「お、また流れたな!」
「うん! そだ、おねがいごとしよっか!」
 一瞬前まで悲しそうな顔だったにも係わらず、ステラはもう楽しそうにしている。
「そうだな。何にする?」
「えっとね、ははうえと、ちちうえと、ステラと~。あ、おるにゃんと、みんながたのしくなれますよーに!」
 ステラは目を瞑って言う。
「ほう、願い事に私も入れてくれるのか! では、私はステラの願いを叶えられるよう願うとしよう」
 オルランドは空を見上げて言った。
「え、なんで?! なんで、ステラのをおねがいするの?」
 驚いた様子でステラはオルランドに訊いた。
「む? ふたりで願えば二倍だからな。その辺の願いより叶いやすくなるはずであろう?」
 オルランドはニヤリと笑う。
「あ、わるいかおしてる!」
「ふふっ。それは元々だ」
 そして、オルランドとステラはもう暫く星を眺めていた。
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