【絶対幼女伝説】 〜『主人公は魔王なのに』を添えて〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)

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幼女+紳士さん

32話 ~ステラの休日『すこし、ドキドキしちゃった!』~

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 ステラとマーナは、オルランドが初めにいた森とは別の、ラブラドリーテから西側に進んだ所にある大きな森に来ていた。
「プルけっしょう、ちょうだい!」
 ステラはしゃがんで、目の前にいるプルプルに手を出す。
「ルルップ!」
 しかし、プルプルはプル結晶を渡す代わりに、ステラの手を軽く弾いた。という意思表示だ。
 プル結晶とは、プルプルが魔力を必要量ため込み、他のモンスターに変化する前段階でのみ取れる素材で、しかもプルプルにとってはとなる場所なのだ。
 そう考えると、渡せないのも無理はない。
「そか……。じゃあ、べつのモンスターにしよ」
「ひぇ~!! ステラちゃん、たすけてー!」
 少し離れた所で野生の薬草採取をしていたマーナが、切迫した様子で助けを求めた。
「マーナちゃん!?」
 ステラは声に気付きそちらを向くと、3匹のプルプルが今にも襲い掛かりそうな様子でマーナを取り囲んでいた。
「プルル!」
 プルプルはステラに対しては比較的であったのにも係わらず、マーナに対してはなぜかだ。
「ふぅ……。こわいよぉ……」
「プルルルゥ!!」
 その時、プルプルがマーナに対して突撃した。
「こないで!」
 マーナが手を前に出して押し返そうとするも、プルプルの突撃の威力を一切弱めることもできず、そのまま大きく吹き飛ばされた。
「きゃー!」
 そのまま吹き飛ばされれば木に激突して大怪我は避けられないといった所で、ステラは地面を蹴って全速力で飛んだ。
「マーナちゃん!」
 間一髪、ステラはマーナを空中でキャッチして、無事救出する事ができた。
「ステラちゃ~ん!」
 今にも泣きだしそうな顔で、マーナがステラにしがみつく。
 プルプルは確かに子どもでも倒せると言われる程弱い種族だ。しかし、それは基礎の武術や魔法を習得した10歳前後の子どもであって、4歳児が倒せる相手ではない。
「もうだいじょうぶだよ!」
 ステラは地面に着地しつつ回復薬を取り出し、降ろしてすぐにマーナの手の怪我を治してあげた。
「ありがとう」
「うん。ちょっとまっててね!」
 ステラは敵対心剥き出しのプルプルの所に向かう。
「プルップ!」
「プ、ルル……」「プル~……」
 すると、マーナを攻撃してきたプルプル以外はしおらしくなり、その場から去って行った。
「マーナちゃんいじめたの、きみ?」
 ステラはもう怒り心頭で、ムッとしながら距離を詰めていく。
「プルルップ!」
 またもやプルプルの突撃!
 ────ペシッ。
「プル~プ────────!」
 ────キラン!
 だったのだが、ステラは片手で軽く払いのけ、プルプルはどこか彼方へ飛んで行ってしまった。
「あ、とんでっちゃった! おせっきょう、しようとおもったのに……」
 ステラは何でマーナを攻撃したのか訊き、これはダメな事だとお説教しようとしたみたいだが、プルプルはもう既に地平線の彼方であった。
「す、すごい! ステラちゃん、すごいつよいんだね!」
 マーナは目を輝かせて、ステラの所に駆け寄ってきた。
「ん? でも、プルプルだよ?」
 ステラにとってはとっても弱いモンスターだ。
「つよいよ! だって、わたしのパパもプルプルたおしたの、8さいのときだって、いってたもん! ママは12さいだし!」
「へぇ! そうなんだ。えっへん!」
 ステラは褒められて得意げになった。
「わ~! ステラちゃんって、おとなくらいつよいんだね! これならおそとにいても、おこられないかも!」
 マーナは嬉しくなって、泣きそうになっていたことも忘れて笑顔になる。
「でも、ないしょにするんでしょ?」
「うん!」
 それはそれは、とっても元気の良い返事であった。

 あれからもう少し進んだ所で、マーナが小さくため息をついた。
「う~ん。やくそう、みつからないね……」
「ねー。モンスターもいないから、ちょうだいできないもん」
 そう、プルプルを追い払って以来、かれこれ1時間森の中を探索しているがモンスターも、薬草も一向に見つからない。
「いま、なんじ?」
「えとね……。3じ、36ふん」
 ステラはパルトネルをポケットから取り出して時刻を確認した。
「あと、もうちょっとしかない! あぁ、どうしよぉ……」
 マーナは時間を聞いて焦りを見せる。
「きっと、だいじょうぶ!」
「でも、やくそう、5つしかないよ? それに、ステラちゃんだって……」
「……む~」
 ステラは道中で見つけた何かの緑色の毛を拾っていただけで、他に何も手に入れていなかった。
「やっぱり、おそとにでなかったらよかった……。かえろ?」
 マーナが俯いて、トボトボと引き返そうとする。
「まって! ステラ、がんばるから!」
 ステラが慌ててマーナの手を取る。が、マーナはステラの手を払いのけて怒ってしまった。
「がんばったもん! ステラちゃんも、わたしも! でも、こどもだけで4000ディアなんて、むりだったんだよ!」
「そんなことない! ステラ、おるにゃんよりつよいもん!」
「おるにゃんって、だれ!?」
「ん? よくわかんない!」
 ステラはオルランドがだとは分かっているが、どんなヒトか、何をしているヒトか知らなかった。
「わたしもわかんないよぉ……!」
 マーナはもうよく分からなくなって泣いてしまった。
「……ないちゃった」
 ステラが途方に暮れていた、その時。
『グォオオオ!』
 ふたりの近くで、恐ろしい雄たけびが聞こえた。
「え、なに!?」
 マーナが震えながら周りを見回す。
「きっと、モンスターだよ!」
 ステラはマーナを庇うように後ろに隠し、鳴き声が聞こえた方を見る。
「グオオ!!」
 草木の間からクマ型モンスターが勢いよく飛び出し、ふたりに襲い掛かった。
「ひっ!?」
「ふん!」
 ステラはすんでのところでマーナを抱え、モンスターの攻撃を躱して少し離れた所に退避した。
『グルルル……』
 モンスターが喉を鳴らしてふたりを睨みつける。
「あ、このって……!」
 ステラが先程拾った毛を取り出して見る。今目の前にいるモンスターも拾った毛の色も同じ緑色だった。
か!」
 ステラがパルトをかざして相対しているモンスターの情報を読み取った。
【3m以上ある巨体に、緑色の毛、薬草を主食とするが獰猛な性格で、縄張り意識が強いため近づいて来たモノを容赦なく攻撃するモンスター。食欲が凄まじく、このモンスターが住み着いてしまうと、瞬く間に周辺の薬草は尽きてしまう上に、空腹のグリーンベアが近隣のヒトや村の畑を襲う事件が少なく無い】
 つまり、この辺りにモンスターや薬草が見当たらないのも、このグリーンベアのしわざだったのだ。
「ステラちゃん、にげよ……!」
 マーナは声や足を震わせながらも、一向に逃げようとする様子の無いステラに声をかける。
「ダメ! このグリーンベアって、わるいモンスターだってかいてるもん! にげちゃったら、またわるいことするでしょ!」
 ステラはグリーンベアの項目を全部判るわけではない。だが、グリーンベアがわるいモンスターという事はハッキリと分かった。
「で、でも、こんなの、いくらステラちゃんがつよくても、かてっこないよ!」
「グゥォオオ!」
 グリーンベアが爪を立てて、ふたりに襲い掛かる。
「よっと!」
 ステラがマーナを抱えてジャンプして、また攻撃を回避する。
 ────バリバリバリ……ドーン!!
 ステラ達の代りにグリーンベアの攻撃を受けた木が、大きな音をたてて倒れてしまった。
「ほら、こんなのとたたかったら、しんじゃうよぉ……!」
 グリーンベアを安全に仕留めようとするなら戦闘職でないおとなで5人以上、衛兵など少し腕の立つモノで3人必要と言われている、ラブラドリーテ周辺の所謂モンスターの一種なのだ。
「マーナちゃん、すこしはなれてて」
「でも……」
「えと、なんだっけ? そだ! かならずしょうりしよう、やくそくだ! うふふっ」
 ステラはまたもオルランドのマネをして見せて笑う。ステラにとってオルランドは、という扱いである。
「え?」
 しかしオルランドなんて知らないマーナにとっては何のことかサッパリだった。
「だいじょうぶってこと!」
「わわ!?」
 ステラは気を取り直し、その場で固まってしまっているマーナを手で押して離れた位置に避難させる。
「よし!」
「グルルル……」
「かかってくるがいい!」
 ステラは声を少し低くして、キリっとした顔で言い放つ。
「グゥォオオ!」
 グリーンベアは意味を知ってか知らずか、ステラの声が聞こえると同時に、牙を剥きだしにして勢いよく走り出した。
 自信満々のステラだが、果たしてグリーンベアに勝つことはできるのか?
 いや、無事にこの森を脱出することはできるのか?
 森のボスグリーンベアと、小さな淑女紳士の戦いが始まった。
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