【絶対幼女伝説】 〜『主人公は魔王なのに』を添えて〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)

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幼女+紳士さん

31話 ~ステラの休日『おともらち、できちゃった!』~

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「こんにちは! こまってるの?」
 ステラは泣いている女の子に声を掛けた。
「……うん。わたし、ころんじゃって……。ママのブレスレット、こわれ、ちゃったの……」
 女の子は泣きながらも、手に握られた青い宝石と金のブレスレットを見せた。どうやら転んだ時に地面とぶつかり、宝石部分が外れてしまったようだ。
 ステラと同じ位の年齢で、髪は水色、瞳は濃い青色の少し気弱そうな女の子で、真っ白だったはずのワンピースは、転んだ時に付いた泥で前面が殆ど茶色に染まっている。それに、顔は涙と泥でぐちゃぐちゃで、膝は怪我をしてしまっていた。
「みてもいい?」
「うん……」
 ステラはブレスレットと宝石を受け取ってじっくりながめる。
「う~ん……。ひっつかないね」
 ステラは元あった場所に宝石を押し当てるが、留め具が曲がっているので固定できない。
「うぅ……。ふぅえ~ん!」
 女の子はという事実を突きつけられて、悲しくなり、また泣いてしまった。
「ないちゃった!?」
 ステラはまた泣かれるなんて思ってなかったので、思わず驚いてしまう。
「どぅじよー! ママに、おこられる~!」
 女の子の悲しみは時間と共にヒートアップしていく。
「……そだ! はい、くっきー!」
 ステラは閃いて、女の子にクッキーを手渡した。
「……なぁに、これ?」
 女の子は悲しみより疑問が勝ったようで、べそはかきながらも少し落ち着きを見せた。
「これはね、ははうえがね、つくってくれた、げんきになるくっきー!」
「げんきになる?」
「そう! すっごくおいしーの!」
「たべていいの?」
「うん! どうぞ、おあがりなさい!」
「ふふっ。……いただきます」
 女の子はステラの元気につられて少し笑い、元気になるクッキーをひとくち食べた。
「どう?」
「……おいしい!」
 女の子はよほど美味しかったのか、自身の手の平より大きなクッキーをあっという間に食べきってしまった。
「あ、げんきになったね!」
「うん!」
 元気になったとはいえ、その原因はまだ依然として残っている。
「ステラはね、ステラっていうの! あなたのおなまえは?」
「わたしはマーナだよ」
「よろしくね、マーナちゃん」
「うん」
「マーナちゃんのママは、どこにいるの?」
 ステラは自己紹介を終えると本題に戻した。
「ママはおしごと、だよ。だから、マーナはおるすばんだったの。でも、おそとであそびたくなっちゃって……」
 マーナは親に内緒でひとりで出かけてしまったようだ。
「ふぅん。いつかえってくるの?」
「えっと、5じくらい。ステラちゃん、それがどうかしたの?」
 マーナは恐る恐るステラに訊いた。
「ベラちゃんのとこにいくの。ついてきて!」
「────あっ! え、どこ? ベラちゃんって、だぁれ!?」
 マーナは困惑しつつも、ステラに手を引っ張られるままに、ベラちゃんの装具店に向かった。

 そして、ふたりは寄り道もせずまっすぐに装具店にやってきた。
「ついたー!」
「こ、こわいよ~……」
 このお店は武具やアクセサリーだけでなく、素材も扱っていて、その中にはモンスターの骨や、鉤爪などの身体の一部も置いているのだ。
 ステラは気にしていないが、普通の子どもなら気味悪がってしまっても無理はない。
「いらっしゃい。って、ステラさん早いおかえりね。それに、その子はお友達?」
 ベラちゃんは他の店舗から帰ってきたばかりなのか、帽子をかぶったまま段ボールからアクセサリーを取り出しているところであった。
「こんにちは! あのね、このブレスレット、すぐになおる?」
 ステラは元気よく挨拶をしてから、預かっていたブレスレットをベラちゃんに見せた。
「……」
 マーナは恐がって、ステラの後ろに隠れて居る。
「そうねぇ。留め具を直して、石についた傷を直せばいいだけだから、今日中に直せるわ」
「そっか! よかった~。おかねは、なんディアかかるの?」
「相当価値のあるブレスレットみたいだし、石の傷を修復する専用の道具を使うから……。4000ディアといったところかしら。でも、こんな高価なモノ、どうしたの?」
 ベラちゃんは、ステラの後ろにいるマーナをチラっと見ながら尋ねた。
「……ママの、ブレスレット。わたしが、こわしちゃったの……」
 マーナは半べそになりながらも、ステラの後ろから少し顔を出して答えた。
「そう。ママには言ったの?」
「ううん。ママ、おしごとででかけてるから……」
「おるすばんだったんだけどね、あそびたくなっちゃったんだって」
 マーナの説明に、ステラが補足をいれる。
「内緒ってわけね? でも、子どもが払うには高額だし、一度帰った後ママに壊してしまったことを謝って、それからお金を出して貰ったら?」
 ベラちゃんはブレスレットをマーナに返そうとするが、マーナは受け取るのを嫌がっているので、仕方なくステラが一時的に預かった。
「で、でも……! そしたら、ママにおこられちゃう……」
 マーナはうつむいてしまって、今にも泣きだしそうだ。
「……だいじょうぶだ! わたしにまかせるといい!」
 ステラはオルランドのマネをして、帽子をクイっと上げる動作をする。
「ん?」
 マーナは顔を上げてステラの方を向く。
「どういう事、ステラさん?」
 ベラちゃんは首を傾げてステラに尋ねた。
「ベラちゃん、これ、なおしといて! おかねはね、ステラがだすから!」
 ステラはブレスレットをベラちゃんに再度渡す。
「ちょっと待って、何をするの?」
「えっ、えっ!?」
「じゃあ、あとでねベラちゃん! なおしててね~!」
 ふたりが困惑しているのをよそに、ステラはマーナの手を引いて店から出ていってしまう。
「危ない事は、しちゃダメよー!」
 あっという間に離れていってしまうステラ達に、ベラちゃんはせめてもの注意と手を振るくらいしかできなかった。
「ま、お金のことは後で考えるとして……。依頼されたんならお仕事はキッチリしないとね!」
 ふたりを見送った後、ベラちゃんはさっそくブレスレットの修理に取り掛かった。

「す、ステラちゃん!」
 町を走っている途中、マーナはステラの手を振り払って立ち止まる。
「ん? どうしたの?」
「ど、どこにいくの? きゅうにはしりだしたら、こわいよぅ……」
「えとね、町のおそと!」
「え、なんで?」
「モンスターのね、そざい? をね、するの」
「あ、あぶないよ! けがしたらどうするの!?」
 マーナは驚き、心配し、ステラの肩を掴んで必死に止めようとする。
 確かに4歳児がひとりで、いや、ふたりでも町の外に出てモンスターに挑もうとするなんて、普通に考えれば正気の沙汰ではない。命知らずにも程がある。
「あ、けが。なおしとくね~!」
 ステラはマーナが膝に怪我をしていたのを思い出し、スプレー型の回復薬を噴射する。
「ありがとう……。あ、ステラちゃん、きいてる!?」
 マーナは一瞬忘れかけたが、何とか本題を思い出して話を戻す。
「ステラはね、すごいつよいから、だいじょーぶ! マーナちゃんは、やくそうをおねがいね」
 しかし、ステラにその心配など通用せず、しれっとマーナにも役割を与える。
「え、でも……」
「ママにないしょにしたいんでしょ?」
「うん……」
「マーナちゃんは、ステラがまもってあげるから」
「じゃ、じゃあいく……」
 マーナは迷ったが、不安は残りつつも承諾した。ステラの自信たっぷりな顔を見て、根拠はないが大丈夫な気がしたのだ。
「じゃ、いこ! マーナちゃんのママもかえってきちゃうし、おるにゃんもむかえにきちゃう!」
 ステラは走り出した。
「うん! え、はやすぎるよ~! ステラちゃん、まってー!」
 ステラは勢い余って全力で走り出したが、オルランドおとなをも置いて行ってしまう程の速さだ。マーナがついて行けるはずもなく、その場で取り残されてしまった。
「あ、ごめん!」
 マーナの叫びに気付いて、ようやくステラが戻ってきた。
「もう! ステラちゃん、はしるのはやすぎるよぉ……」
 マーナは置いてけぼりを食らった事で、少し不貞腐れてしまった。
「ごめんね。じゃあ、おんぶしたげる!」
「えっ、えっ! えっ!?」
「しゅっぱーつ!!」
 ステラは動揺するマーナの腕を掴んで肩に乗せ、半ば強引におんぶして、全速力で走り出して行ってしまう。
「きゃ~あ~あ~!? ステラ、ちゃ~ん!!」
 平凡な毎日にを送っていたマーナは、ステラはちゃめちゃに抗う術など持ち合わせていなかったのだった。
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