【絶対幼女伝説】 〜『主人公は魔王なのに』を添えて〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)

文字の大きさ
40 / 49
幼女+紳士さん

31話 ~ステラの休日『おともらち、できちゃった!』~

しおりを挟む
「こんにちは! こまってるの?」
 ステラは泣いている女の子に声を掛けた。
「……うん。わたし、ころんじゃって……。ママのブレスレット、こわれ、ちゃったの……」
 女の子は泣きながらも、手に握られた青い宝石と金のブレスレットを見せた。どうやら転んだ時に地面とぶつかり、宝石部分が外れてしまったようだ。
 ステラと同じ位の年齢で、髪は水色、瞳は濃い青色の少し気弱そうな女の子で、真っ白だったはずのワンピースは、転んだ時に付いた泥で前面が殆ど茶色に染まっている。それに、顔は涙と泥でぐちゃぐちゃで、膝は怪我をしてしまっていた。
「みてもいい?」
「うん……」
 ステラはブレスレットと宝石を受け取ってじっくりながめる。
「う~ん……。ひっつかないね」
 ステラは元あった場所に宝石を押し当てるが、留め具が曲がっているので固定できない。
「うぅ……。ふぅえ~ん!」
 女の子はという事実を突きつけられて、悲しくなり、また泣いてしまった。
「ないちゃった!?」
 ステラはまた泣かれるなんて思ってなかったので、思わず驚いてしまう。
「どぅじよー! ママに、おこられる~!」
 女の子の悲しみは時間と共にヒートアップしていく。
「……そだ! はい、くっきー!」
 ステラは閃いて、女の子にクッキーを手渡した。
「……なぁに、これ?」
 女の子は悲しみより疑問が勝ったようで、べそはかきながらも少し落ち着きを見せた。
「これはね、ははうえがね、つくってくれた、げんきになるくっきー!」
「げんきになる?」
「そう! すっごくおいしーの!」
「たべていいの?」
「うん! どうぞ、おあがりなさい!」
「ふふっ。……いただきます」
 女の子はステラの元気につられて少し笑い、元気になるクッキーをひとくち食べた。
「どう?」
「……おいしい!」
 女の子はよほど美味しかったのか、自身の手の平より大きなクッキーをあっという間に食べきってしまった。
「あ、げんきになったね!」
「うん!」
 元気になったとはいえ、その原因はまだ依然として残っている。
「ステラはね、ステラっていうの! あなたのおなまえは?」
「わたしはマーナだよ」
「よろしくね、マーナちゃん」
「うん」
「マーナちゃんのママは、どこにいるの?」
 ステラは自己紹介を終えると本題に戻した。
「ママはおしごと、だよ。だから、マーナはおるすばんだったの。でも、おそとであそびたくなっちゃって……」
 マーナは親に内緒でひとりで出かけてしまったようだ。
「ふぅん。いつかえってくるの?」
「えっと、5じくらい。ステラちゃん、それがどうかしたの?」
 マーナは恐る恐るステラに訊いた。
「ベラちゃんのとこにいくの。ついてきて!」
「────あっ! え、どこ? ベラちゃんって、だぁれ!?」
 マーナは困惑しつつも、ステラに手を引っ張られるままに、ベラちゃんの装具店に向かった。

 そして、ふたりは寄り道もせずまっすぐに装具店にやってきた。
「ついたー!」
「こ、こわいよ~……」
 このお店は武具やアクセサリーだけでなく、素材も扱っていて、その中にはモンスターの骨や、鉤爪などの身体の一部も置いているのだ。
 ステラは気にしていないが、普通の子どもなら気味悪がってしまっても無理はない。
「いらっしゃい。って、ステラさん早いおかえりね。それに、その子はお友達?」
 ベラちゃんは他の店舗から帰ってきたばかりなのか、帽子をかぶったまま段ボールからアクセサリーを取り出しているところであった。
「こんにちは! あのね、このブレスレット、すぐになおる?」
 ステラは元気よく挨拶をしてから、預かっていたブレスレットをベラちゃんに見せた。
「……」
 マーナは恐がって、ステラの後ろに隠れて居る。
「そうねぇ。留め具を直して、石についた傷を直せばいいだけだから、今日中に直せるわ」
「そっか! よかった~。おかねは、なんディアかかるの?」
「相当価値のあるブレスレットみたいだし、石の傷を修復する専用の道具を使うから……。4000ディアといったところかしら。でも、こんな高価なモノ、どうしたの?」
 ベラちゃんは、ステラの後ろにいるマーナをチラっと見ながら尋ねた。
「……ママの、ブレスレット。わたしが、こわしちゃったの……」
 マーナは半べそになりながらも、ステラの後ろから少し顔を出して答えた。
「そう。ママには言ったの?」
「ううん。ママ、おしごとででかけてるから……」
「おるすばんだったんだけどね、あそびたくなっちゃったんだって」
 マーナの説明に、ステラが補足をいれる。
「内緒ってわけね? でも、子どもが払うには高額だし、一度帰った後ママに壊してしまったことを謝って、それからお金を出して貰ったら?」
 ベラちゃんはブレスレットをマーナに返そうとするが、マーナは受け取るのを嫌がっているので、仕方なくステラが一時的に預かった。
「で、でも……! そしたら、ママにおこられちゃう……」
 マーナはうつむいてしまって、今にも泣きだしそうだ。
「……だいじょうぶだ! わたしにまかせるといい!」
 ステラはオルランドのマネをして、帽子をクイっと上げる動作をする。
「ん?」
 マーナは顔を上げてステラの方を向く。
「どういう事、ステラさん?」
 ベラちゃんは首を傾げてステラに尋ねた。
「ベラちゃん、これ、なおしといて! おかねはね、ステラがだすから!」
 ステラはブレスレットをベラちゃんに再度渡す。
「ちょっと待って、何をするの?」
「えっ、えっ!?」
「じゃあ、あとでねベラちゃん! なおしててね~!」
 ふたりが困惑しているのをよそに、ステラはマーナの手を引いて店から出ていってしまう。
「危ない事は、しちゃダメよー!」
 あっという間に離れていってしまうステラ達に、ベラちゃんはせめてもの注意と手を振るくらいしかできなかった。
「ま、お金のことは後で考えるとして……。依頼されたんならお仕事はキッチリしないとね!」
 ふたりを見送った後、ベラちゃんはさっそくブレスレットの修理に取り掛かった。

「す、ステラちゃん!」
 町を走っている途中、マーナはステラの手を振り払って立ち止まる。
「ん? どうしたの?」
「ど、どこにいくの? きゅうにはしりだしたら、こわいよぅ……」
「えとね、町のおそと!」
「え、なんで?」
「モンスターのね、そざい? をね、するの」
「あ、あぶないよ! けがしたらどうするの!?」
 マーナは驚き、心配し、ステラの肩を掴んで必死に止めようとする。
 確かに4歳児がひとりで、いや、ふたりでも町の外に出てモンスターに挑もうとするなんて、普通に考えれば正気の沙汰ではない。命知らずにも程がある。
「あ、けが。なおしとくね~!」
 ステラはマーナが膝に怪我をしていたのを思い出し、スプレー型の回復薬を噴射する。
「ありがとう……。あ、ステラちゃん、きいてる!?」
 マーナは一瞬忘れかけたが、何とか本題を思い出して話を戻す。
「ステラはね、すごいつよいから、だいじょーぶ! マーナちゃんは、やくそうをおねがいね」
 しかし、ステラにその心配など通用せず、しれっとマーナにも役割を与える。
「え、でも……」
「ママにないしょにしたいんでしょ?」
「うん……」
「マーナちゃんは、ステラがまもってあげるから」
「じゃ、じゃあいく……」
 マーナは迷ったが、不安は残りつつも承諾した。ステラの自信たっぷりな顔を見て、根拠はないが大丈夫な気がしたのだ。
「じゃ、いこ! マーナちゃんのママもかえってきちゃうし、おるにゃんもむかえにきちゃう!」
 ステラは走り出した。
「うん! え、はやすぎるよ~! ステラちゃん、まってー!」
 ステラは勢い余って全力で走り出したが、オルランドおとなをも置いて行ってしまう程の速さだ。マーナがついて行けるはずもなく、その場で取り残されてしまった。
「あ、ごめん!」
 マーナの叫びに気付いて、ようやくステラが戻ってきた。
「もう! ステラちゃん、はしるのはやすぎるよぉ……」
 マーナは置いてけぼりを食らった事で、少し不貞腐れてしまった。
「ごめんね。じゃあ、おんぶしたげる!」
「えっ、えっ! えっ!?」
「しゅっぱーつ!!」
 ステラは動揺するマーナの腕を掴んで肩に乗せ、半ば強引におんぶして、全速力で走り出して行ってしまう。
「きゃ~あ~あ~!? ステラ、ちゃ~ん!!」
 平凡な毎日にを送っていたマーナは、ステラはちゃめちゃに抗う術など持ち合わせていなかったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

処理中です...