【絶対幼女伝説】 〜『主人公は魔王なのに』を添えて〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)

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幼女+紳士さん

36話 〜ポケットの中には渾身の魔法〜

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 ステラから貰ったを飲んだ瞬間、オルランドは全身を光らせ、そして足元から発生した魔力の渦に飲み込まれてしまった。
「うぐぅぉああー!! あ、熱い……!!」
 身体も、それを飲み込む魔力の渦も、灼熱のように熱かった。だが、オルランドは身体を押さえて耐えるしかできない。
「あわわわわわ……!」
 ステラは何が起こっているのか分からず、何をしたらいいのか分からず、あたふたとオルランドの周りをぐるぐる回ることしかできない。
「ぐぐぅ……! 力が、魔力が……。身体の中に、流れて来る……!?」
 オルランドが耐えきれず膝を突いてしまう。
「おるにゃん……! どうしたらいいの~!?」
 ちなみに、オルランドに飲ませたとは、先日黄金の鹿から貰った雫の事だ。
『私の角から流れる雫を、貴女と一緒に旅をする、金髪のお友達に飲ませてあげてください。必要なはずですから』
 と言っていたのと、ステラ的には悪い感じはしなかったので飲ませても大丈夫だと判断したのだ。
「ふっ、ふふふははははっははぁ~!!」
 それが、先程までオルランドは苦しんでいたのに、気でも触れたか次は笑いだしてしまった。
「……」
 ステラはその様子に少し引いてしまっている。
「くふふふ……。はははははは~!!」
「あれ……?」
 ステラが足を止めてオルランドの方を見る。
 心なしか、魔力の渦が小さくなっている気がする。
「何が、どうなっているのか知らぬが……。力が、魔力が漲って来る……!」
「だいじょぶ、そう……?」
「────とぅわーっ!!!」
「ひゃっ!?」
 オルランドが急に雄たけびを上げたので、ステラは思わず驚いてしまう。
「ふふふふふ……」
「あ、ないなった!」
 気付けば、オルランドを飲み込んでいた魔力の渦はきれいさっぱり無くなっていた。ただ、オルランドは凄く悪い笑顔をしていたが。
『プルル!』
 騒ぎの音につられたのか、シロプルが近くにやって来た。
「シロプルか、丁度いい! さっそく試させてもらうとしよう!!」
 オルランドは首をコキコキと鳴らし、邪悪な笑みを浮かべながらシロプルの元へ走り出した。
『ルルップ!?』
 シロプルが身構える。
「無駄無駄無駄~! さあ、食らうがいい。私の真の力!」
 オルランドは走りながら手の平に魔力を集める。そして、
「──────闇の化身よ、ここに顕現し仇なすモノを貪り尽くせぇ!!」
 渾身の魔力を込めた闇魔法を、シロプル目掛けて撃ち出した!!
『プル……?』
「あれ……?」
 はずだった。
「あはっ。なにこれ~!」
 ステラがを見て笑う。
 笑ってしまうのも仕方ない。何故なら、撃ち出された魔法は、
「ちっちゃ~い!」
 ステラの小指の爪程の大きさしかない、とても小さな黒い粒だったのだ。
 しかも、プカプカと浮いているだけで、全然シロプルの方向に進めていない。
「む……? これは何だ?」
『プルル……?』
 事態が飲み込めないオルランドとシロプルは、その小さな粒を見守る事しかできないでいた。
「あ! なんかパクパクしてる、かわいい!」
 ただ、ステラだけはこの状況を楽しんでいるようだ。
 その小さい粒は口のような裂け目があり、それを金魚のようにパクパクと動かして漂っている。
「かわいい?」
「おるにゃん、、こうげきしないでしょ? もらってもいい?」
 ステラは小さな粒を両手で優しく包んでオルランドに訊いた。
 触れてもダメージは無いらしい。
「え? あ、ああ。まあ、構わぬ……」
 とりあえずそのではシロプルにダメージを与えられない事だけは分かったので、オルランドは戸惑いながらも了承した。
「ぅわ~! ありがと! えへへっ」
 ステラはゴキゲンでポケットに入れる。
「……あ。ステラ、ポケットに入れて大丈夫なのか……?」
 オルランドは恐る恐るステラに尋ねた。
 曲がりなりにも、自身の放った渾身の魔法なのだ。ダメージを受けて欲しいわけではないが、全くのノーダメージは流石に悲しい。
「ん? だいじょーぶ! なんで?」
 ステラは首を傾げている。
「あ~、いや。大丈夫なら問題ない。一応、魔法だからな。怪我をしたら困るであろう……?」
 オルランドは必死に平静を保つ。
「そだね。おるにゃん、そろそろかえる?」
 ステラはそんな事意に介さず、楽しそうに訊く。
「まだ戦闘中……。あれ?」
 いつの間にかシロプルはどこかに行ってしまったようだ。
 興が削がれてしまったのか、戦うまでもないと感じたのか、それとも哀れなオルランドに同情したのか。何にせよ、戦闘が無事に終了したのは間違いない。
「おるにゃん、、なにかたべるかな?」
 ステラがオルランドの魔法小さな粒が入っている方のポケットをポンポンと叩く。
「育てるつもりなのか……?」
「うん。ステラ、おせわする!」
「……そうか。魔法にエサを与えたことなどない故、何を食べるのかと言うより何か食べるのかすら判らぬ」
 まさかこんな展開になるとは夢にも思っていなかったが、オルランドは気を取り直してステラの元に行く。
「そか。じゃあ、トニーにきいてみよっか。あ、あとせべーろ?」
 舌足らずで上手くと言えなかったようだ。
「ふむ。知らぬとは思うが一応、訊いてみるだけならいいか。それよりステラ、前から思っていたのだが、トニーもセヴェーロも年上であろう? “さん”を付けなさい」
「さんトニー?」
「トニーさんだ」
「トニーサンダー?」
「ふざけているのか?」
「ふざけてない! おるにゃんがふざけてるんでしょ!」
「…………帰ろうか」
「うん!」
 オルランドとステラは、なんだかんだ仲良く屋敷に向かった。

「あ! あのたべるかな?」
「いや、その辺の雑草を食べさせるのはどうかと思うぞ。壊す腹があるのかは判らぬが、腹を壊して病気になったらどうするのだ?」
「え~! だったら、きっと『ぺっ』てするよ?」
「ステラならそうかもしれぬが、赤ちゃん……と表現していいのか知らぬが、何にせよ出来立てには違いないが、上手く『ぺっ』をできるのか?」
「む~!」
 町に着いたふたりは、に何を食べさせるかで軽く言い争っていた。オルランドは主に何でもかんでも食べさせない方針で、ステラは主に何でもかんでも食べさせる方針で分かれているのだ。
「食べるとしたら、魔法なのだから魔力とかマナであろう?」
「でも、なんでも、おくちにいれようとするよ?」
「それはモノの判別が……。待てステラ」
 オルランドは屋敷前にいるヒト影を見て話を止める。
「なあに?」
「あれはマーナちゃんではないか? それと、一緒にいるのはマーナちゃんの母君か?」
「かな?」
 マーナの隣に立っているのは、少し濃い目の水色の髪をした女性で顔つきも似ている。
「失礼。マーナちゃんの母君であろうか?」
 オルランドはその女性に話しかけた。
「え? ああ、はい。そうです! 貴方がステラパパさんですか?」
 マーナのお母さんはこちらに気付き、愛想良く返事をした。
「ああ、というわけではないですが、一応保護者をさせて頂いているオルランドです」
 オルランドは一応敬語で応対する。
「そうですか。この度は押しかけるような形になってすみません。迷惑では無かったでしょうか?」
 マーナのお母さんが頭を下げる。
「いえいえ。最近うちのステラがマーナちゃんに遊んで貰っているみたいですし、こちらこそご迷惑をおかけしていませんか?」
「迷惑だなんて、そんな」
「立ち話もなんですし、中に入りますか?」
「いえ、大丈夫です。今回はうちの事情でステラちゃんを巻き込んでしまった事を、お詫びに参った次第ですので……」
 マーナのお母さんは申し訳なさそうに言う。
「巻き込む……。何の事ですか?」
「先日、マーナが転んで私のブレスレットを壊してしまったんですが、それの修理代を手に入れる為に、大人には内緒で町の外へ素材集めに行ったんです。それにステラちゃんを付き合わせたと娘が言っていまして……。ほら、マーナ」
「ごめんなさい……」
 マーナはお母さんに促されて、ステラとオルランドに謝る。
「……ステラ?」
 オルランドは目を細めてステラを見る。
「……にげろ!」
 ステラは身の危険を感じて、慌てて逃げ出した。
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