【絶対幼女伝説】 〜『主人公は魔王なのに』を添えて〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)

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幼女+紳士さん

35話 ~封印せざるを得ない新技~

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 町長セヴェーロがラブラドリーテに帰ってきて数日後。
 トニーに頼まれた依頼の『薬草畑を荒らすモンスターを駆除する』に向けて、オルランドは少しでも力を着ける為シロプルの居る草原に来ていた。
「たまには外の空気を吸わねばならぬな……」
 毎日杖の素振りをしているが、アクセサリー制作は思う以上に身体が凝り固まってしまうので、気分転換の為にも外に出ることにしたのだ。
 本音を言えば、アルフォンソとの実力差に焦って、外に出ずにいられないといったところだが。ついでにお小遣い稼ぎも。
「おるにゃん、のどかわいたら、いってね!」
 ステラが水筒を片手にオルランドに声を掛けた。
 ステラは今日もマーナと遊ぶものだとオルランドは思っていたが『きょうは、おるにゃんについてく!』とのことで、当初ひとりで行く予定だったのを変更してこうしてついて来てもらっているのだ。
「ああ。その時は頼むぞステラ」
「は~い! むふふふふ~……」
 ステラは元気よく返事して、何かを企んでいるように笑った。
「ん? お、どうやらお出ましのようであるな……!」
 オルランドはステラの様子に少し疑問を持ちながらも、シロプルは発見したのでそちらに意識を切り替える。どうやらまだシロプルはこちらに気付いていないようだ。
「じゃあ、ステラはなれてるね!」
 そう言ってステラは近くの木陰に向かって走り出した。
「ああ。では行ってくる」
 オルランドはホルダーから杖を抜いて、相手に気付かれないように姿勢を低くする。
「毎日朝晩素振り1000回の成果、見せてくれるわ……!」
 オルランドは杖を構えて静かに近寄る。そして、
「食らうがいい!!」
『ルルップ!?』
 ────バチーン!!
 振り下ろした杖はシロプルにみごと命中。シロプルは地面に一度バウンドして少し離れた所に跳ね飛ばされた。
「追撃させてもらうぞ。はぁっ!」
 オルランドは大きくステップを踏んで、シロプル目掛けて鋭い突きを放った。
『プギュー!』
 地面を擦ってシロプルが転がる。
「まだだ!」
 オルランドは走って距離を詰め、杖の持ち手を使ってシロプルを引き寄せる。
『キュルップ!』
 シロプルは次の攻撃を避けようとするも間に合わず、
「せぇいっ!!」
 ────ズドン!!
 オルランドは素早く体勢を整えて、渾身の正拳好きを撃ち込んだ。
『キュルッピ~!?』
 攻撃を受けたシロプルはあまり吹き飛ばなかった。何故なら、衝撃の殆どが外に流れることなくシロプルの身体に伝わったからである。
「ぴーころ師匠せんせー直伝の正拳突きはやはり威力が違うな。もしや杖より……いや、流石に武器を持った方が強いか? きっと私がまだ使いこなせていないだけであろう。うむ、そうに違いない」
 オルランドは自身の正拳突きの威力に少し目を疑った。が、思い直した。
『プ、プルル!』
 ところどころボロボロになっているシロプルが起き上がった。どこが上で下かは判らないが、体勢を立て直したのは間違いない。
「ふむ、やはりまだ起き上がるか……」
 オルランドが武器を構え直す。
『ルルルルルル~……』
 シロプルが魔法の詠唱に入った。
「ふっ、来たか!」
 オルランドがニヤリと笑って、魔法を防ぐためのを出すことなく、そのままシロプルに向かって走り出した。
『ルルルル……』
「前回の戦いから毎日どう防げばいいか考えたのだ。まともに受ければダメージを避けられないなら……」
『キュルップー!!』
「こうだ!」
 ────ズザザーッ!
 オルランドはスライディングでシロプルに巻き上げた砂をかぶせて魔法を防ぎつつ、シロプルの後ろ魔法の効果範囲外に退避した。
『ルブブブッ』
 シロプルは身体を振って纏わりついている砂を払う。
「ふっ。なかなか上手く決まったようだな!」
 オルランドは杖で地面を突いて体勢を整える。
『ルルップ!』
 大方砂を払い終えたシロプルは、威力なぞ度外視で素早く体当たりした。
「ぐぅ……。はぁっ!」
 しかし威力が低いせいか、それともオルランドの筋力がついたせいか、シロプルの体当たりは杖で弾かれてしまった。
『ギュルルル……!』
 シロプルは怒った様子で、何故かその場で空を切って回転し始めた。
「なんだ……?」
 初めて見る攻撃予備動作に、オルランドは少し戸惑ってしまう。
『ギュゥルップー!!』
 ────ギュイン!!
 シロプルは自身を回転させて、オルランド目掛けてジャイロボールのように突撃した。
「なっ!? っぐぅ……!!」
 オルランドは咄嗟に杖で受け止めるも、攻撃は重く、そして今尚続いている為、どんどん後ろに押されて行ってしまう。
『ギュルルル……!』
「ま……けぬぞ! 私が、貴様ごときに……」
 少し前までのオルランドならここで攻撃を受けてしまい、杖は飛ばされ、ひん死状態に至っていただろう。だが、今回は違った。
「負けて、なる、ものか……!」
 ほんの数日とは言え毎日暇を見つけては筋トレに励んできた。外には出ていなかったが、家の中でもトレーニングはできるのだ。
 それが功を奏してか、オルランドはシロプルの攻撃を受け止めた上に、少しずつ押し返し始めた。
『ギュゥルルルル!!』
「吸血鬼相手に、力勝負か……。笑わせて、くれるわ……!」
 オルランドがニヤリと笑う。
『ギュルル……!』
 オルランドがニヤリと笑った理由はすぐに明白になる。
 そう、押し合いはほぼ互角であったが、オルランドにはまだ余力があるのに対し、シロプルは体力の限界なのか少しずつ勢いが弱まってきていたのだ。
「今だ。……はぁっ!!」
 オルランドはシロプルの隙を見つけて打ち返す。
『キュッピッピー!?』
 上手く力が入らずあまりダメージは入らなかったようだが、シロプルは地面に転がり、疲労したためかその場で倒れ伏してしまった。
「止めといこうか……!」
 オルランドは杖を握り直し、呼吸を整えながらシロプルに近づく。
『プル……』
 シロプルは逃げようとするも、元々移動速度が遅いのに加えて疲労困憊なので、なかなか前に進まない。
「素振りの成果……。とくと味わうがいい!!」
 ────ベチベチベチベチベチベチ……!!
 オルランドは杖を振り下ろした。そう、何度も何度も。上下に上下に。
「アクセサリー制作の少ない合間に、少しでも回数を、こなせるよう、早さに磨きをかけたのだぁ!!」
 ────ベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチ……!!
 目にも留まらぬ素早い連続攻撃がシロプルを襲う。
『ギュプププププププ……!?』
 あまりに早い振りににシロプルは避ける暇もなく、ただ甘んじて攻撃を受けるしかできない。
「そして完成した、この連続攻撃にも、終わりがある。うぉ~! これで……」
 ────ベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチベチ……!!
 攻撃のスピードがどんどん上がっていく。
「1000回目だぁっ!!!」
 オルランドは杖をねじる様に握りしめ、渾身の力を込めて思い切り振り抜いた。
 ────べッチーン!!!
「決まった……!」
 オルランドが清々しい顔で額の汗を拭う。そして、攻撃を受けたシロプルは……。
『ギャルップァ!!!』
 ────パシューン!!
「へっ?」
 なんと、跡形も無く、魔石や素材を一切残すことなく、その場で爆発して消えてしまった。
「……あ。ちょっ、え? まさか、やってしまった、のか……?」
 オルランドは事態が上手く飲み込めず、周りをキョロキョロと見回す。
「あ~あ! おるにゃん、そざい、なくなっちゃったね……」
 戦闘が終わって駆け付けてきたステラが、オルランドに現実を突きつける。
「これでは、骨折り損ではないか……」
 オルランドがその場で座り込んでしまう。
 そう、オルランドが今回手に入れたのは、少しの経験と、激しい疲労だけだった。
「また、たおさないとだね」
 ステラがオルランドの背中をポンポンと叩く。
「ああ、そうだな。はぁ……。この攻撃は、封印した方が良さそうだな……」
 オルランドは空を見上げる。
「おるにゃん、つかれたでしょ? はい、どうぞ!」
「ん? ああ。すまない、助かる……」
 オルランドはステラから水筒を受け取り、中に入っていたをコップに注いでいく。
「……」
 ステラはその様子を見て、ニヤニヤし始めた。
「どうしたのだ、そんな顔をして?」
「なんでもないよ!」
「そう、か? まあ良い。見た所普通の水のようだし、ありがたく飲ませて頂くとしよう……」
 そしてオルランドは、コップに入ったその水を……。
「のんだ!」
「……え?」
 オルランドは飲んだ瞬間、異変を感じたが時すでに遅し。
「うぉぁあああー!!!」
 オルランドは目を光らせ、身体を光らせ、そして足元から発生した魔力の渦に飲み込まれてしまった。
「ど、どうなるの~!!?」
 ステラはただ見守ることしかできなかった。
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