アネモネを君に

野部 悠愛

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背けては居られない

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ちなみに、何故かさよちゃんは私が優翔ちゃんを呼んだときは私の背中に隠れていたのを、私が優翔ちゃんにお話という名のお説教をし始めたあたりでそっと私から離れて、スイちゃんの後ろに隠れた。
スイちゃんこと谷原妃翠(たにはらひすい)は、いつもの事なのであまり動じることなく、スマホをいじりながら遅い朝食のコッペパンをもぐもぐと食べていた。
いつの間にか、さよちゃんを捕まえることを諦めた優翔ちゃんが戻ってきた。
そのまましばらく雑談をしていると、不意にさよちゃんとスイちゃんがくすくすと笑い始めたので、どうしたのか尋ねると、肩を揺らしたままスマホの画面をこちらに翳してくる。
そこに映っていたのは、ふさふさした耳と鼻とヒゲの着いた私の写真だった。
最近若い女性の間で人気のあるアプリで撮られた写真に目を向けたあと、私はそっと口角をあげて、
「消してね?」
と言った。
スイちゃんはわかっている、というように頷いて、その場で私に見えるように写真を削除してくれた。
さよちゃんは未だに笑っている。
楽しそうなので放置することにして、そういえば、と話を変えた。
「今日の1時間目、英語に変更になったんだっけ?」
それを聞いて、嫌そうに顔を顰めながら、
「そうだね。」
まじであんな奴来なくていいんだけど。
今日も今日とてスイちゃんは毒を吐いている。
その理由というのが、英語の先生こと和多(わだ)が女子に「俺の娘」と言って回ったり、大声で唾を飛ばして話したりという良い印象を抱くことの出来ないような言動をするのだ。
ちなみに、もっと理由があるのだが長くなるのでこのくらいにしておく。
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