アネモネを君に

野部 悠愛

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背けては居られない

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1時間目、教室には無駄に大きな和多の声が響いている。
前の方の席に座っている私は、寝不足と和多の声というダブルパンチでガンガンと痛い頭を抑えながら授業を受けている。
斜め前に座っているスイちゃんなんかはあからさまに耳を抑えながら、小さな声でうるさいと呟いている。
和多はいつも無駄に大きな声で話す。
きっとこの人は静かにしたら死んでしまうに違いない。なんて思いながら今日も耐える。
ふと隣の席へ目をやると、さよちゃんは驚いたことに夢の世界へと旅立っていた。
この騒音の中よくそんなことができるものだと少し感動した。
前の席では、優翔ちゃんが頻りにうとうとしながら授業を受けている。
私たち4人の中では、まぁまともな態度だと思う。
騒音と頭痛でだんだんと朦朧としていく意識の中でそんなふうに思う。
和多の五月蝿い声が遠ざかって、ほとんど何も聞こえなくなって、ものをあまり考えられなくなってくる。
眠っている訳では無い。
目は見えているし、ノートもしっかりとっている。
ただ、音が遠い。
でも、これはいつもの事だったりする。
和多の授業を受けているとだいたいこうなる。

…………

気がつけばチャイムが響いて、音が耳に戻ってきた。
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