僕に世界が救えるか

野部 悠愛

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プロローグ

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目を覚ますと、そこはさっきまでいたはずの真っ白な部屋ではなく、白い壁に木製の赤茶色の棚や、赤い小物が所々に置いてある誰かの私室と思われる部屋だった。僕はその部屋のベッドの上に横たえられていた。ちなみにベッドも赤色だ。
……?……おかしい、場所もそうだけれど服装が変わっている。さっきまでは死装束のような白い着物だったはずなのに今は鮮やかな朱色の着物になっている。それに先程まで肩につくくらいに切りそろえていた黒髪は真っ白になり腰まで伸びている。
丁度さっきのアオたちのような感じだ。
不思議に思いつつキョロキョロと周りを見回すとベッドサイドに手鏡が置いてあった。
何とはなしに手に取って覗き込んで見る。
「……え?…なにこれ…………?」
ギョッとした。顔自体は変わっていない。とても醜くなったわけでもとても美しくなったわけでもない。
そこには長く白い髪に、透き通るような白い肌、朱色の瞳をした自分の顔が映っていた。
わけもわからず、ボーッと手鏡を眺めていると、カチャリと控えめな音がした。
そちらを見ると先程の男の人と女の人が入ってきた。黄色い瞳の女の人がこちらを見て、少し驚きながら口を開いた。他の2人も驚いてはいたようだが黙っている。
「目が覚めたのね。良かったわ……」
女の人は笑顔で話し始めた。白い瞳の男の人を指しながら、
「ごめんなさいね。この馬鹿が何の説明もなしに、貴女を質問攻めにしたものだから状況が分からない混乱と、魂が不安定だったのが相まって倒れてしまったようなの。」
と、言った。
最後に本当に申し訳なさそうな様子でもう一度
「ごめんなさい。」
と謝られて何と答えたらいいものか分からなくなってしまって
「いえ。」
口から出てきたのはとても無愛想な返事で、可愛げが無いなと自分でも思った。
それなのに女の人は気分を害した様子もなく、笑って応じてくれた。

ふと、何かを考えたあとパチンっと手を叩いて女の人は言った。
「そうね!まずは自己紹介でもしましょうか。どこの誰ともわからない私たちと話していても不安でしょうしね。」
すると、白い瞳の男の人が、
「俺からしても良いだろうか?」
他の2人が黙って頷くのを確認してから話し出す。
「虎白だ。先刻は悪かったな、少し取り乱した。」
短い自己紹介と謝罪を述べた虎白の後ろ頭を女の人がはたいた。
そして、耳打ちをする。
「シンメイを名乗ってどうするの?あの子にはーーがないのだから認識出来ないのよ?魂だってまだ安定していないはず……。」
所々聞こえないけれど、どうやら僕が虎白の名前をわからないと思ったようだ。
「あの、…コハク……さん………。」
名前、わかりましたよ?と続けようとして、やめた。
部屋の空気がピリッと緊張したのがわかったからだ。
いきなり名前呼びは失礼だっただろうか。
それとも、さん付けではなく様付けで呼んだ方が良かったのだろうか。確かに、この3人はどこか神聖な空気をまとっているように感じる。
ぐるぐると考えて、結局謝ろうという結論にたどり着いて顔を上げると、先程の緊張感が嘘のように無くなって、虎白が微笑んでいた。
「さん付けは要らない『虎白』と呼び捨てで呼んで欲しい。」
優しい声でそう言われる。
なんだか胸から温かい懐かしさのようなものを感じてくすぐったかった。
「はい、ありがとうございます。虎白。」
虎白が満足そうに頷くと、次は自分だと言わんばかりにアオが進み出た。
「龍青(るせい)だ。……訳あってアオと名乗っていた。……これからはわたしのことも龍青と呼んで貰えたら……嬉しい。」
「はい、龍青。改めてよろしくお願いします。」
龍青と呼んだら本当に嬉しそうに笑うから驚いた。
「最後は私ね。私の名は黄麟(こうりん)。私のことは黄麟と呼んでね。……本当は姉さんと呼んで欲しいけれど……。」
「はい、黄麟姉さん?よろしくお願いします。」
嬉しいわ!と鈴のような声で笑う姿がなんだか可愛らしくて、少し近づきにくい雰囲気だったのが和らいで本当に姉のような気がしてきた。
それぞれ自己紹介が終わると、また黄麟が話し始める。
「自己紹介も済んだし、見た限りでは朱音の魂も安定しているようだから、貴女がここに来た理由を説明するわね。」
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