42 / 54
第38話
しおりを挟む「失礼しますっ!!」
校長室のドアを勢いよく開け入って来たのははじめさんだった。
勢いよく入って来たことには正直驚いたがここにはじめさんが来たことに驚きはなかった。
担任であるはじめさんなら私が校長室に呼び出さた事を把握していて当然だ。
だが帰りのホームルーム前に居なくなった事に疑念を抱き慌ててここへやって来たのだろう。
私は金森先生やはじめさんがここに来る前に話しを終わらせたかった為、六時限目を受けず来た。
だから私の意思は既に校長に伝えてあるので、急いで来てくれた所申し訳無いがもう手遅れである。
そんな勝手な行動に後ろめたさがあり遠慮がちにはじめさんへ目を向けているとすぐ目が合ってしまう。
「やっぱり居たな!!
本郷、なぜ何も言わずにここへ来たんだ!一人で突っ走るな!」
荒々しい口調と合致しない自分自身を責めているような苦しそうな表情。
以前私が体調不良を隠した時以上の苦しそうな表情に心の奥底が痛くなるがなんとか堪える。
これははじめさんの為なんだと自分勝手な押しつけを肯定する。
「ーーー噂についての呼び出しだったので山田先生には関係ないかと。」
「いや、関係あるだろっ!
元々俺が!ーーー」
「ストップ。そこまでですよ。まだ先客がおりますので少々お待ちいただけるかな、山田先生。」
その言葉に床で項垂れた状態の金森先生に気付き鋭い視線を向ける。
「まぁこの状態じゃ暴挙に出そうに無いですが、念には念を。」
そう校長が言えば続き部屋から警備員らしき人達が入って来て金森先生の両脇を抱えた。
金森先生を見下ろす形で校長は話し出した。
「さて、君の処分ですが、、、君は他の人達を巻き込み過ぎた。
善良であった生徒を、教師をも引き込み手を染めさせた。
彼女達は善良で有るが為に自分たちが犯した罪を白日の下に晒そうとするだろう。
だが、未来ある彼女達には酷な話だ。
だから別の形で君だけに制裁を与えたいと思う。
既に君の偉大な父親には了承を得ている。ーーーこの意味は理解できるね?」
その瞬間、抜け落ちていた表情に色が戻る。
「父さんが、見切りをつけた、、、?
もう、、ダメだダメだダメだ、、、。。」
言葉を発したかと思えば、今度は下を向いてずっとぶつぶつ独り言をつぶやいていた。
もう話しても無駄だと思ったのだろう。校長は警備員に顎で隣の部屋を差し移動の指示を出す。
そして先生はそのまま警備員に抱えられ隣の部屋へ連れていかれる。
でもその前にせめて一言言いたくて私は先生の進路に割り込んだ。
「いい様ですね。
あなたがはじめさんを貶めようとしたことだけは絶対に忘れないし許さない。
そして貴方にいい様に使われた人達も同じ気持ちだと思います。
ーーーでももし貴方が自分のして来た行いを悔い、いつか改心する時が来たとしたら、、、私はその手伝いが出来たら良いと思っています。」
そう金森先生の目を見て話と大きく目を見開いた。その後すぐ横に目を逸らし
「ケッ、偽善者が。」
と言葉を吐き捨てて行った。
金森先生がどんな反応でも、私は言いたい事は言ったしこれで満足だ。
遠ざかる背中を見ながらふと気になったのは金森先生と彼女達の処分についてだ。
校長の言い分だと世間へ公表せず内輪だけで処分を下すような話だったが、、、。
「ーーー校長先生、もしかして、、、隠蔽しますか?」
私が端的に聞けば校長はニッコリ笑うだけ。
多分、金森先生を庇って隠すと言うわけじゃないだろう。
ならば、、、
「学校の名誉の為?それとも彼女達の将来の為?
どちらにしろ今回の事は目を瞑るって事ですか?」
「ふふふっ、どうでしょうね~。」
はっきりと明確な答えはくれないようだ。
じゃあついでとばかりに以前気になったことも聞いてみる。
「金森先生が前に居た学校で聞いた話なんですが。
校長先生は金森先生の『人柄』と『疑惑』をしっかり聞いたのに『平気平気』といって態々そんな人物をうちに引き抜いたそうですね。
何ででしょうね?弱み?恩?
金森先生の偉大な父親か、その学校の校長か、はたまた両方か。」
敢えてぼかして聞いてみるが全く笑顔が崩れない。
食えない人だ。今までの校長のイメージがガラッと変わってしまう。
これは聞くだけ無駄だったと一人納得した。
どちらにしろ金森先生の件は校長に任せるしかない。私はただの生徒に過ぎないしね。
「いやぁ、本郷さんは面白いですねぇ。
まぁ私が言える事は彼女達には″お咎め無し″と言う事実だけです。
あちらの学校長の判断ですよ。
ーーーただ、代わりに彼女達には罰を与えないという罰が下った形になりましたが。
誰にも打ち明けられない、償う機会がないことはそれなりにきついものがありますからね。
まぁ背負った物は今後の活躍で返して行くしか無いでしょう。」
そう言う校長は先程までのニッコリ笑顔と少し違って居た気がする。
「さて、山田先生を放ったらかしですよ。可哀想に。」
そう言われ後ろを振り向くと所在無さげなはじめさん。
ごめんと目で謝り再度校長に向き直る。
まだ私は校長との話が終わって居ない。
「校長先生改めて言います。
私、本郷ゆづ葉は本日を持ちまして退学させていただきます。」
あの時。
五時限目を終え校長室に向かった私は、退学届を提出していた。
はじめさんとの関係を正直に話し、そして金森先生の裏の情報を渡し、出来れば私一人の退学で何とかならないか交渉して居たのだ。
すると案の定はじめさんから待ったが掛かる。
「待って下さい、校長。
本郷に非は全くない。どう本郷に聞いたか知りませんが以前お話した通り、全面的に私が悪いのです。
教師でありながら生徒の本郷に手を出した私が全ての元凶です。
ですから、退学届は受け取らないでください。」
「っ!!!」
そう言って私の隣に並ぶはじめさん。
私より前に校長に話していた事実に驚きが隠せない。
「何で勝手な事を。約束したよね?
一ヶ月は手出ししないでって。」
私は手紙の事を口に出すが
「ーーーそう書いてあったが約束はして居ない。例え約束していたとしても″手出し″はして居ない。」
自分も使った屁理屈を言われついカーっとしてしまうがここで校長の待ったが掛かる。
「やめなさい。
はぁ、、全く。痴話喧嘩は外でやって欲しい物ですね。
では話を戻しますが、私は今二枚の封筒を預かっています。」
校長が持って居るのは一つは私の『退学届』。もう一つは題名が『退職願』と書かれた物。
あっ、と思いはじめさんを見ると分かりやすく目を逸らす。
もう一つの約束 ″絶対に学校を辞めない事″を完全に無視した形だ。
抗議しようとしたが
「本郷さん、落ち着いて下さい。
私の話を聞いて?
えーっとここに二枚の封筒が有りますが、、。
まず『退学届』に関しては先程金森君の事が優先事項の為″後回しにする″と言いましたよね?
だから今これを処理する時間はありません。
また時間が出来たら対処しますので、えーと五ヶ月後?くらい?、なので本日付の物は不要です。と言う事で、破棄!」
「あっ!!!」
手を延ばしたが止める間も無くビリビリ破いてしまった。
五ヶ月後って卒業式過ぎちゃってますけど!?
そう心の中でツッコミを入れていると、次はもう片方の封筒を手に持つ。
「次に″退職願″の方ですが、『たった今一人教師が抜けて大変な時に辞めるんじゃ無い!!!』by校長心の叫び⭐︎
まぁ″届″じゃなく″願″だから学校側の意向も考慮して欲しいって事で却下します。
ーーー教師として悪かったと思うのであれば、教師として挽回しなさい。、、はい、破棄!」
同じく止める間も無くビリビリビリビリ。
結局二通とも破棄されてしまった。
校長先生は私達の関係を否定しなかったし、全く責めなかった。
そして二人とも学校を辞めなくて良いと許してくれた。
どうしてなのか聞かずには居られなかった。するとキョトンとしたあとに、、、
「二人は本気なんでしょう?
なら良いじゃ無いか。
それぞれの立場をちゃんと理解した中で、二人ともがしっかり自立しながら愛を育んでいる。
相手が教師だからテストの範囲を聞こうとしたことがあるか?勉強を教えてとせがんだことがあるか?
相手が生徒だから甘やかして答えを教えた事があるか?特別枠を作って勉強を教えてあげた事があるか?
愛にかまけて成績か落ちたか?
愛にかまけて授業を疎かにしたか?
無いだろ?
君達はそんな事を絶対にしない。
学校とプライベートの境界線をしっかり守れる君達なら大丈夫だと信じているよ。
じゃあ話は終わりで良いかな?
全て他言無用で頼むよ。」
そう言って校長室から送り出された。
校長室の扉の前で二人並んで佇む。
《校長先生には頭が上がらないな。》
そう思いはじめさんを見上げれば同じ事を思っていたのか頷いてくれた。
これから校長の期待に添える様、より一層精進して行こうと決意したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カチャッ。
校長室の扉が少し開き校長の顔がぬるっとでできた。
「そうそう、言い忘れてたけど校舎裏の花壇でのイチャつきは控えめにね。
学校とプライベート云々じゃなく、見てて恥ずかしいからっ。
よろしく⭐︎」
パタンっ。
はい、精進します。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
ジェリー・ベケットは愛を信じられない
砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。
母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。
それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。
しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。
だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。
学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。
そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。
※世界観はゆるゆる
※ざまぁはちょっぴり
※他サイトにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる