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Brotherhood
28話 作戦
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ゼレスティア王宮、作戦室――。
「よし! 出撃の準備はできてるな!?」
現在、親衛士団の本部である作戦室にいる団士は、サクリウス・ワインロック・オリネイの3人。
それに加え、団長が留守のため仮の指令役となっている副団長バズムントを合わせた4人しか居ない。
上記の第13~15団士の3人は、説教を喰らっている最中に突如としてグラウト市の警鐘が聴こえてきたため、直ちに揃って出動させられる羽目となったのだった。
「出現箇所はグラウト市西門付近。作戦の目標は市内に侵入してきた魔物、及び魔神の駆除。敵についての詳細は伝令がこっちに到着し次第、すぐに向かわせる。お前さん達の職務怠慢もこの任務に成功したら不問としてやろう。それでいいか?」
バズムントは褒美をちらつかせ指令を送る。
しかし、団士3人のモチベーションは上がらずにいた。
「……不問とか言ってっけど散々説教喰らった後だし褒美になってねーよ、それ」
面倒くさそうに悪態をつくサクリウス。
「まあ、そう腐るな。では、成功したらお前さん方一人一人に好きな店でメシを奢ってやろう。これならどうだ?」
「言ったわねバズムント。じゃあ、アタシはドメイルにある"ヴィセ・フーレ"に連れてってもらうわね」
その提案に真っ先に食いついたのはオリネイ。
ゼレスティア国内で最も高級な料理店の名前を出した。
「いいね、そこ前から行ってみたかったんだ~。バズムント、僕もそこに決めたよ」
便乗するワインロック。
バズムントの笑顔が徐々にひきつっていく。
「さ……サクリウス、お前さんはどうだ?」
「あーー、別にどこでもいーっての。それより、そんな無駄話してていーのか? 早く任務行かねーとまずい事態なんじゃねーの?」
その言葉にハッとしたバズムントは一度だけ大きく咳払いをすると、改まった表情で口を開く。
「……そうだったな、すまん。では三人とも、頼んだぞ。今、近くに出払ってるジェセルとカレリアもすぐに応援へ向かわせる。まあお前さん方の腕なら、二人が着くまでには終わらせられるとは思うが、無理はするなよ」
「りょーかい」
「了解」
「了解よ」
各々が了解をする。
その後は締めの言葉としてバズムントが『武運を祈る』と告げ、三人の団士は作戦室を後にしたのだった。
◇◆◇◆
「サクリウス~、一応アンタが序列は上なんだから指示は任せたわよ」
オリネイが自身の得物である蛇剣の調整をしながら言う。
彼女を含めた団士三人は現在、王宮内の中庭沿いの長い廊下を並んで歩いていた。
「あーーそっか、この中だと俺になるのか。指示だなんてガラじゃねーし気ぃ進まねえな~」
親衛士団の掟の一つに『任務中は序列が上の団士の指示を仰ぎ、遂行しなければならない』といったものがある。
これは我が強い人間ばかりが揃う団員同士での意見の相違による弊害を防ぐために、生み出された掟であり、鉄則となる。
しかし、序列が上の団士の指示が必ずしも最適解という訳でも無いので、任務によっては例外も勿論存在する。
「しっかりしてよね。アンタの指示一つ一つが市民の命一人一人に関わってくるんだから」
「わーってるよ! ったく、さっきまで仕事放棄して遊び惚けてたヤツのセリフとはとても思えねーな」
先刻まで喰らっていた説教の事を思い出し、サクリウスが毒づく。
「なによ! 文句あんの!?」
「文句しかねーよ!」
いがみ合うサクリウスとオリネイ。
火花を散らし合う男女の間にワインロックが立ち、仲裁に入るが――。
「まあまあ、二人とも。下らない喧嘩はよそうよ。争いは何も生まないよ? でもね、セックスをすれば子供が産ま――」
「「それ以上言うなっ!」」
――全く仲裁になってなかった。
「……えーーじゃあ、オリネイ。オマエは北側なー。ドメイルの方面からグラウトに向かい敵を駆逐しながら、西門広場に向かえ」
「ハイハイ、了解」
ぶすっと膨れるオリネイだが、傾いた機嫌を見せながらも了解をする。
「ワイン、オマエは南側な。フルコタ方面から同じく広場に向かってくれ」
「了解っ」
手段はどうであれ、結果的に喧嘩を止めることに成功したワインロックは、ニコニコとご機嫌な様子を見せながらの了解。
「オレは真っ直ぐしらみ潰しに広場へと向かう。連絡手段は……」
「敵と遭遇したら空に向かって“信号光術”でしょ? いつも通りね」
口を挟み、答えを紡いだオリネイ。
「そうだなー。色はオレが赤でオリネイが黄色。ワインが緑なー。んで、敵の総数と種類がまだ定かになってねーから索敵信号としてもハイリフトを使えよー」
サクリウスが説明を省いた索敵信号の内容とは。
『信号一発が敵の発見』
『二発が敵の駆逐の完了』
『三発以上が一人では手に負えない相手』
という、サインを意味していた。
◇◆◇◆
王宮の正門から出た団士3人は、王宮前広場へと足を踏み入れる。
「この人数を見るに、市民の避難は大方完了ってとこかなー」
正確な数字を数えることはできなかったが、サクリウスは目算で判断した。
「流石は優秀なゼレスティア兵といったところかな? これだけの人数をあっという間に無事に避難させるなんて、とても素晴らしい手際と連携の良さだ。僕は君達に感服し、称賛に~~」
「ワイーーン、任務中は不必要に長話するなってバズムントに良く言われてるだろー?」
手をパンパンと叩きながら遮り、注意をするサクリウス。
二人の前に立ち、出撃の合図を執り行う。
「さーて、細かい指示はもう無しだ。後は好きに暴れよーぜ――」
と、サクリウスが語尾を言い終えた直後だった。
西門方面の空に、白い光弾が何発も打ち上がるのを三人が目撃したのだ。
「おいおい、こりゃ一体……」
そしてその光弾は信号の意を示し、発射された回数から導き出されるサインは『一人では手に負えない相手』を表していた。
だがサインとは別で、その光弾はもう一つの意味も為していたのだ――。
「これって、アタシ達以外の人間が既に敵と戦ってるってこと……?」
オリネイが三人から生じた疑問を代表するよう口にした。
サクリウスは驚きつつも冷静に状況を整理し、三人の中のリーダーとして判断を下す。
「……どーやら、作戦を改める必要がありそーだなぁ。誰だか知らんがお陰でこっちはやり易くなった」
薄笑みを浮かべるサクリウス。
少しの間を置き、二人に命じる。
「――作戦変更、全員で西門広場直行な」
“了解”と応えた二人。
それが合図となり、団士三人は広場を一瞬で後にしたのだった。
「よし! 出撃の準備はできてるな!?」
現在、親衛士団の本部である作戦室にいる団士は、サクリウス・ワインロック・オリネイの3人。
それに加え、団長が留守のため仮の指令役となっている副団長バズムントを合わせた4人しか居ない。
上記の第13~15団士の3人は、説教を喰らっている最中に突如としてグラウト市の警鐘が聴こえてきたため、直ちに揃って出動させられる羽目となったのだった。
「出現箇所はグラウト市西門付近。作戦の目標は市内に侵入してきた魔物、及び魔神の駆除。敵についての詳細は伝令がこっちに到着し次第、すぐに向かわせる。お前さん達の職務怠慢もこの任務に成功したら不問としてやろう。それでいいか?」
バズムントは褒美をちらつかせ指令を送る。
しかし、団士3人のモチベーションは上がらずにいた。
「……不問とか言ってっけど散々説教喰らった後だし褒美になってねーよ、それ」
面倒くさそうに悪態をつくサクリウス。
「まあ、そう腐るな。では、成功したらお前さん方一人一人に好きな店でメシを奢ってやろう。これならどうだ?」
「言ったわねバズムント。じゃあ、アタシはドメイルにある"ヴィセ・フーレ"に連れてってもらうわね」
その提案に真っ先に食いついたのはオリネイ。
ゼレスティア国内で最も高級な料理店の名前を出した。
「いいね、そこ前から行ってみたかったんだ~。バズムント、僕もそこに決めたよ」
便乗するワインロック。
バズムントの笑顔が徐々にひきつっていく。
「さ……サクリウス、お前さんはどうだ?」
「あーー、別にどこでもいーっての。それより、そんな無駄話してていーのか? 早く任務行かねーとまずい事態なんじゃねーの?」
その言葉にハッとしたバズムントは一度だけ大きく咳払いをすると、改まった表情で口を開く。
「……そうだったな、すまん。では三人とも、頼んだぞ。今、近くに出払ってるジェセルとカレリアもすぐに応援へ向かわせる。まあお前さん方の腕なら、二人が着くまでには終わらせられるとは思うが、無理はするなよ」
「りょーかい」
「了解」
「了解よ」
各々が了解をする。
その後は締めの言葉としてバズムントが『武運を祈る』と告げ、三人の団士は作戦室を後にしたのだった。
◇◆◇◆
「サクリウス~、一応アンタが序列は上なんだから指示は任せたわよ」
オリネイが自身の得物である蛇剣の調整をしながら言う。
彼女を含めた団士三人は現在、王宮内の中庭沿いの長い廊下を並んで歩いていた。
「あーーそっか、この中だと俺になるのか。指示だなんてガラじゃねーし気ぃ進まねえな~」
親衛士団の掟の一つに『任務中は序列が上の団士の指示を仰ぎ、遂行しなければならない』といったものがある。
これは我が強い人間ばかりが揃う団員同士での意見の相違による弊害を防ぐために、生み出された掟であり、鉄則となる。
しかし、序列が上の団士の指示が必ずしも最適解という訳でも無いので、任務によっては例外も勿論存在する。
「しっかりしてよね。アンタの指示一つ一つが市民の命一人一人に関わってくるんだから」
「わーってるよ! ったく、さっきまで仕事放棄して遊び惚けてたヤツのセリフとはとても思えねーな」
先刻まで喰らっていた説教の事を思い出し、サクリウスが毒づく。
「なによ! 文句あんの!?」
「文句しかねーよ!」
いがみ合うサクリウスとオリネイ。
火花を散らし合う男女の間にワインロックが立ち、仲裁に入るが――。
「まあまあ、二人とも。下らない喧嘩はよそうよ。争いは何も生まないよ? でもね、セックスをすれば子供が産ま――」
「「それ以上言うなっ!」」
――全く仲裁になってなかった。
「……えーーじゃあ、オリネイ。オマエは北側なー。ドメイルの方面からグラウトに向かい敵を駆逐しながら、西門広場に向かえ」
「ハイハイ、了解」
ぶすっと膨れるオリネイだが、傾いた機嫌を見せながらも了解をする。
「ワイン、オマエは南側な。フルコタ方面から同じく広場に向かってくれ」
「了解っ」
手段はどうであれ、結果的に喧嘩を止めることに成功したワインロックは、ニコニコとご機嫌な様子を見せながらの了解。
「オレは真っ直ぐしらみ潰しに広場へと向かう。連絡手段は……」
「敵と遭遇したら空に向かって“信号光術”でしょ? いつも通りね」
口を挟み、答えを紡いだオリネイ。
「そうだなー。色はオレが赤でオリネイが黄色。ワインが緑なー。んで、敵の総数と種類がまだ定かになってねーから索敵信号としてもハイリフトを使えよー」
サクリウスが説明を省いた索敵信号の内容とは。
『信号一発が敵の発見』
『二発が敵の駆逐の完了』
『三発以上が一人では手に負えない相手』
という、サインを意味していた。
◇◆◇◆
王宮の正門から出た団士3人は、王宮前広場へと足を踏み入れる。
「この人数を見るに、市民の避難は大方完了ってとこかなー」
正確な数字を数えることはできなかったが、サクリウスは目算で判断した。
「流石は優秀なゼレスティア兵といったところかな? これだけの人数をあっという間に無事に避難させるなんて、とても素晴らしい手際と連携の良さだ。僕は君達に感服し、称賛に~~」
「ワイーーン、任務中は不必要に長話するなってバズムントに良く言われてるだろー?」
手をパンパンと叩きながら遮り、注意をするサクリウス。
二人の前に立ち、出撃の合図を執り行う。
「さーて、細かい指示はもう無しだ。後は好きに暴れよーぜ――」
と、サクリウスが語尾を言い終えた直後だった。
西門方面の空に、白い光弾が何発も打ち上がるのを三人が目撃したのだ。
「おいおい、こりゃ一体……」
そしてその光弾は信号の意を示し、発射された回数から導き出されるサインは『一人では手に負えない相手』を表していた。
だがサインとは別で、その光弾はもう一つの意味も為していたのだ――。
「これって、アタシ達以外の人間が既に敵と戦ってるってこと……?」
オリネイが三人から生じた疑問を代表するよう口にした。
サクリウスは驚きつつも冷静に状況を整理し、三人の中のリーダーとして判断を下す。
「……どーやら、作戦を改める必要がありそーだなぁ。誰だか知らんがお陰でこっちはやり易くなった」
薄笑みを浮かべるサクリウス。
少しの間を置き、二人に命じる。
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