PEACE KEEPER

狐目ねつき

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Eroded Life

25話 エリス

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(……エリスについて、解った事がいくつかある)

 市街地を奔走するアウルは、脇目も振らずに走りながらも思考を巡らせる。

 まず、エリスは人間の姿をしてはいるが中身は全く別物の魔神。血や骨、タンパク質など身体を構成する物質を人間に似せてはいるが、全て"マナ"で"それらしく"創った仮初のものだと言う――。

 次に、何故彼女がアウルの体の中に居るのか――だが。
 自身の意思で少年の体に入ったのか、何者かの手によって入れられたのか、エリス本人も定かでは無いと言っている。
 要するに『魔神自身もわからない、ということがわかった』のだ。

 その他にアウルが理解した事と言えば――。



「アウル、どうしてそんなに速く走るのー?」

「――っ!」

 足の速さには絶対の自信を持つ少年が全速力で疾走はしっているのにも関わらず、顔色一つ変えずに並走する少女。

「もしかして、私から逃げようとしているの? 無理だよ? アウルは私から離れられないし、離さないよ」

 "離れない"というのは、心情なのか物理的なものなのか。或いは両方か。

「やっと外へ出てこれたんだもん。絶対にアナタを逃がさない。地の果てでも、地獄の底までも、どこまででも一緒に居てあげるんだから」

 生気の宿らない真っ黒な瞳で、エリスは少年の両眼を見据える。
 かつて、魔神に精神を冒されたビスタ・サムエレスを相手取った時と同様の感覚。いや、その時以上の冷たい威圧感が、少年の全身を襲う。

「……アウル、これだけは忘れないでね。アナタが死ねば私も死ぬし、私が死ねばアナタも死ぬ――これは二人の約束であって、"誓い"よ」

 少女が愛くるしい笑顔で告げる。
 その宣告は、どこをどう切り取ってもアウルにとっては絶望そのもの。


("誓い"? 冗談じゃない……“呪い”だろっ!)
 

◇◆◇◆


 ゼレスティア王宮、庭――。

 ここは、"庭"と言われてはいるが、景観を彩る植物などは一切飾られていない。
 ただ一面に緑の芝が広がるだけで、主に一般兵の訓練場として使用されている場なのだ。
 しかし面積はそこまで広くなく、"学園"の授業で使われる武術場よりも遥かに狭い。

 現在は一般兵数十人が一人の講士の下、隊列を組んで剣術の基礎である型を修練している最中だ。


「はーい、じゃー次、"ヴォム・タグ"の型」

 講士の男が手を叩くと、兵達は構えを取り、合図と共に一同が鉄剣を次々と素振る。

「次ー。"プフラグ"の型」

 男が再び手を叩く。兵達は別の型を構え、素振る。かれこれ小一時間程、基本の型の励行の繰り返し。


(はー、久々のオフの日だってーのにどーしてこんなだりー"講士"なんてやらなきゃいけんのかねー)

 脳内でそう嘆いたのは、講士役であるサクリウス。
 彼は休日を返上してまで、兵達の訓練に付き合っていたのだ。

(バズムントのヤロー、剣術講士担当のマーセルが急病で来れねーからって、どうして団士のオレに頼むかねー。大体オレ、まともな剣術なんて基礎の型しか覚えがねーから大した技術なんて教えれねーんだぞ)


 そう、本来兵への訓練を担当するのは団士の役割ではない。
 剣術・魔術・体術の講士担当兵は別に居るのだった。
 一般兵の頃から双剣での戦闘を好み、型通りの剣術を習い倣うのを毛嫌いしていたサクリウス。
 彼にとってこの訓練を任されるのは甚だ不本意であり、"無駄"だとさえ思っていた。


 ――しかし、嘆いていたのは彼だけではない。


「はい次ー。"オフズ"の型――」
「――あの、サクリウス様。少しよろしいでしょうか?」

 サクリウスの指導に割って入ったのは、一人の一般兵だった。

「なんだー? メズート」

 サクリウスにちらりと一瞥だけをされ名を呼ばれた若い兵は、勇気を振り絞って言葉を発した。

「……まずは先に謝罪を致します。訓練の邪魔をするような真似をしてしまい、誠に申し訳ありません!」

「んでー?」

 勢い良く深々と頭を下げたメズート。
 サクリウスは続きを急かす。


「団士であるサクリウス様に、俺達のような一般兵の訓練を見て頂くのはとても光栄です。しかし、俺達も掃討作戦に参加する身――基本通りの型を続けているようでは強くはなれないのです!」

「知ってるよー。でもオレに上等な剣術なんて教えらんねーって。恨むなら人選ミスったバズムントを恨むんだなー」

 素っ気なくサクリウスが返す。
 しかし、メズートは諦めることなく続けた。

「いえ、そういうおつもりは毛頭御座いません! 俺が所望するのは、せっかくのご機会……是非、サクリウス様に"リーベ・グアルド"をご教授賜りたいのです!」

 熱意溢れる懇願。
 他の兵達も同様の想いだったのか、メズートに倣うようにサクリウスへ切実な視線を浴びせる。

(全員……同意見、ね。まー作戦も近いし、一般兵コイツらが色気づくのもしゃーねえか。無駄な基本を繰り返すよりよっぽど有意義だしなー)

 判断を終えたサクリウスは少しの溜め息をつくと――。

「……別にいーけどよ、一朝一夕で覚えれる技術モンでもねーからな? 今日だけじゃ基本的な動きしか教えれねーからそれでも良いんなら、教えてやってもいーけど」

 但し付けの為された許可ではあったが、メズートを含む一般兵達はお互いに顔を見合わせて喜びを露わにする。
 現状、リーベ・グアルドは団士と限られた上位兵にしか伝授されていなかったため、一般兵にとってはかねてより憧れを抱く技術とされていたのだ。

「いいかー? あくまで今日教えるのは"基本"だからなー? 間違っても実戦で使ったりすんなよー?」

「「はいっ!!」」

 サクリウスの忠告に対し、全員が元気良く返事をする。

(あーあー喜んじゃってまー。どーせならとことん付き合ってやるか――ん?)

 ニヤリと気概を表情に出したサクリウスだったが、背後を人影が物凄い速さで横切ったことに気付く。

(今のはアウル……だよな? 演習の翌日はアイツもオフだった筈。一体王宮に何の用だ? それに気のせいか、一緒にもう一人走ってたような……)

 振り返り、かろうじて姿を捉えていたサクリウスだったが――。

(……ま、いーか。今日は構ってる余裕ねーし)

「よーし、んじゃ、まずは"避けダッジング"からやるぞー!」


 特に気に留めることなく、兵達へ向き直ったのであった。


◇◆◇◆


 ――ゼレスティア王宮、1階廊下。

「ねえアウルー。どこへ向かってるのー?」

 王宮内をひた走るアウルの背中を追い、エリスも同じペースの速さで続く。
 まるで少年の走る速度に寸分の狂いも無く合わせるよう、ピッタリと並走してきているのだ。

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

 自宅を出てからここまでの間、足を止めることなくアウルは走り続けてきた。額には汗が滲み、息は既に上がりきっていた。
 対してエリスは呼吸一つ乱す様子すら見せない。改めて、少女が人間離れした魔神だというのが確認できた。



『魔神の血を体から取り除くのは、現時点では不可能』

 かつてそう聞き及び、アウルも忘れず心に留めていた。
 だが『この少女の姿をした魔神と、今後も生活を共にしていくのは耐えられない』と思った少年は、どうにかして少女の"具現化"を解除すべく、解決法を模索していたのだ。
 最初は、単純にエリスから距離を置こうと思って疾駆を続けていた。しかし、どんなに速く走ってもこの少女は自身から離れない。

 結果、物理的に離れる事をアウルは諦めた。
 しかしまだ考えは残っているようで、その答えがこの王宮内にあると少年は踏む。


(あの人なら……。あの人ならきっと、どうすればいいか判るはず!)

 僅かな希望を携え、少年は走る。
 一方でエリスは――。

(ふふ……アウルったら何を考えているのかしら? 私から離れるなんて絶対に無理なのに)

 それは遥か高みから見物するが如く、少年のひた向きさに付き合っている様子――要するに、アウルを"舐め切って"いたのだ。


 そして、アウルは王宮のどこへ向かっているのかというと――。



「――待て。貴様は、今年入隊したアウリスト・ピースキーパーだな。一般兵はこの先へ許可なしに進む事は出来んぞ」

 王宮の2階へ昇るための唯一の方法と言える、石造りの正面階段。その脇に立つ警備兵に、アウルは呼び止められてしまった。
 王宮は3階まで階層が存在し、2階はマルロスローニ家の者は当然として、他には親衛士団の団員と限られた上級兵しか許可なしに足を踏み入れる事を許されていなかったのだ。
 これはいくらアウルが名家の生まれと言えど、横紙破りが通用する規則では無い。
 しかし――。

「……すみません。ですが、サクリウス様からバズムント様へ言伝ことづてを預かっているのです」

 当然、これは嘘。
 実はアウルも、庭で訓練を見ていたサクリウスを走りながらも目の端で捉えていた。
 なので都合良く名前を使わせて貰っているに過ぎない。

「そうか、では俺が言伝を受け取り、バズムント様へ伝えよう。内容はなんだ?」

「いえ、"お前自身で伝えろ"とサクリウス様から言われました。なので内容をお教えすることはできません。2階へ行ってもいいとの許可も頂いています」

 アウルとサクリウスの仲が普段から親密だということは、既に全兵士が周知している事実だった。特例とも言える一般兵への許可をサクリウスが与えたとしても何ら不思議ではない。
 サクリウスが休日に王宮に居たのは偶然だったにせよ、少年にとって話の信憑性を高める上で実に都合が良かったのだ。

「む……そうか。良いだろう、通れ。作戦室は昇って左、そのまま進んだ先にある突き当たりの部屋だ」

 少々不満気な警護兵であったが、なんとか許可を得ることができたアウル。

「ありがとうございます。では失礼します」

 軽い会釈をしながら、ゆっくりと階段を昇る。

(我ながら、良くもまあここまで出まかせが言えたもんだ。バレたらサクリウスさんに大目玉食らうだろうなあ……)

 心の中で苦笑し、アウルは2階へと足を踏み入れる。と、そこで少年は一つの懸念に気付く。

(そういえば……エリスは?)

 まさかここまで付いてはこれないだろう、と階下を覗こうと振り向くが――。


「……ん? なあに?」

 ――何事も無かったかのように、少女は背後に居たのだ。

(どうやって……。瞬間移動、とか?)

『エリスは魔神』
 それはもう十分に解りきっている事実なので、今更何が起きてもアウルが驚くことはなかった。

(それに……どうせならこのままついてきてくれた方が都合良いしね)

 そう判断したアウルは改めて視線を戻し、2階を見回す。

 灯飾と窓から差し込む日の光によって、明るく照らされた大理石張りの壁。
 石床で造られた左右に分かれた廊下。
 鉄扉に閉ざされ並んだ、数多くの部屋。

(そういえば、2階に来たのって入隊した直後に案内されたきりだったっけ……)

 2階は庭園がある1階に比べると、天井が低く、人通りも少なかった。
 この階層には客人用の応接間が数部屋あったり、科学士の為の開発スペースとなる研究室などが幾つもある。他にも様々な用途の部屋があるが、ここでは割愛しよう。

(えっと、作戦室は左……と)

 警備兵に教えてもらった道順を頼りに、少年は廊下を進む。

 歩いている途中で上級兵や白衣に身を包んだ科学士とすれ違うが、特に声を掛けられる事もなかった。
 2階に足を踏み入れる事自体が許可制なので、許可を貰ったのだろうと誰もが思い、少年の存在に対して特別な違和感を抱かなかったのだろう。

(……着いた。ここが、親衛士団の作戦室)

 おかげで余計な面倒事に逢うこともなく、こうして無事に作戦室まで辿り着くことが出来たのだ。

(……よし!)

 この時間はバズムントしか居ないと解りきっていたため、余分な緊張を携えることなく、アウルは観音開きの鉄扉を開く。



「――ん?」

 机の上で山積みとなっている書類。
 それに囲まれるよう、相も変わらずデスクワークに勤しむ副団長のバズムント。
 扉が開いたので、入り口へと視線を向ける。

「バズさん……!」

 そう呼ばれた彼にとってアウルは見慣れた少年ではある。だが慣れないタイミングと場であるため思わず訝しんでしまう。

「アウルじゃないか。そんな血相変えてどうした? というか、お前さんどうやってここに――」
「説明は後でするし、後で謝るよ! それより……シングラルさん居る?」

「……何があったのか知らんがまずは落ち着け。それにシングラルはアムルー鉱山へ遠征任務中だ。一週間は帰ってこないぞ?」

「……!」

 最悪。その二文字がアウルの思考を覆う。

 そう、自身と同じく魔神の血を体に宿すシングラルならばこの問題を解決する方法を知っているのでは――と思い、アウルはここまで無理を通してまで足を運んだのだ。

「……っ! 親父は?」

「息子であるお前さんも知ってるだろ? ヴェルスミスなら相変わらず消息不明だ。もうかれこれ1ヶ月は帰ってきてない。全く困ったもんだよ。作戦も控えているというのに……」

 眉をひそめながらバズムントが愚痴をこぼす。
 ヴェルスミスに至っては、アウルが国軍に入隊を終えた直後に突如として行方が掴めなくなってしまったのだ。 
 現在は捜索隊を募って依然としてゼレスティアの領土中を探っている最中だという。
 巷では"死亡説"まで、まことしやかに囁かれている現状だ。

(くそっ……無駄足だ。シングラルさんの帰りを待つしかないか……。とりあえず、バズさんにも伝えておこう)

 解決策はひとまず保留とし、副団長に問題を打ち明けようとするアウル。しかし、先に口を開いたのはバズムントだった。

「大体どうやって2階に来れたんだ? いくらお前さんと言えども、規則を破ることは許されんぞ?」

「それについては……ごめんなさい」

 素直に謝罪をするアウル。
 問い詰めるようにバズムントが続ける。

「今日は休みを与えてやったろうに。大人しく家でのんびりしていれば良いものを――ん?」

 説教混じりに話すバズムントだったが、扉の前に立つ少女がようやく視界に入る。

「あ、バズさん! この子はね……」

 慌てて説明をしようと、アウルは口を挟むが――。


「おお、"エリス"! お前さんも来ていたのか。しかしいかんぞ? 規則を破るのは」


(…………は?)

 呆気にとられるアウル。
 何故、今日姿を具現化したはずの少女の名を、彼が知っているのか。


 不可解はやがて不気味へと変化し、背筋が凍る思いをどうにか我慢しながら、少年は振り向き言葉を発す。


「エリス……キミは、何を……?」


 質した先に居たのは、嗤う少女。
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