127 / 154
Climax show
67話 第6団士 vs 上位魔神
しおりを挟む
(――――重腕――――)
開戦早々、クィンは特性を発動。
先程と同様に、少女の細腕は何倍にも質量を増す。
対するアダマス。
その巨体からは想像もつかない程のスピードで、クィンとの間合いを一瞬にして詰めてみせると――。
「――隙だらけだぞ、ああ」
その言葉と共に豪腕から右拳が放たれる。
固められた拳は、クィンの顔の面積とほぼ同等のサイズで、最早それは『金属製の鈍器』と形容すべき代物。
突進の勢いそのままに力を込めたその拳が、少女の顔面へとまともに直撃したのであった。
「…………っ!!」
衝撃が、重く鈍い音となって聖堂内を反響。傍から眺めていたフェリィは思わず目を背けてしまう。
そう、いくらクィンが上位魔神とは言っても、その容姿は十代半ばの少女と何ら変わりはない。
そんな幼気さを残した姿の相手に対し、一切の慈悲も容赦も無い攻撃だ。
彼女が直視を避けてしまうのも仕方の無いことだろう。
しかし――。
「――――っ!?」
殴ったはずのアダマスが驚く。
彼は当然、油断も手加減もした覚えはない。
相手の背後にあった石柱に叩きつけるつもりで、全力で鉄拳を見舞わせたのだ。
にも関わらず、少女は仰け反るどころか直立不動なまま。
立ち位置は寸分もズレていなく、その様はまるで地に深く根ざした大木かのよう――。
「中々な一撃だったぞ」
巨拳で覆われた先から漏れた細いトーンの声。
直後、途絶えていた少女の殺気が再び放たれ、空間を支配する。
「……ヒト族にしてはだが、な」
「な――――」
怪訝を発そうとしたアダマスの声が途切れる。
彼の脇腹へと、特性によって重量を増した右拳が鋭く、深く突き刺さったのだ。
「ガ……ハ……ッッ!」
殴られた衝撃によって、彼の身体は大きく後方へと飛ばされていく。
そして先刻にフェリィが土術で変形させた床――隆起した石の塊へと背中からぶつかる。
「……っ! ほう、やるじゃないか」
振り抜いた拳から伝わった手応えでクィンは察し、感嘆をこぼす。
アダマスは拳が脇腹に触れたと同時に、咄嗟の判断で背後へとステップを取り、威力を最小限に受け流していたのだった。
団士である彼も当然の如く、リーベ・グアルドの使い手である。歴戦の経験で培われた反射神経が、その防御を可能にしたのだろう。
「ああ、やはり凄まじいな。上位魔神は」
石を背もたれに口端から一筋の血を流しながら、愉悦を満面に含ませた表情でアダマスが嗤う。
国内最強を誇る第1団士、シングラル・マルロスローニにも引けを取らない程に鍛え抜かれた彼の肉体。
バックステップによるダメージ軽減とその鋼のボディをもってしても負傷は避けられなく、彼の左の肋骨は数本折れていたのであった。
「楽しくて仕方がないなぁ、ああ」
だが彼は重傷にも怯むことなくすぐに起き上がり、自身と同等以上の実力を持つ強者との戦いに喜びを馳せるのみ。
「……ふむ、あの程度の一撃では殺れないか」
一方で、額から青い血を流したクィンが感心でもするかのようにアダマスへと向き直る。
少量の流血が鼻筋を伝い、口の横を流れたところで少女はぺろりと舌を這わせ血を舐め取ってみせた。
(――――重腕――――)
そして再び念じ、特性を発動。
既に重くなっていた腕は更に重量を増す。
「次は全力で殴ってやろう」
その宣言と同時、クィンは石床を強く蹴る。
先程とはうって変わって、今度は少女から仕掛けたのだった。
「――――っっ」
二人の間合いは瞬く間に至近距離へと。
見上げる程の巨躯を誇るアダマスの懐へ、一瞬にして入り込んだクィン。
防御も回避も儘ならない、人間の反応速度を優に超すであろう雷の如き疾さで、強烈なショートアッパーを見舞う。
先程よりも速さと重さを伴ったそれは、少女の言葉通りの全力の一撃。
無防備であったアダマスの下腹部に深々と刺さり、内臓を直接損傷たらしめる――つもりでクィンは打ったのだが。
「…………なんだと?」
刹那的な時の間ではあるが、クィンの眉がぴくりと持ち上がる。
目を丸くしたその先には、アダマスの下腹部に触れた自身の拳があった。
しかし全くと言っていいほどに刺さらず、頑丈な鉄壁を殴ったかのような感触だけが拳を伝い――。
――そして直後。
「……っっ!?」
クィンが目を疑う。
握った手の甲を流れる血管が破裂し、地下水でも掘り当てたかのように青い血が吹き出たのだ。
「オマエ……何をした?」
少女は不可解な痛みを意に介すことなく、疑問を眼前の男へとぶつける。
「ああ、いいな。その表情……」
だがアダマスは疑問には答えようとせず、見上げる少女の鋭い目付きに対して愉しむばかり。
更には上位魔神の全力の一撃を受けたとは思えない程に、平然としていたのだ。
「…………っ!」
疑問を袖にされたクィンは静かな怒りを拳に乗せ、再度打ち込む。
「ふはは……いいぞ。ああ」
鉤打ち気味に放たれた次弾を、今度は易々とアダマスが避けてみせた。
しかしクィンは回避されたことに特には驚かず、無言でそのまま一発。更にもう一発と続き、目にも止まらぬ速さの乱打を繰り出していく。
「ああ、その調子だ。もっと来い……!」
だがアダマスは巨体を軽やかに動かし、その高速の一撃の一つ一つをどれも寸でで躱してみせる。
先程の意表を衝かれた時とは異なり、しっかりとクィンのスピードに対応してみせたのだ。
(…………っ!)
その矢継ぎ早に繰り広げられる殴打と回避の凄まじい応酬に、フェリィは息を呑みながら見入る事しか出来なかった。
だが二人に視線を這わせつつ、彼女はクィンの全力の一撃がアダマスに通じなかった現象について、密かに分析をしていたのだ。
(さっきのアダマス様の防御は……。まさか実戦で使える者が居るなんて……!)
味方ながらに戦慄を覚える彼女。
アダマスが見せた防御に心当たりが有ったのだろう。
「…………ああ、そこだな」
――そしてその戦慄の対象となるアダマス。
雨霰の如き打撃の群れを全て紙一重で避け続けていた彼は、僅かな隙を縫ってクィンの踏み込んだ軸足を掬うように足裏で蹴ってみせたのだ。
「――っ!」
意識の外からの反撃に、クィンは為す術もなく宙へと弾かれてしまう。
一瞬だけ時が止まったかの如く、少女の小さな体躯は床から離れる。
そして間髪を入れず、アダマスの中段蹴りがその剛脚から放たれたのだ。
「……!」
狙いは頭部。
クィンにとってはこの程度の攻撃であれば、マナを打点へと集中させることで容易く防ぐ事ができよう。
先程に受けた顔面への一撃も、その方法を用いて防いでみせたのだから。
(コイツを殺るには……!)
しかし、少女は上位魔神。
高機能に発達した知能を駆使し、蹴撃が届くまでの僅かな暇を利用して、この状況からの反撃を試みようとしていたのだ。
(――――重腕――――)
マナで創られた脳内にて、反撃の方程式を組み終えたクィンがまず行ったのは特性の発動。
既に二度、その赤黒に染まった腕は質量を増している。
三度目の特性の“重ね掛け”は少女にとって、戦闘で扱える腕の重さの限界を超過してしまうのであった。
しかしながら今回は敢えての発動を敢行。
過重量に達した腕は魔神の力を以てしても支える事は困難となり、素直に重力へ従わせることで急速に少女の全身は垂直に落下。
結果、襲い来る剛脚から見事避けてみせたのだ。
「――っ!?」
宙を舞っていた筈のクィンの身体が突如として床に沈み、ここまで終始笑みを浮かべていたアダマスの表情が凍る。
彼が勢い良く放った蹴りは呆気もなく空を切り、逆に大きな隙を生んでしまう羽目に――。
――そして当然、その隙をクィンは逃さない。
(――解除)
腕から着地したクィンは攻撃が頭上を通過したところで念じ、特性の発動を解除。
支えることすら困難だった程の腕の重さは、見たままの質量に戻っていく。
(――――重腕――――)
そして直ぐ様、再びの特性発動。
瞬間最大攻撃力を叩き出す事が可能な二度の発動に留め、重心のバランスを崩したアダマスの懐へと再び入り込み、渾身の力を込めた一撃を放つ。
クィンの狙いは左の脇腹。攻撃を唯一直撃させた初弾を打った位置だ。
負傷をしているであろうここに当てれば、先程の不可解な防御をされる事も無いだろう、と踏んでいたのだ。
「…………!」
空振りによる隙が未だ残っているアダマスが、少女の狙いに気付く。
すると、この状況にて唯一自由に動かせる左手で脇腹を庇うように構え、攻撃を受け止めようと所作をとる。
(……ムダだ! ヒト族如きが受け止められるほどあたいの攻撃が生易しいものか……! 死ねっっ――!)
そう胸中で確信をしたクィンは、構えられた左手ごと脇腹に叩き込んでやろうと勇み、拳を振り抜く――。
――だが。
「…………っっ!?」
クィンの一撃は、アダマスの巨大な掌にていとも簡単に威力を失い、受け止められてしまったのであった。
そして再び、拳からは血が吹き出す。
(……なんなんだ。コイツは一体……!?)
クィンの顔色に、焦りが表れ始める。
『焦燥』という感情が生まれたのはどれ程振りだっただろうか。
何十年、いや何百年振りか――。
しかし現在、少女の心を苛んでいたのはそんな些末な疑問ではない。
眼前で起こった不可解な現象について疑いを抱くことしか出来ず、一千年を優に超える歴戦の経験を以てしても、その謎を自ら解明することが出来なかったのだ。
――そんな少女の疑問に答えるかの如く、フェリィは脳内で改めて確信を抱くのであった。
(やっぱりアレは、“躱す”でも“止める”でも“受け流す”でもない……。リーベ・グアルド、第四の技術――――)
「ああ……どうだ? 自分の攻撃を“押し返される”感覚は? 格別だろう?」
大きな口を歪ませ、戦闘狂はクィンへと笑いかけた。
開戦早々、クィンは特性を発動。
先程と同様に、少女の細腕は何倍にも質量を増す。
対するアダマス。
その巨体からは想像もつかない程のスピードで、クィンとの間合いを一瞬にして詰めてみせると――。
「――隙だらけだぞ、ああ」
その言葉と共に豪腕から右拳が放たれる。
固められた拳は、クィンの顔の面積とほぼ同等のサイズで、最早それは『金属製の鈍器』と形容すべき代物。
突進の勢いそのままに力を込めたその拳が、少女の顔面へとまともに直撃したのであった。
「…………っ!!」
衝撃が、重く鈍い音となって聖堂内を反響。傍から眺めていたフェリィは思わず目を背けてしまう。
そう、いくらクィンが上位魔神とは言っても、その容姿は十代半ばの少女と何ら変わりはない。
そんな幼気さを残した姿の相手に対し、一切の慈悲も容赦も無い攻撃だ。
彼女が直視を避けてしまうのも仕方の無いことだろう。
しかし――。
「――――っ!?」
殴ったはずのアダマスが驚く。
彼は当然、油断も手加減もした覚えはない。
相手の背後にあった石柱に叩きつけるつもりで、全力で鉄拳を見舞わせたのだ。
にも関わらず、少女は仰け反るどころか直立不動なまま。
立ち位置は寸分もズレていなく、その様はまるで地に深く根ざした大木かのよう――。
「中々な一撃だったぞ」
巨拳で覆われた先から漏れた細いトーンの声。
直後、途絶えていた少女の殺気が再び放たれ、空間を支配する。
「……ヒト族にしてはだが、な」
「な――――」
怪訝を発そうとしたアダマスの声が途切れる。
彼の脇腹へと、特性によって重量を増した右拳が鋭く、深く突き刺さったのだ。
「ガ……ハ……ッッ!」
殴られた衝撃によって、彼の身体は大きく後方へと飛ばされていく。
そして先刻にフェリィが土術で変形させた床――隆起した石の塊へと背中からぶつかる。
「……っ! ほう、やるじゃないか」
振り抜いた拳から伝わった手応えでクィンは察し、感嘆をこぼす。
アダマスは拳が脇腹に触れたと同時に、咄嗟の判断で背後へとステップを取り、威力を最小限に受け流していたのだった。
団士である彼も当然の如く、リーベ・グアルドの使い手である。歴戦の経験で培われた反射神経が、その防御を可能にしたのだろう。
「ああ、やはり凄まじいな。上位魔神は」
石を背もたれに口端から一筋の血を流しながら、愉悦を満面に含ませた表情でアダマスが嗤う。
国内最強を誇る第1団士、シングラル・マルロスローニにも引けを取らない程に鍛え抜かれた彼の肉体。
バックステップによるダメージ軽減とその鋼のボディをもってしても負傷は避けられなく、彼の左の肋骨は数本折れていたのであった。
「楽しくて仕方がないなぁ、ああ」
だが彼は重傷にも怯むことなくすぐに起き上がり、自身と同等以上の実力を持つ強者との戦いに喜びを馳せるのみ。
「……ふむ、あの程度の一撃では殺れないか」
一方で、額から青い血を流したクィンが感心でもするかのようにアダマスへと向き直る。
少量の流血が鼻筋を伝い、口の横を流れたところで少女はぺろりと舌を這わせ血を舐め取ってみせた。
(――――重腕――――)
そして再び念じ、特性を発動。
既に重くなっていた腕は更に重量を増す。
「次は全力で殴ってやろう」
その宣言と同時、クィンは石床を強く蹴る。
先程とはうって変わって、今度は少女から仕掛けたのだった。
「――――っっ」
二人の間合いは瞬く間に至近距離へと。
見上げる程の巨躯を誇るアダマスの懐へ、一瞬にして入り込んだクィン。
防御も回避も儘ならない、人間の反応速度を優に超すであろう雷の如き疾さで、強烈なショートアッパーを見舞う。
先程よりも速さと重さを伴ったそれは、少女の言葉通りの全力の一撃。
無防備であったアダマスの下腹部に深々と刺さり、内臓を直接損傷たらしめる――つもりでクィンは打ったのだが。
「…………なんだと?」
刹那的な時の間ではあるが、クィンの眉がぴくりと持ち上がる。
目を丸くしたその先には、アダマスの下腹部に触れた自身の拳があった。
しかし全くと言っていいほどに刺さらず、頑丈な鉄壁を殴ったかのような感触だけが拳を伝い――。
――そして直後。
「……っっ!?」
クィンが目を疑う。
握った手の甲を流れる血管が破裂し、地下水でも掘り当てたかのように青い血が吹き出たのだ。
「オマエ……何をした?」
少女は不可解な痛みを意に介すことなく、疑問を眼前の男へとぶつける。
「ああ、いいな。その表情……」
だがアダマスは疑問には答えようとせず、見上げる少女の鋭い目付きに対して愉しむばかり。
更には上位魔神の全力の一撃を受けたとは思えない程に、平然としていたのだ。
「…………っ!」
疑問を袖にされたクィンは静かな怒りを拳に乗せ、再度打ち込む。
「ふはは……いいぞ。ああ」
鉤打ち気味に放たれた次弾を、今度は易々とアダマスが避けてみせた。
しかしクィンは回避されたことに特には驚かず、無言でそのまま一発。更にもう一発と続き、目にも止まらぬ速さの乱打を繰り出していく。
「ああ、その調子だ。もっと来い……!」
だがアダマスは巨体を軽やかに動かし、その高速の一撃の一つ一つをどれも寸でで躱してみせる。
先程の意表を衝かれた時とは異なり、しっかりとクィンのスピードに対応してみせたのだ。
(…………っ!)
その矢継ぎ早に繰り広げられる殴打と回避の凄まじい応酬に、フェリィは息を呑みながら見入る事しか出来なかった。
だが二人に視線を這わせつつ、彼女はクィンの全力の一撃がアダマスに通じなかった現象について、密かに分析をしていたのだ。
(さっきのアダマス様の防御は……。まさか実戦で使える者が居るなんて……!)
味方ながらに戦慄を覚える彼女。
アダマスが見せた防御に心当たりが有ったのだろう。
「…………ああ、そこだな」
――そしてその戦慄の対象となるアダマス。
雨霰の如き打撃の群れを全て紙一重で避け続けていた彼は、僅かな隙を縫ってクィンの踏み込んだ軸足を掬うように足裏で蹴ってみせたのだ。
「――っ!」
意識の外からの反撃に、クィンは為す術もなく宙へと弾かれてしまう。
一瞬だけ時が止まったかの如く、少女の小さな体躯は床から離れる。
そして間髪を入れず、アダマスの中段蹴りがその剛脚から放たれたのだ。
「……!」
狙いは頭部。
クィンにとってはこの程度の攻撃であれば、マナを打点へと集中させることで容易く防ぐ事ができよう。
先程に受けた顔面への一撃も、その方法を用いて防いでみせたのだから。
(コイツを殺るには……!)
しかし、少女は上位魔神。
高機能に発達した知能を駆使し、蹴撃が届くまでの僅かな暇を利用して、この状況からの反撃を試みようとしていたのだ。
(――――重腕――――)
マナで創られた脳内にて、反撃の方程式を組み終えたクィンがまず行ったのは特性の発動。
既に二度、その赤黒に染まった腕は質量を増している。
三度目の特性の“重ね掛け”は少女にとって、戦闘で扱える腕の重さの限界を超過してしまうのであった。
しかしながら今回は敢えての発動を敢行。
過重量に達した腕は魔神の力を以てしても支える事は困難となり、素直に重力へ従わせることで急速に少女の全身は垂直に落下。
結果、襲い来る剛脚から見事避けてみせたのだ。
「――っ!?」
宙を舞っていた筈のクィンの身体が突如として床に沈み、ここまで終始笑みを浮かべていたアダマスの表情が凍る。
彼が勢い良く放った蹴りは呆気もなく空を切り、逆に大きな隙を生んでしまう羽目に――。
――そして当然、その隙をクィンは逃さない。
(――解除)
腕から着地したクィンは攻撃が頭上を通過したところで念じ、特性の発動を解除。
支えることすら困難だった程の腕の重さは、見たままの質量に戻っていく。
(――――重腕――――)
そして直ぐ様、再びの特性発動。
瞬間最大攻撃力を叩き出す事が可能な二度の発動に留め、重心のバランスを崩したアダマスの懐へと再び入り込み、渾身の力を込めた一撃を放つ。
クィンの狙いは左の脇腹。攻撃を唯一直撃させた初弾を打った位置だ。
負傷をしているであろうここに当てれば、先程の不可解な防御をされる事も無いだろう、と踏んでいたのだ。
「…………!」
空振りによる隙が未だ残っているアダマスが、少女の狙いに気付く。
すると、この状況にて唯一自由に動かせる左手で脇腹を庇うように構え、攻撃を受け止めようと所作をとる。
(……ムダだ! ヒト族如きが受け止められるほどあたいの攻撃が生易しいものか……! 死ねっっ――!)
そう胸中で確信をしたクィンは、構えられた左手ごと脇腹に叩き込んでやろうと勇み、拳を振り抜く――。
――だが。
「…………っっ!?」
クィンの一撃は、アダマスの巨大な掌にていとも簡単に威力を失い、受け止められてしまったのであった。
そして再び、拳からは血が吹き出す。
(……なんなんだ。コイツは一体……!?)
クィンの顔色に、焦りが表れ始める。
『焦燥』という感情が生まれたのはどれ程振りだっただろうか。
何十年、いや何百年振りか――。
しかし現在、少女の心を苛んでいたのはそんな些末な疑問ではない。
眼前で起こった不可解な現象について疑いを抱くことしか出来ず、一千年を優に超える歴戦の経験を以てしても、その謎を自ら解明することが出来なかったのだ。
――そんな少女の疑問に答えるかの如く、フェリィは脳内で改めて確信を抱くのであった。
(やっぱりアレは、“躱す”でも“止める”でも“受け流す”でもない……。リーベ・グアルド、第四の技術――――)
「ああ……どうだ? 自分の攻撃を“押し返される”感覚は? 格別だろう?」
大きな口を歪ませ、戦闘狂はクィンへと笑いかけた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる