死に戻り聖女♂は冷酷公爵の執着から逃げられない~今度は死なないために、最強の魔王に身を捧げます~

葵うそ

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儀式

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翌朝、リアンが目を覚ますと、胸のあたりに微かな熱を感じた。
シャツの隙間から覗いたそこには、昨夜アルヴィスによって刻まれた禍々しくも美しい紋様が、肌に深く根を下ろしていた。
(……本当に、契約したんだ。もう、後戻りはできない)

勇者パーティにいた頃は、ただの便利な道具だった。
だが今は、最強の魔王専属の器だ。どちらがマシかなんて、考えるまでもない。

コンコン、と控えめなノックの音が響き、初老の執事が入ってきた。
「リアン様、お目覚めですね。閣下がお呼びです。儀式の準備が整った、とのことです」

執事に案内されたのは、昨日の執務室ではなく、城のさらに深部にある広大な地下聖堂のような場所だった。
中央に置かれた豪華な長椅子カウチに、アルヴィスがゆったりと腰掛けていた。
上着を脱ぎ、薄いシャツ一枚になった彼の体からは、昨日よりもさらに濃密で、どろりとした黒い魔力が揺らめき出している。
「来たか。体調はどうだ」
「はい…。激しい痛みはもうありません」
「そうか。では、さっそく始めよう。そこへ座れ」
アルヴィスが自分の隣を指差した。リアンが緊張で体を固くしながら座ると、アルヴィスはその大きな手でリアンの髪を愛おしそうに撫でた。
「昨日のように手を重ねるだけでも、ある程度は魔力を浄化できる。だが、私の内側に溜まった深いよどみはそれでは届かない」
「澱、ですか?」
「そう、澱だ。私の魔力暴走は、魂の奥底から溢れ出す。それを効率よく貴様の中に流し込み、浄化するためには…もっと濃密な接触が必要だ」

アルヴィスの赤い瞳が、リアンを射貫く。
リアンは嫌な予感がしたが、その瞳から目を逸らせなかった。
「具体的に、何をすればいいんでしょうか」
「肌と肌を直接合わせ、魔力の通り道を太くする。……服を脱げ、リアン。まずは上半身だけでいい」
「えっ……!?」

リアンの顔が一気に赤く染まる。
前世のパーティでも、野宿の際に着替えることくらいはあった。けれど、アルヴィスの行おうとしていることがただの着替えなどではないことくらい、リアンにも理解できた。
そう、それはまるで、これから「喰らう」と宣言している捕食者の目だ。

「何をためらっている?私を救うんだろう。その身を捧げると言ったのは貴様だ」
「それは、そうですけど……。でも、人前で……」
「安心しろ。ここには私と貴様しかいない。結界も張ってある」
アルヴィスは抗う隙を与えない強引さで、リアンの細い指を取り、自らのシャツのボタンへと導いた。
「……貴様の手で脱がせろ。それが器としての最初の務めだ」

拒絶すれば、この城での居場所を失う。それは“死”を意味する。
リアンは震える指先で、アルヴィスのボタンを一つずつ外していった。
あらわになる鍛え上げられた強靭な胸板と人間離れした美しい肢体。そこには浮き出る血管のように、どす黒い魔力の筋が走っている。
(この人、こんなにも魔力が……。苦しいだろう……早く、引き受けてあげなきゃ)
リアンの頭に浮かんだのは意外にも、恐怖よりも助けたいという聖女としての思いだった。
それが本能によるものなのか、リアン自身の気持ちの表れなのかは、本人にも分からなかった。

リアンも自らのシャツを脱ぎ捨て、白い柔らかな肌を晒す。
アルヴィスの視線が、リアンの胸元に刻まれた“所有の印”に留まった。
「……いい眺めだ。その紋様が、私の魔力を欲して疼いているのがわかる」
アルヴィスがリアンの腰を引き寄せ、抱きしめるようにして互いの胸を密着させた。
「うっ……あ……」
熱い。心臓の鼓動が重なり、リアンの契約紋が激しく明滅する。
「さあ……私の毒を、余さず飲み込め」
アルヴィスの低い囁きと共に、昨日とは比較にならないほどの暴力的な魔力の奔流が、リアンの体内へと流れ込んできた。

それはもはや供給というよりも、一方的な侵食だった。
「あ……が、はぁっ……! あ、つ……熱い……っ!」
リアンの背中が大きく反り上がる。
あまりの衝撃に意識が飛びそうになるが、アルヴィスの逞しい腕がそれを許さず、逃がさないようにと強くリアンの体を縛り付けた。

これは、生き残るための対価である。
これから毎夜繰り返されることになる、甘く残酷な供給儀式の始まりだった。
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