第三次世界大戦

一二三 雄

文字の大きさ
7 / 14
2章

2章②田中 梓

しおりを挟む
「いや、すまない。君の意見を聞きたい。」

一条は思い出していた。彼夏月がこの事態を予測しているような言動を、していた事を、その相談をまともに取り合わなかった結果、彼の身に何か起きていることを申し訳ないと感じつつも、一刻を争う事態に彼の協力を得ようと話し始めた。

「田中刑事!彼は夏月桜という探偵業をしている友人だが、今この場において僕より確実に真相に近いところにいる。入ってもらい協力を依頼するべきだ。」

「探偵?探偵さんがどうしてこの状況に関わりが?」
「協力の依頼?ここでは受けられないな?」

同時に話し始めた2人を見て合うのか合わないのかと悩ましく思いながら続けた。
「では、協力頂けない民間の方はお引き取りを!」
「構わない。僕は僕のやり方で」

何故かこの短い時間で致命的に仲違いしそうな2人を見て、一条は焦っていた。何故か九州の九重連山に集まる犬、とりわけ久住山には多くの犬が集まっている。
人海戦術や地元警察や猟友会の協力を得て、場所の特定をしたが何故ここに集まって、いつまでここにいるのかが、さっぱりわからない。
有識者と呼ばれる者が十数人集まって半日になるが今後の行動基準すら定まらない。
その中で一月も前にこの状況を予測し、個人の調査でここにたどり着いた夏月桜をここで逃す訳にはいかなかった。

「田中刑事待ってくれ。私は今回武装面の顧問としてここに呼ばれているはずだ。彼は私の部門で雇いたい。桜もそれで頼む。君が絶対に必要だ。頼まれていたリザードも準備する。近接武装と狙撃武装を装備して譲渡する。頼むから。話だけでも聞いてくれ。」

「僕はぼったくりをするつもりはない。流石にパワードスーツなんて受け取れない。」

「わかった。そういうことならとりあえず貸与にしておくが、リザードが担保で報酬は後の交渉でいいか?内容によってやっぱりリザードを受け取るでもこちらは構わない。」

「わかった。だが先に確認したい。情報は共有されるのか。後は僕はこの中に用があるんだ。いつ入れる。」

「待ってください。民間の方の介入をこんな簡単に」
「わかっています。ですのでまずは3人で相談しましょう。」

仮説テントの中でもプレハブを各所に置き沈没防止の鉄板敷きの床の大空間が一条に与えられたスペースだった。
そこで、まず一条は夏月に貸与するリザードの装備について話し始めた。まず、この依頼を受けさせたいと必死だった。
「君にはリザードのバリエーションで次世代モデルとして制作したフライングリザードのプロトタイプを渡したいと思っている。パワーシリンダーやオートリロードなど量産型でオミットされた機能が全て実装されている。ハルピュイアと違って単独飛行はできないが、吸着力を利用したクライミングと高所からの転落衝撃緩和と滑空ができる。固有武装としてスタンナイフを2本とデザートイーグルが四丁装備されている。四丁あるのは持ち替えてリロードはリザード内部で行う用だ。君は狙撃も、得意だったからな背面にドラグノフを装備させよう。照準はリザードに動機させておく、、、他に要望は?」

「それだけの装備が必要と感じている理由を先に聞きたいね。」

「それは、」

田中梓はここに来て、この探偵の協力を取り付けることがどれだけ重要と考えているのか理解してきた。

「それは私から、今わかっている情報はここに多くの犬が集まっていること、その犬種は小型大型を問わないこと、一部に動物園などから脱走した狼まで混ざっていることです。それ以外が本当に何もわかっていませんし、仮説もありません。お手上げ状態で次に何が起こるのか何もわかりません。広い範囲でバリケードを作っていますが九重連山を囲うことは不可能です。」

長い沈黙の後に夏月は葛藤しながら話し始めた。
「まだ仮説だけだが、仮説はあるんだ。検証は間に合わなかった。クライアントに確定していない事を伝えるのは主義に反するんだが、」

「構わない。君の仮説を聞きたい。」
「ええ、鵜呑みにはしない。参考に聞きますよ。」

ため息の後に

「信じられないかもしれないが、犬の知性は少なくとも人間の小学生から中学生以上があると仮定して、生存戦略として世界中で同時多発的に自分達の土地を人間から勝ち取りに来ている。」

あり得ない!という言葉を現状で否定しきれず飲み込んだ2人の沈黙の中夏月は続けた。

「人間という種は今、領土紛争、、、いや侵略戦争を受けている。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

異世界で農業を -異世界編-

半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。 そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。

処理中です...